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有給の義務化に伴う企業の対策は?整えるべき制度や他社の事例

働き方改革関連法の施行により、労働基準法の一部が改正されることになりました。
企業は法改正に対応した対策を求められており、早急に対処しなくてはなりません。

中でも企業が頭を抱えているのが、有給休暇の義務化ではないでしょうか。
従業員に有給休暇を取得させることが法制化されたため、違反すると罰則を科せられてしまいます。

そこで今回は有給休暇の義務化に対する対策方法や、他の企業の対策事例などを紹介します。

有給の義務化の概要については「働き方改革で有給休暇が義務化!?概要や注意点をおさらい」をチェックしてみてください。

有給義務化に伴う企業の対策

有給休暇取得の義務化に伴い、年10日以上の有給休暇を付与している従業員に対し、年5日の有給休暇を取得されることが義務となりました。

従業員に対して有給休暇を取得させるため、企業ではどのような対策を求められるのでしょう。

有給休暇の管理方法を見直す

これまで有給休暇の管理をしてこなかった企業の場合、有給取得義務化の対策として、有給休暇日数の管理が求めらます。
従業員一人一人に何日間の有給休暇が付与され、何日取得しているのかなど、その都度正確な情報を確認できる管理方法を作らなくてはなりません。

有給休暇は、従業員ごとに、雇入れの日から起算して付与されますので、入社日によってそれぞれ付与日が異なります。
従業員数が少ない企業であれば、管理はそれほど難しくありませんが、従業員数の多い企業で各自ごとの有給管理を行っていると、人事労務担当者に大変な負担がかかります。

有給休暇管理システムを導入できれば一番良いですが、コストをあまりかけられない場合は、付与日を統一することをおすすめします。

2019年4月10日に入社した場合、通常ならば有給休暇の付与日は2019年10月10日に、取得義務の履行期間は2020年の10月9日までとなります。
しかし、2019年4月10日の基準日を2019年4月1日にした場合、付与日は2019年10月1日に、取得義務の履行機関は2020年9月30日になります。
入社した従業員の数が多い場合は、このように基準日を月初にまとめ、一斉付与日を設けると有給管理が容易くなります。

気を付けなくてはいけない点が、基準日を前倒しにすることは認められていますが、後ろ倒しにすると違法になることです。
前の例だと、2019年4月10日の基準日を2019年5月1日に変更することはできないということです。

有給消化制度を整える

有給休暇の取得が義務化されても、従業員から積極的に有給申請を行うのは気が引けることでしょう。
有給休暇は従業員が請求する時季に与えなくてはなりませんが、有給休暇を取得しにくい風土の企業だと、いつまでたっても有給を取得しないことも考えられます。

従業員に有給を消化させるには、企業のほうから各自の有給休暇取得日を指定することができる個別指定方式を用いるか、または計画年休制度を導入することで対策できます。

こうした制度を導入すると、企業が主体的に業務をコントロールし、休みやすい環境を作ることも可能になりますので、有給休暇の取得促進に役立ちます。

※個別指定方式と計画年休についての詳しい説明は、後述の「有給を取得させるには?義務化への対応方法」を参照ください。

業務内容や分担を見直す

多忙な会社だと、従業員も有給休暇を取得するタイミングを逃し、そのまま時効を迎えてしまうこともあります。
有給休暇取得の義務化が施行されるまでは、それほど気にすることではなかったかもしれませんが、今後は必ず年5日の有給休暇を取得させなくてはなりませんので、企業側は業務内容についての見直しが必要です。

もし従業員が多忙な時期に有給休暇を取得しなかった場合、あとになって企業があわてて取得日を指定しても、年度の後半に取得が集中するなどのリスクが生じます。
一定期間に有給休暇が集中すると、その期間は出社人数が極端に減ってしまうため、業務に大きな支障をきたすことも考えられます。

有給休暇を従業員に取得させるには、これまでの業務フローや一人に偏っていた業務などを見直す必要があります。
繁忙期や従業員の業務量を把握し、属人化されている業務の解消や、無駄な業務の廃止などの改革が必要です。

