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企業向け
残業削減に向けた企業側の対策は?メリット・デメリットや取り組み事例まとめ

長時間労働が心身に与える悪影響は、「KAROSHI(過労死)」という英単語が辞書に登録されるほど、深刻な社会問題となっています。

そこで政府は、2019年4月1日に「働き方改革関連法」を施行しました。
働きすぎを予防するために時間外労働の上限規制を設けるなど、ワーク・ライフバランスと多様で柔軟な働き方の実現に向けた法整備を推進しています。

では、企業は残業時間の削減に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。

残業削減に向けた対策とメリット・デメリットについて解説していきます。

日本の残業(長時間労働)の現状

厚生労働省の発表によると、日本は欧州諸国と比較して年平均労働時間が長く、時間外労働(週40時間以上)者の構成割合が高いことがわかりました。
特に注目したいのは、週49時間以上働いている従業員の割合の高さです。

【参考】我が国における時間外労働の現状 – 厚生労働省

残業削減に関する動き

政府はこうした長時間労働による問題を受けて、残業時間の上限を設けました。
原則として月45時間/年360時間が上限になります。
特別な事情がある場合でも、最大で月100時間未満/年720時間以内と定めています。

また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6カ月までです。
違反した場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用となりますので注意しましょう。


【参考】働き方改革特設サイト(支援のご案内) – 厚生労働省

さらに詳しい内容は、労務SEARCHの「働き方改革で残業はどうなる?時間外労働の上限規制を解説します!」をご確認ください。

残業がもたらす企業へのデメリット・悪影響

業務を終わらせるためには残業が必要だという声もありますが、従業員の長時間労働が常態化すると、さまざまなデメリットが生じるといわれています。

従業員の健康被害につながる

長時間労働による疲労の蓄積は、心身に大きなダメージを与えます。

従業員の健康被害に関しては、関連記事をご覧ください。

【関連】健康経営とは?目的・背景やメリット、企業の特徴をわかりやすく解説
【関連】健康経営の取り組みは企業事例から学ぶ!具体策と注意点まとめ

人材が定着しにくい

時間外労働が多い企業は、離職率が向上し、優秀な人材が定着しにくい傾向があります。

また、残業が多い企業というマイナスイメージが広がり、採用において優秀な人材を確保できなくなってしまいます。

生産性の低下

長時間労働により従業員の睡眠不足などの体調不良が続くと、集中力や認知機能、運動機能が低下してしまいます。

十分に疲労回復できない状態で業務を行っても、生産性の向上は期待できません。

残業を減らすことによるメリット・効果

では、残業時間を削減することによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

人件費を削減できる

従業員の残業時間を削減することで、人件費の支出を減らすことができます。

離職率が低下する

残業なしで働ける環境、有給休暇の取得率が高い企業には、優秀な人材が集まりやすく離職率が低い傾向があります。
離職率が低いと採用や教育コストを削減することができ、また、世間にポジティブな印象を与えることができます。

生産性が向上する

限られた時間のなかで業務を効率化することで、生産性が向上します。
また、従業員の集中力が高まり、仕事に対するモチベーションが上がります。

残業削減の方法・取り組みのアイデア


【参考】平成28年版過労死等防止対策白書 第1章第2節 – 厚生労働省

厚生労働省発表の「平成28年版過労死等防止対策白書」によると、残業が必要な理由として、

  • 顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため
  • 業務量が多いため
  • 仕事の繁閑の差が大きいため
  • 人員が不足しているため

