
【インタビューを受けた人】
パナソニック コネクト株式会社
人事総務本部 採用部 企画課 結城 聡顕様
【インタビュアー】
ホワイト財団 高橋 かな子
【受賞理由】
パナソニック コネクト株式会社様は、グローバル競争における高い競争力を維持しつつ、
社員一人ひとりがやりがいを持ってのびのびと働ける『強くて優しい会社』の実現に力を注いでおり、その姿勢が非常に印象的です。
同社は、企業と個人の成長を両立させるために「キャリアオーナーシップ制度」を導入し、
社員が自らキャリアを考え、行動する自律的な文化を醸成しています。
ジョブディスクリプション(JD)など、制度を通じて個人が目指すポジションと、
そのために必要なスキルを理解し、研修による自己学習を重ねることで
上位ポジションへの挑戦を促進する仕組みが整っています。
さらに、外部有識者との対談動画視聴を取り入れるなど、キャリア形成に対する
主体的な意識が社員全体に浸透しており、動画視聴後のアンケートには1万人を超える従業員から回答が集まるなど、高い関心がうかがえます。
また、SNSでの情報発信も積極的に行っており、
その結果として新卒インターンシップ応募者数が前年対比223%、
キャリア採用応募者数が前年対比130%と飛躍的に増加しました。
社員がいきいきと働ける環境を支えることで、
企業価値の向上と社会貢献を両立させている姿勢は、まさにホワイト企業の模範であり、
今回の受賞にふさわしいと高く評価いたしました。
また、こうした環境の整備により、
確かな技術と知識でお客様や地域社会に貢献している点も特筆に値します。
パナソニック コネクト株式会社のポイント
・企業文化・マインドの変革を最優先に据えた組織改革
・大胆な制度改革と業務プロセスの見直し
・継続的な変革の推進と企業文化の定着
目次
結城様:パナソニック コネクト株式会社は、パナソニックグループにおいて、B2Bソリューション事業成長の中核を担い、顧客起点でお客様の「現場」に貢献する新しいソリューションを提供する会社です。
センシング、AI、ロボティクスなどのテクノロジー、実装機や溶接機、決済端末などのハードウェアや、Blue Yonderの Luminate™ などのソフトウェア。
さらには製造業として100 年以上にわたって蓄積してきた 知見を活かして現場を最適化する「インダストリアルエンジニアリング」。
これらを組み合わせて、サプライチェーンの現場に潜む課題を解決する 統合ソリューションを提供し、生活者の暮らしから働く方々の現場の環境まで、社会全体を支えています。
私たちのパーパス(企業としての存在意義)は
「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」
現場と向き合い、現場の課題を探り、現場の理想を実現する。
お客様とともに「現場」の未来へ進み続けたいと日々活動しております。

結城様:2017年にパナソニックの社内カンパニーとして整理統合されたコネクティッドソリューションズ社。
このタイミングで社長に就任したのが現社長の樋口です。
パナソニックに技術者として入社した樋口は、その後MBA留学、外資系企業勤務を経て各社のCEOを歴任し、再びパナソニックに戻りました。
樋口がパナソニックに戻ったときに驚いたのは、「30年経ってもかつて在籍していたころから企業文化がアップデートされていない」ということ。
企業が成長するためには変革が必要だと強く感じ、3階層の改革フレームを策定しました。
そしてその基礎となる1階部分に「風土改革(カルチャー&マインド改革)」を置いています。
「企業文化やマインドが変わらないと何も変わらない」という考えのもと、最優先課題の一つとしてカルチャー&マインド改革をスタートさせました。
企業文化やマインドの改革って、一朝一夕にできるものではないですよね。
でも、「これをやらずして何をするのか」という強い気持ちで、今もずっと続けているんです。働き方改革やコンプライアンスの徹底、DE&Iの推進など、さまざまな取り組みを現在進行形で進めています。
こういった取り組みの根本にあるのは、「会社が良くなれば、ビジネスのやり方も変わって、
結果的に勝てるビジネスにつながる」という考え方。
組織改革はゴールではなく、持続可能で健全な成長のための土台づくりなんですよね。
結城様:私たちはまず、「それは本当にお客様のためになるのか?」という視点で、慣習をすべて見直しました。
例えば、毎朝の朝礼や社歌斉唱を廃止。その時間をお客様との接点に充てる方が価値があると判断しました。本社も関西から東京へ移転し、情報とビジネス機会を最大化。オフィスはフリーアドレスを導入し、役員も一般社員と同じフロアで働く環境にしました。
働き方も大きく変革。副業を解禁し、「どこで働いてもいい」というワークエニウェアを導入。介護など家庭の事情を抱える社員も、柔軟に働けるようになりました。
さらに、ジョブ型雇用へ移行し、社員が主体的にキャリアを築けるよう企業内大学「Connecter’s Academy」を設立。
こうした改革を重ねるうちに、組織は柔軟で生産的に進化。
最初は戸惑いもありましたが、今では「これが当たり前」となっています。

