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企業向け
企業におけるキャリア相談室・キャリアコンサルティングの重要性

厚生労働省は、働き方改革の施策の一つとして、企業における「キャリアコンサルティング」の導入を推進しています。
キャリアコンサルティングとは、労働者のキャリア形成や職業能力開発などの相談に対して助言・指導を行うというものです。
また、その一環として「キャリア相談室」の設置も必要とされてきています。

今回は、キャリアコンサルティングの重要性、キャリア相談室の役割やメリット、そして設置する上でのポイントについて説明します。

キャリアコンサルティングとは

厚生労働省では、「キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」と定義づけています。

出典:厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」

キャリアコンサルティングの活用例と期待できる効果

キャリアコンサルティングの重要な役割とは、キャリア形成や職業能力開発に関する相談に対して適切な指導や助言を行い、自身の適性や能力、関心などの「気づき」を支援することです。

従業員が、自身のキャリアのニーズを理解することで、職業能力開発に対する視野が広がり、自発的なキャリア形成が期待できます。

厚生労働省が行った「平成29年度能力開発基本調査」における「キャリアに関する相談の有効性」によると、雇用形態に問わず、90%以上が「キャリアに関する相談(キャリアコンサルティング)が役に立った」と答えました。

回答をみてみると、「仕事に対する意識が高まった」、「自分の目指すべきキャリアが明確になった」などの効果が見られます。

この結果からも、キャリアコンサルティングは、自身のキャリア形成に有効な手段として活用されていることが分かります。

出典:厚生労働省「平成29年度能力開発基本調査」 キャリアに関する相談の有効性(複数回答)

キャリアコンサルタントとは

「キャリアコンサルタント」とは、平成28年4月より国家資格となった、キャリアコンサルティングを行う専門家です。
近年、企業や教育機関、職業紹介機関など、さまざまな分野で活躍しています。

詳しくは国家資格キャリアコンサルタント試験のホームページをご覧ください。

職業能力開発促進法第十条の三では、企業に対して、従業員へのキャリアコンサルティング機会の提供を求めています。

キャリア相談室の役割

厚生労働省が推進しているキャリアコンサルティングの一環として、企業内に設置する「キャリア相談室」の普及が進められています。

キャリア相談室は、「社員相談室」あるいは「キャリアカウンセリング室」などとも呼ばれ、労働者のキャリア開発とその形成支援策として企業や教育機関に導入されています。

キャリア相談室の設置が進められた背景

三和総合研究所が平成12年にまとめた「職業能力に関する調査報告書」によると、キャリア相談を「十分」ないし「ある程度」、「受けることのできる」と答えた従業員の割合は、34.3%でした。

しかし、その相談相手は、ほとんどが上司、先輩、同僚であり、専門家への相談は5~6%に過ぎませんでした。

また、企業側でも、キャリア相談が「十分」ないし「ある程度」「できている」と回答した割合は17.1%にとどまっていました。

出典:三和総合研究所「職業能力に関する調査報告書」

この調査結果から、厚生労働省は「生涯の職業キャリアを展望すると、教育施策と能力開発施策が密接な関連を持ちつつ、カウンセリングを受けられるような場や仕組みの工夫を講じるべき」と発表しています。

この発表の翌年(平成13年)には、雇用対策法、職業能力開発促進法が改正され、企業の労働者に対するキャリア形成のための対策が進められるきっかけとなりました。

出典:厚生労働省「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」 報告書について

企業内でのキャリア相談室の導入実態

株式会社日本マンパワーは、平成23年に、企業や組織に所属している労働者に対するキャリアカウンセリング(キャリア相談室)の実態と課題の把握を目的として、27の企業・団体に向けた「企業内のキャリアカウンセリング 仕組みと施策の実態調査」を行いました。

その調査から、企業内にキャリア相談室をはじめとしたキャリアカウンセリングに関連する部署を置いている企業の割合は、全体の60%未満に過ぎないという結果が得られました。