が多く挙げられていることがわかりました。

残業を削減するために、企業にできる取り組みとして具体的な方法を紹介します。

残業の事前申請制度の導入

残業を事前に承認する制度を導入することで、従業員の残業時間を把握しやすくなります。

急ぎの業務以外は翌日に行うよう指導したり、他の社員へ仕事を割り振るなど、必要に応じた残業の調整も可能です。

ノー残業デーの制定

週に1度「ノー残業デー」を制定することで、従業員の意識が高まり残業抑制に向けた働きができます。

部署によって業務内容、進捗状況が異なる場合は、一律に曜日を決めて実施されるのではなく、各自で毎週1日ノー残業デーを決定するとよいでしょう。

人事評価制度との連動

管理職の人事評価の項目に「部下の時間外労働」を組み入れるほか、残業時間数に応じて報酬(年2回の賞与と翌年度の給与)が変動する制度を導入します。

これにより、従業員一人ひとりが時間外労働を把握し、時間外労働を減らそうとする取り組みが期待できます。

従業員間の業務量の平準化

特定の従業員に仕事が集中しないようにするためには、従業員間の業務を平準化することが大切です。

担当業務以外の仕事をローテーションで担当することで、繁忙期には他業務のサポートがしあえるようになります。

トップダウンの取り組み

企業のトップが従業員に残業削減を促す1つの手段として、トップダウンの徹底が挙げられます。

トップダウンとは、組織の上層部が意思決定をし、その実行を下部組織に指示する管理方式のことです。

上からの指示通りに従業員が動くことで業務を円滑に遂行する、企業経営手法の1つです。

従業員との信頼関係があれば、企業全体に一体感が生まれ、業務プロセスの見直しや残業時間の管理を強化できます。

【参考】時間外労働削減の好事例集 – 厚生労働省

残業削減に取り組む際のポイント6つ

残業削減に向けた取り組みを行う際、企業はどのような点に注意したらよいのでしょうか。

残業は良くないことだという意識づけを行う

遅くまで残業する従業員が評価されたり、周りの目を気にして残業をするような環境は改めなければなりません。

残業による弊害を共有し、仕事を効率化することによるメリットを企業全体に周知することが大切です。

現場の非効率業務や人員配置・業務分担を見直す

慣習化された業務のなかに「なくすべき業務」「集約すべき業務」「非効率な作業」はないかを見直すことが重要です。

また、仕事量が特定の従業員に集約しないよう業務分担をチェックし、適材適所で人員を配置することは業務の効率化につながります。
今ある業務を全て「見える化」し、どんな業務がありそれぞれどのくらい時間がかかっているのかを一度整理してみてもよいでしょう。

制度が形骸化しないよう周知や効果測定を怠らない

長時間労働を削減するために設けた「ノー残業デー」が、単なるサービス残業時間の増加になるようでは意味がありません。

残業削減に向けて導入した新制度がどれほど従業員の生活に変化をもらしたのか正確に効果測定をし、制度が形骸化しないよう注意する必要があります。

施策直後に効果が出ないからといってすぐに廃止しない

どんなによい施策でも、すぐに残業を減らすことは難しいことです。

効果を実感できないからといってすぐに制度を廃止せずに、効果測定をしながら試行錯誤し、取り組みを続けることが大切です。

経営トップが率先して推進する

企業全体として残業時間を減らすためには、経営のトップが率先して残業削減に取り組まなければなりません。

常態化した長時間労働を根絶させるためには、「時間になったら消灯する」「施錠する」「残業申請をする」などといった強制力も必要になってくるでしょう。

労働時間を把握できるツールを導入する

従業員の出勤・退勤時間を正確に把握するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。

最新の勤怠管理システムを用いれば、直行直帰の場合でもスマートフォンやタブレット端末から入力できるので、サービス残業が発生する心配もありません。

残業削減に成功した企業に学ぶ!ユニークな事例3つ

では、残業削減に成功した企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

働きすぎ予防へ向けた施策を打つ企業のなかでも、「ぜひ取り入れてみたい!」と思うユニークな事例をピックアップしてご紹介します。

株式会社ピコナ|残業チケット制の導入

株式会社ピコナは、3DCGプロダクションです。

【取り組み】
「残業チケット」とは、残業する際に消費するチケットのことで、月初にシステム上で配布されます。
19時までに社長へ残業申請をすると、チケット1枚当たり最大23時まで仕事ができる、という制度です。

ただし、チケットの上限は月7枚です。

社長は「クリエイターだからこそ、リア充でいてほしい」という思いが強く、残業申請があっても「作業状況を見て申請を却下することも多い」といいます。

【成果】
アニメーション業界の平均残業時間は月平均100時間といわれるなか、ピコナは「残業チケット」の導入で残業時間の80%カットに成功しました。
かつて100時間超えが当たり前だった残業時間が、20時間を切るまで削減されたそうです。

伊藤忠商事株式会社|「朝型勤務」制度の導入

伊藤忠商事株式会社は大手総合商社です。

【取り組み】
2013年10月より夜型の残業体質から朝型の勤務へと改める「朝型勤務制度」を導入しました。

早朝勤務時間(5:00~8:00)に働いた従業員には、インセンティブとして深夜勤務と同様の割増し賃金を支給する制度です。
加えて、深夜勤務(22:00~5:00)は「禁止」、事前申告のない20:00~22:00の勤務は「原則禁止」されています。

【成果】
20時以降の勤務は毎年減少傾向にあり、22時以降の残業は「ほぼゼロ」になりました。

また、8時以前に出勤する朝方勤務の従業員が全体の44%まで増加しています。

カルビー株式会社|誰もが納得できる成果主義の導入

カルビー株式会社はスナック菓子などの食品メーカーです。

【取り組み】
「長く働くことが良いことではない。短時間に効率よく働いて、成果を出すこと」を目標とするカルビーでは、目標と成果の明確化を目指す「C&A(コミットメント&アカウンタビリティ)」に従って、毎年上司と1年間の仕事内容と目標の約束(コミットメント)を確認し、結果に責任を持つため契約書にサイン(アカウンタビリティ)する業務スタイルを徹底しています。

全従業員のコミットメントは、売上や利益に結びつくという視点から数値化しなければならないルールがあり、役職者のコミットメントは社内のポータルサイトで「どのような成果だったのか」が具体的に公表されます。

成果が出なければ降格し、成果が出れば昇進する透明性の高い評価の仕組みは、従業員の働く意欲を高めています。

【成果】
社員一人当たりの残業時間は月間平均14.1時間と少なく、5年で利益率10倍を実現しました。

まとめ

「残業時間を削減したいけれど、何から手を付けたらよいのか分からない」のは、「なぜ残業を減らさなければならないのか」「企業にとって長時間労働とは何か」が明確でないからかもしれません。

まずは自社の問題をしっかり見つめ直すことが大切です。

今回ご紹介した取り組みを参考に、自社にあった対策を練ってみてはいかがでしょうか。

2019.08.08 up
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