手書きや手入力で行っている作業はシステム化、偏っている業務は細分化し、公平に分担するなどの見直しを行いましょう。

年次有給休暇管理簿と年次有給休暇取得計画表の作成

有給休暇の義務化により、企業側で年次有給休暇管理簿を作成することも義務付けられました。

年次有給休暇管理簿は有給休暇日数や有給取得日数、基準日などを記載するので、有給管理にとても役立ちます。

年次有給休暇管理簿と合わせて活用したいのが、年次有給休暇取得計画表です。
グループ別に月別や四半期別、年度別の有給取得の計画表を作成しておくと、有給が取得しやすくなるだけでなく、全体の休暇状況を把握できるようになります。
業務の偏りをなくすことや進行の調整などに役立つため、業務の効率化も図れます。

年次有給休暇取得計画表は、従業員が各自で5日間の取得予定日を入力し、上司が確認できるフローができていると理想的です。
途中で取得予定日を変更することもあり得ますので、その際に上司に報告が行くようなシステムづくりも心がけましょう。

※ 年次有給休暇管理簿についての詳しい説明は、後述の「「年次有給休暇管理簿」作成の義務化 」を参照ください。

有給を取得させるには?有給義務化への対応方法

企業の有給休暇取得義務化に対する対応は、大きく分類すると

  • 個別指定方式
  • 計画年休制度

の2種類に分けられます。
どのような制度なのか、それぞれのメリットとデメリットと合わせて、以下に説明します。

従業員ごとの個別指定方式

ほとんどの従業員が年5日以上の有給を取得できている場合は、個別指定方式が向いています。

年次有給休暇が10日以上付与される従業員の有給取得が5日未満の場合、企業側が取得義務の履行期間内に有給休暇の取得日を指定できます。

従業員の希望に沿った予定日を取得できるよう、企業側は指定時季について従業員の意見を徴収しなくてはなりません。

メリット

従業員からの聴取により有給取得予定日を決められるので、企業側も柔軟に対応することが可能です。

従業員も自分の希望する日程に取得できるため、双方に高い満足度を得られます。

デメリット

従業員一人一人を管理しなくてはならないため、経営者や人事労務に大変な負担がかかります。
取得義務の履行期間の終了日が近づくとともに、従業員に有給休暇を取得させなくてはなりません。
従業員数の多い企業では管理しきれないため、システムの導入なども必要になり、資金が必要になるでしょう。

計画的付与制度

ほとんどの従業員の有給取得日数が年5日未満の場合は、計画年休制度が向いているといえます。
計画年休といわれる計画的付与制度は、有給休暇取得の向上や労働時間の短縮につながるとして定められた制度です。

従業員代表者と労使協定を締結した場合、あらかじめ有給休暇取得日を指定することができます。
全社的に、あるいは部署ごとに取得させることもできます。

企業が計画的に有給取得日を決めておき、有給休暇を年5日以上付与すると、有給取得の指定義務の対象外になります。
ただし、従業員が請求・取得できる有給休暇を最低5日間残さなくてはなりません。