出典:株式会社日本マンパワー「企業内のキャリアカウンセリング 仕組みと施策の実態調査」

キャリア相談室に求めていること

キャリア相談室が導入される際、企業や従業員はどのような効果を期待しているのでしょうか。

企業がキャリア相談室に求めていること

株式会社日本マンパワーが企業に対して行った「キャリアカウンセリングの設置目的」の調査では、企業のキャリアカウンセリング導入時の設置目的は「社員の自律支援」という回答が最も多く、約80%という結果でした。

次いで多かったのが、「キャリア開発支援制度の円滑運用」および「社員のモチベーション向上」で、それぞれ半数近くの企業が回答していました。

出典:株式会社日本マンパワー「企業内のキャリアカウンセリング 仕組みと施策の実態調査」

従業員がキャリア相談室に求めていること

一方で、従業員側が企業に求めるキャリア開発に関する支援には、どのようなものがあるのでしょうか。

アデコ株式会社が平成28年に行った「働く人のキャリアに関する意識調査」では、自身のキャリアを考える理由として、次の順で回答数が多かったようです。

  1. 「キャリアを自分で考えて構築し、より良いキャリアを実現したい」
  2. 「自分のスキルや資格、経験が将来も適用するかわからないから」
  3. 「現在の勤め先の将来の見通しが不安なため、そのリスクヘッジ」

出典:アデコ株式会社「働く人のキャリアに関する意識調査」

社会や企業の将来への「不安」という要素が含まれた回答が多くを占めています。
この結果から、企業に設置されるキャリア相談室にも、同様の支援策が求められると言えそうです。

企業内にキャリア相談室を設置するメリット

キャリア相談室を設置することは、企業にとって、直接労働者のキャリア形成や能力開発の支援を行えるだけでなく、さまざまなメリットがあります。

メリット1 企業内の関連部署との連携による、問題の早期発見

ハラスメント問題に関する相談窓口や、コンプライアンスの推進室などさまざまな関連部署と連携をとることで、従業員が抱える悩みや問題の早期解決につながる場合があります。

また、キャリア相談を行うことにより、メンタルヘルスに関する問題が浮き彫りになることがあります。
そうした問題は、企業内の産業医やメンタルヘルスケアの支援部署と連携しながら改善されるケースもあります。

メリット2 キャリアコンサルティングで得られる助成や給付制度

キャリアコンサルティングに関連する支援制度を活用することができます。

人材開発支援制度
人材開発支援制度とは、キャリアコンサルティング制度を導入し、従業員に実施している企業に対して、制度導入に関連する費用の一部を助成する制度です。

4つのコースのうち、特定訓練コースでは、セルフ・キャリアドック制度を導入している企業は助成割合が引き上がる場合があります。

セルフ・キャリアドック制度とは、労働者がキャリア形成における「気づき」を支援するために、定期的にキャリアコンサルティングを行う取り組みをいいます。

出典:厚生労働省 人材開発支援助成金

教育訓練給付制度
教育訓練給付制度とは、従業員の能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とし、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される制度です。

教育訓練給付制度には、「一般教育訓練給付制度」と「専門実践教育訓練給付制度」の2種類があります。
要件を満たした従業員が訓練受講前にキャリアコンサルティングを受けると、ハローワークから費用の一部が給付されます。

出典:厚生労働省 教育訓練給付制度

特定支出控除
キャリアコンサルタントが実施するキャリアコンサルティングのうち、一定の要件を満たすものに要した費用は、「特定支出控除(所得控除)」の対象となります。

