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企業向け
障害者雇用の手引き①|内容や目的、メリット、罰則を解説

障害のある人の就労意欲は近年急速に高まり、職業を通じて誇りをもって自立した生活を送ることができるよう、国を挙げた障害者雇用対策が進められています。

内閣府が令和元年に発表している「障害者白書」によると、平成30年6月には民間企業における障害者雇用数が53.5万人(身体障害者34.6万人、知的障害者12.1万人、精神障害者6.7万人)を突破し、15年連続で過去最高人数を更新したことがわかりました。

【参考】令和元年版 障害者白書 全文(PDF版)/第2章/第2節-内閣府

このように着実に進展している障害者雇用ですが、まだ足踏みしている企業があるのも事実です。

そこで今回は、企業が障害のある人の雇用を推進するにあたって知っておきたい制度や、メリット・デメリット(罰則)を詳しく解説していきます。

障害者雇用の概要

企業は、障害者の雇用義務制度に基づき、一定の割合で障害者を雇用しなければなりません。
障害者の雇用促進をはかるため、事業主への義務や障害者本人への公的支援措置などを規定している法律が「障害者雇用促進法」です。

障害のある人が働く機会を得やすくするため「障害者雇用枠」を設けるなど、障害のある人が持つ就業に対する不安を軽減するための措置が定められています。

雇用義務を履行しない企業に対しては、ハローワークから行政指導が入り、罰金や罰則が科されます。

詳しい内容は本記事後半の「障害者雇用に関する罰金・罰則」をご確認ください。

障害者雇用促進法の目的

  • 障害者の雇用を促進する措置を講じること
  • 障害者が働きやすい職場環境を整えること
  • 職業リハビリテーションなどの職業生活の自立を促す措置を講じることより、障害者の職業の安定を図ること

【参考】障害者雇用促進法の概要 – 厚生労働省

法定雇用率(障害者雇用率)を満たす義務がある

障害者雇用促進法では、障害者が地域の一員として共に生活できる「共生社会」の実現に向けて、一定の割合で障害者を雇用しなければならない企業義務が定められています。
この一定の割合を「法定雇用率(障害者雇用率)」と言います。

平成30年4月1日には精神障害者の雇用が組み込まれ、法定雇用率が引き上げられたました。
これを受けて、企業の障害者雇用に対する関心が高まっています。

現在の法定雇用率は2.2%ですが、平成33年4月までにはさらに0.1%引き上げられる予定です。

【参考】障害者雇用率制度 – 厚生労働省

今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の範囲が、従業員(正社員)50人以上から45.5人以上に変わりました。

また、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければならない義務があるので受け入れ企業は注意が必要です。

雇用義務の対象者となる障害者の範囲・条件

障害者雇用促進法では、以下の障害者を「対象障害者」としています。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の所持者に限る)

雇用義務の対象となる障害者かどうか確認するポイントは、「身体障害者手帳の交付の有無」「知的障害者判定機関の判定書」です。

自閉症やアスベルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害といった発達障害だけでは雇用義務の対象には含まれないため、実雇用率に算定することはできません。

【参考】障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象 – 厚生労働省

特例子会社制度・グループ適用・企業グループ算定特例

法定雇用率制度(障害者雇用率制度)では、障害者の雇用機会の確保が義務づけられています。

ただし、障害者雇用の促進・安定を図るため、障害者の雇用に特別な配慮をした子会社を設立し、その子会社が一定の要件を満たす場合は、子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、実雇用率を算定することができる「特例子会社制度」が認められています。

特例子会社を持つ親会社は、関係する子会社を含め、企業グループによる実雇用率算定も可能です。


【参考】特例子会社制度の概要 – 厚生労働省
【参考】「企業グループ算定特例」(関係子会社特例)の概要 – 厚生労働省

障害者雇用が企業にもたらす4つのメリット

では実際に障害者を雇い入れた場合、企業にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。

業務見直しの一助となる

障害のある人を受け入れるにあたって、業務の進め方や労働環境の工夫が必要です。

マニュアル化による業務の可視化、シンプルな作業手順といった業務の見直しは、障害者だけでなく一緒に働く従業員にとってもプラスに働きます。

戦力となる

障害の特性を理解し適切なサポートを行うことで、障害者は企業の一戦力になり得ます。

障害のある人の能力を引き出すには、一緒に働く従業員に「障害者と一緒に働く目的」をしっかり理解させ、全社的な協力をあおぐことが大切です。

新たな発想を生み出すきっかけになる

さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まることで、今までにない斬新な製品やサービスが生まれる可能性が高まります。