結城様:フリーアドレス化によって社員間の距離が縮まり、ちょっとしたことであれば『今いいですか?』と声をかけて、その場でミーティングが始まったり、関係者がクイックに集まって意思決定がその場でなされたりするなど、業務のスピードや質が向上したと感じています。
また、社内での情報共有やナレッジのシェアも活発に行われています。
各事業部の担当者が集まり、成功事例を共有するためのイベントや、ポータルサイトを通じた情報発信が頻繁に行われており、部署間でうまくノウハウをシェアすることで、全体的に効率的に動けるようになっています。
結城様:この会社で「根っからの悪人」に出会ったことはありません(笑)。
私は、経営が“目的に基づく”形で進むことが大切だと考えています。
経営陣がその方向性を示し、社員が理解を深めることで、予想外の事態にも自ら判断できるようになります。
会社の理念がしっかり浸透しているからこそ、社員も目的に沿った意思決定ができ、それが企業のスピードアップにもつながっています。
また、ハード・ソフト両面の施策で社員間の距離が縮まり、フランクなコミュニケーションが実現。意見や情報の共有がスムーズになり、業務の効率も向上しました。
結局のところ、経営陣の明確なコミットメントが、企業全体の成長とスピードを支えているのだと実感しています。
結城様:また、DE&Iも経営の重要なイニシアチブの一つとして積極的に推進しています。
ジェンダー、LGBTQ+、障がいに関する理解を深める教育を進める背景には、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出したいという思いがあります。
目指しているのは、全員が自分の力を100%発揮できる環境づくり。
対話を通じて障壁を理解し、取り払うことで、誰もが自分らしく伸び伸びと働ける職場を実現したいと考えています。
これは、会社の「パーパス」を達成するためにも不可欠な要素です。

結城様:おっしゃる通り、長く勤めている方々にとって、変化への抵抗感が全くなかったとは言えません。
そこで私たちが意識したのは、変化を一度で終わらせず、次々と新しい取り組みを進めること。『この会社はずっと変わり続けているんだな』と実感してもらうことで、徐々に受け入れられるようになりました。
企業文化には“復元力”があり、変化を加えても元に戻ろうとする力が働きます。特に、従来の環境に安心感を持っていた社員は、新しい取り組みが一過性なのか、本当に必要なものなのかを見極めようとします。
だからこそ、コンプライアンスの徹底、男性の育休推進、研修制度の拡充、働き方の多様化、AI活用など、一貫した改革を止めることなく続けてきました。
続けることで、最初は懐疑的だった社員も『これは本気の変革なんだ』と理解し、少しずつ受け入れてくれるようになったと感じています。
結城様:そうですね。確かに変化に対する抵抗感はありますし、ただ単に「これをやります」と矢継ぎ早に進めるだけでは反発を招くことも考えられます。
そこで重要なのは、「なぜこの変革が必要なのか」という理由付けを明確にし、一つひとつ丁寧に説明していくことだと思っています。
私たちが意識したのは、すべての施策を会社のパーパス(存在意義)と紐づけることです。
「この取り組みはお客様のためになっているか」「より良いサービスを提供するために必要なことなのか」という軸を明確にし、単なる変化ではなく、目指す方向性が一貫していることを伝え続けてきました。
その結果、社員の皆さんも納得しやすくなり、変革を前向きに受け入れてもらえる環境ができたのではないかと感じています。

結城様:いくつか具体的な反応がありますね。
例えば、新入社員に話を聞くと、「挑戦を促す環境に魅力を感じて入社しました」という声をよく耳にします。
また、「変革が着実に進んでいる」という話を聞いて、かつて当社を退職した社員がアルムナイとして戻ってくるケースも出てきました。
さらに、「柔軟な働き方が可能になったおかげで、退職せずに働き続けることができる」という声もあります。こうした実績が積み上がっていくことで、変革の意義をより強く実感できていますね。
結城様:例えば、「Living Anywhere(認められた場合、居住地を自由に選択できる制度)」がなかったら退職せざるを得なかった、という社員もいます。
配偶者の転勤などの事情にも、比較的柔軟に対応できるようにしています。
また、産休明けに「まだ認可保育所が見つかっていないのでフルタイム勤務は難しい」という方が、週3日勤務から徐々に復帰するといった調整も可能になっています。
こうした柔軟な対応があることで、「スムーズに職場に復帰できた」という声を聞くことも多いですね。

結城様:企業の成長の鍵は、社員がいかにイキイキと働けるかにかかっていると思います。
そのために、企業は人材を大切にし、成長を支援する環境を整えることが不可欠です。
また、働くうえで個人的に大切にしていることは、常に「ご機嫌でいること」です。
ご機嫌な人の周りには人も仕事も集まってくると信じていて、そうした環境で仲間と切磋琢磨しながら成長することができると思っています。
ポジティブな姿勢は、仕事だけでなく人生全体を豊かにしてくれると信じています。
企業と個人がお互いを尊重し合いながら、共に成長できる未来を目指していけたらいいですね。

取材者のレビュー
新たな挑戦へと踏み出す行動力、そして常に進化を続けようとする姿勢が強く印象に残りました。
現代では転職が一般的になりつつありますが、「また戻りたい」と思える環境が整っていること、そしてその環境づくりが着実に成果を上げていることに、企業としての本気度を感じました。
これは、従業員一人ひとりのことを真剣に考え、改革を積み重ねてきたからこそ実現できたのだと思います。
また、「常にご機嫌でいることを意識する」という考え方は、仕事を円滑に進めるうえでとても重要だと改めて感じました。前向きな姿勢は、自分自身だけでなく、周囲にも良い影響を与えます。私自身もこの考えを大切にしながら、成長を続けていきたいと思います。
パナソニック コネクト様の挑戦し続ける姿勢から、多くの学びを得ることができました。
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