出典:厚生労働省「キャリアコンサルティングが活用される制度」

メリット3 「グッドキャリア企業アワード」の受賞による企業のイメージ向上

「グッドキャリア企業アワード」とは、厚生労働省が行う、労働者の自律的なキャリア形成などの取り組みを行っている企業に対する表彰です。

表彰された企業の理念や取組内容、具体的な効果などを広く発信することで、キャリア形成支援の普及・定着を促すことを目的として実施されています。

公平な立場による表彰によって、企業のブランドイメージがアップし社会的信用が得られるだけでなく、従業員のモチベーションアップにもつながります。

出典:厚生労働省「グッドキャリアプロジェクト」

キャリア相談室の設置に向けてのポイント

ここでは、企業がキャリア相談室を設置するときに意識しておきたい具体的なポイントを解説します。

キャリアコンサルティングの流れ

キャリア相談室を設置し、キャリアコンサルティングを行う際は、次の6つのステップに応じた助言・相談を行っていきます。

1.自己理解

自己のキャリアに対する興味や適性、能力などの明確化

2.仕事理解

労働市場や企業に関する職業情報の提供

3.啓発的経験

キャリアで求められる能力、キャリアルートなどの理解

4.意思決定

今後のキャリアプラン、目標の設定

5.方策の実行

職業選択、能力開発などの活動に応じたサポート

6.適応

継続的なキャリア形成の支援

出典:厚生労働省「キャリアコンサルティングの流れ」

キャリアコンサルティングでは、これらのステップに沿って職務経験や教育訓練を積み重ね、段階的な職業能力の形成支援をはかることが重要です。

キャリア相談を行うキャリアコンサルティングのスキル

キャリア相談を担当する相談員には、さまざまなスキルが必要です。
面談やカウンセリングのスキルはもちろんのこと、相談者の悩みや不安などの情報を引き出すスキル、キャリアアップのために必要な職業能力開発の情報収集スキルなどが求められます。

キャリア相談は、これらのスキルや相応の経験、知識のある専門家に依頼することが望ましいでしょう。

守秘義務の遵守

キャリア相談において最も重要な点は、相談者の守秘義務を守ることです。
守秘義務が担保されないと、相談者の本音を引き出すことができなくなります。

安心・安全なキャリア相談室づくりは、相談者の悩みや不安の解消、自律的なキャリア形成を支援する上で欠かすことができない要素です。

キャリア相談室を設置している企業事例

企業は、具体的にどのようにキャリアコンサルティングを行っているのでしょうか。

実際に企業内にキャリア相談室を設置している、株式会社エーピーコミュニケーションズと伊藤忠商事株式会社の事例をご紹介します。

株式会社エーピーコミュニケーションズ|キャリア相談室

株式会社エーピーコミュニケーションズは、従業員のキャリアビジョンと企業内の職種・業務のマッチングをはかり、中立的に従業員のキャリア実現を支援することを目的としてキャリア相談室を設立しました。

若手従業員に向けた「キャリア面談」と「キャリアデザイン研修」、管理職に向けた「部下育成支援」という2軸での取り組みを実施しています。

こうした取り組みは、弊財団が主催する「第4回ホワイト企業アワード」において、人材育成部門で表彰され、高い評価を受けました。
さらに、弊財団による「ホワイト企業認定」もあわせて受けました。

出典:PRTable「若手エンジニアの早期離職を防ぎたい!上司に内緒で悩みを相談できる『キャリア相談室』」

伊藤忠商事株式会社|キャリアカウンセリング室

伊藤忠商事株式会社は、労働者が活躍できる環境づくりとして、キャリアカウンセリング室を設置しました。
ここでは、新人から管理職まで多様なキャリアに関する相談や支援を行っています。

カウンセラーは、全員キャリアコンサルタントの資格を有し、従業員一人ひとりの状況に合わせて、人間関係や仕事の進め方など、幅広い相談に対応しています。
その相談件数は、年間で500件を超えています。

若手向けには、入社後は数年おきのキャリアカウンセリングの仕組みを整え、中高年向けには雇用延長に関する相談なども受け付けています。

まとめ

キャリアコンサルティングの重要性、キャリア相談室の役割や設置するメリット、設置する上でのポイントについて説明しました。

従業員の主体的なキャリア実現を支援するためにも、キャリア相談室の設置・キャリアコンサルティングの実施を検討してはいかがでしょうか。

2019.07.26 up
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