調整金・報奨金・助成金を受けられる

法定雇用率を超えて障害のある人を雇用した企業には、調整金・報奨金が支給されます。
その他、障害者雇用の促進を図るためのさまざまな制度も整備されています。

障害者雇用調整金

対象企業:常時雇用している労働者数が100人を超える企業

障害者雇用率(2.2%)を超えて障害者を雇用している場合は、雇用率以上の障害者数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

特定求職者雇用開発助成金

対象企業:障害者雇用の経験がない中小企業、労働者数(正社員)45.5~300人の中小企業

障害者を初めて雇用し、雇入れによって法定雇用率を達成する場合、助成金120万円が支給されます。

【参考】特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース) – 厚生労働省

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、障害者の適性や業務遂行可能性を見極め、相互理解を促進することで、早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。

以下の2つのコースがあります。

障害者トライアルコース

対象企業:職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な障害者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用する企業

支給額は、対象労働者によって異なります。

  • 精神障害者の場合:1人につき月額最大8万円を3カ月
  • 障害者トライアル雇用求人を事前にハローワーク等に提出し、これらの紹介によって原則3カ月の有期雇用で雇い入れた障害者の場合:月額最大4万円を3カ月(最長6カ月間)
  • 上記以外の場合:月額最大4万円(最長3カ月間)
障害者短時間トライアルコース

対象企業:障害者を継続雇用することを目的に、一定の期間を定めて試験的に雇用する企業

雇入れ時の週の所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、障害者の職場適応状況や体調等に応じて、同期間中にこれを20時間以上とすることを目指します。

支給額は、対象者1人につき月額最大4万円(最長12カ月間)です。

【参考】障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース – 厚生労働省

障害者雇用安定助成金

障害者雇用安定助成金は障害の特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや、柔軟な働き方の工夫等の措置を講じる企業に対して助成するもので、障害者の雇用を促進するとともに、職場定着を図ることを目的としています。

障害者雇用安定助成金には、以下の2つのコースがあります。

障害者職場適応援助コース

対象企業:職場適応や定着に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を実施する企業

【参考】障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)- 厚生労働省

障害者職場定着支援コース

対象企業:障害の特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや、柔軟な働き方の工夫をした企業

【参考】障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース) – 厚生労働省

障害者雇用に関する罰金・罰則

障害者雇用促進法で定められている障害者雇用率(2.2%)が未達成だった場合、企業にはどのような罰金・罰則が科せられるのでしょうか。

100人超の企業は納付金が徴収される

常時雇用している労働者数が100人を超える企業は、障害者雇用率を満たしていない場合、不足する障害者数に応じて、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければなりません。

ただし、常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の企業については、障害者雇用納付金の減額特例が適用されます。
これにより、不足する障害者1人あたりの納付金は月額50,000円から40,000円に減額されます。
この特例は平成27年4月1日から平成32年3月31日まで適用されます。

報告義務を違反した場合は罰金が科せられる

従業員(正社員)45.5人以上の企業は、毎年6月1日時点の対象障害者の雇用状況をハローワークに報告する義務があります。

雇用状況の報告を怠った場合や、虚偽の報告をした場合には、30万円以下の罰金が科せられます。

雇用率未達成の企業として公表される

障害者雇用率の未達成が続くと、労働局から指導が入ります。
指導後も適正な措置を講じないままでいると、企業名が公表されてしまいます。

雇用率未達成企業の発表は、企業にとってマイナスイメージとなるので、避けておくべきです。
指導が入った場合は速やかに対策を講じるようにしましょう。

【参考】障害者の雇用 – 厚生労働省

まとめ

障害者雇用を成功させるポイントは、偏見を持たず、障害そのものの特性を理解・把握することです。
企業全体に障害のある人を受け入れる体制ができていれば、得意分野に関して高いパフォーマンスを発揮し大きな戦力となるでしょう。

「障害者雇用は難しいことだ」と決めつけず、助成金制度を上手く活用しつつ障害者雇用を推進してみてはいかがでしょうか。

障害者雇用を進める手順や注意点は、『障害者雇用の手引き②|実際に採用するまでの流れや注意すべきポイントを解説』でご確認ください。

2019.08.27 up
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