メリット

従業員ごとの有給取得日数の把握や、有給取得の促進を行う必要がありません。

繁忙期を避けて有給を取得してもらうことも可能なので、業務への影響が少なく済みます。

デメリット

労使協定を結んでいるため、企業側の都合で日程を途中変更することができません。
そのため緊急事態の対応が難しく、業務上に支障をきたすことも考えられます。

突然の対応が多い企業や、業務の見通しがたてづらい企業の場合は、個別指定方式が向いているかもしれません。

「年次有給休暇管理簿」作成の義務化

有給休暇の義務化により、企業側で年次有給休暇管理簿を作成することを労働基準法第24条の7項で定められました。

管理すべき情報

年次有給休暇管理簿を作成するうえで、必要になる項目は以下のとおりです。

有給休暇取得の時季

従業員が実際に有給休暇を取得した日付を記載します。
通常は取得日ごとに記載しますが、連続して取得した場合は、「〇月〇日から〇月〇日まで」のように記載します。

有給休暇日数

従業員が取得した有給休暇日数を記載します。
個別指定方式・計画的付与に関わらず、基準日から1年間の取得日数を記載します。

半日単位や時間単位で取得した場合も、取得回数や取得時間が分かるように記載しなくてはなりません。

基準日

有給休暇を付与した日付を記載します。
基準日を前倒ししている場合は、本来の基準日と前倒し後の基準日の両方を記載します。

前年度の繰り越し有給休暇がある場合は、前年度分と今年度分の基準日を記載します。

保存期間・管理方法

年次有給休暇管理簿は基準日から1年間+その期間が終了してから3年間の、計4年間の保存義務があります。

ただし年次有給休暇管理簿は、労働基準法第109条に規定された重要な書類には該当しないため、保存義務に反しても罰則はありません。

年次有給休暇管理簿は、労働者名簿または賃金台帳とあわせて調製することも可能です。
また、すぐに出力できるのであれば、システム管理することもできます。

作成の対象者

対象者は有給休暇を取得した全従業員です。

年次有給休暇管理簿は、労働基準法法第39条第5項から第7項までの規定により、有給休暇を与えたときに作成することが定められています。

従業員の有給休暇の取得権利が発生した時点では作成義務はありませんが、

  • 従業員からの有給休暇の請求
  • 企業側の時季指定による有給休暇の取得予定
  • 計画的付与による有給休暇の取得予定

が発生した時点で、その従業員を対象に年次有給休暇管理簿を作成しなくてはなりません。

実際に年次有給休暇管理簿の作成を開始する場合は、従業員の基準日が到来した時点で記載を始めたほうが良いでしょう。

有給消化のための他社の取り組み事例3社

従業員へ有給休暇を取得させるために、各企業ともさまざまな取り組みを開始しています。
ほんの一例ですが、各企業の取り組み事例を紹介します。

株式会社グッピーズ

株式会社グッピーズは、ヘルスケアサービスや医療系人材サービスを行っている企業です。

有給取得率を上げるための取り組みにより、取得率を54パーセントから84パーセントまで大幅に向上させました。

その施策内容は、下記です。

  • 勤続1年未満の従業員には、年に1度計画的に4連休を取得させる
  • 勤続2年目以上の従業員には、半年に1度計画的に4連休を取得させる
  • 勤続3年目以上の従業員には、3カ月に1度計画的に4連休を取得させる

「3連休より4連休のほうが嬉しい」といった従業員からの声を実現したことで、有給取得率アップにつながったようです。

万協製薬株式会社

三重県に本社を構える万協製薬株式会社は、「従業員が辞めない会社」を目標に掲げ、改革を続けてきました。

1週間の連続休暇と社員旅行の費用を支給する「プチコミファミリー制度」を導入しました。
この制度では、社内のさまざまな部門の従業員で「ファミリー」というチームを組み、社員旅行もそのメンバーで出かけます。
制度を導入したことで、社員旅行への参加率もアップし、メンバー同士のコミュニケーションも深まりました。

悩み相談や情報交換が気軽にできる風通しの良い企業になったことから、有給休暇の取得も促進され、2017年時点では80パーセントの高い取得率を誇ります。

六花亭製菓株式会社

お菓子の製造メーカーとしてしられる六花亭製菓株式会社は、1300名以上の従業員を抱える大企業ですが、全従業員が28年連続で有給休暇を完全消化しています。

技術向上に励んだ従業員や高い成果を上げた従業員を表彰するなど、従業員のモチベーションアップをはかるさまざまな施策を取り入れています。

従業員6名以上の国内外旅行では70パーセントを企業が負担する制度を設けており、この制度を利用して多くの従業員が有給休暇を消化しています。

まとめ

有給の義務化に伴う企業対策についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

有給取得の義務化により、法令を守れなかった場合は罰則を科せられることになりましたので、企業は従業員が有給休暇を取得できるよう、速やかに制度の整備を行わなくてはなりません。
社内対策を行う際の参考にしてみてください。

2019.08.05 up
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