学生企業訪問 イーソル株式会社
管理部人材開発課 課長(取材当時) 澤田様
イーソル株式会社で働く澤田様にインタビューさせていただきました。技術職を経験したからこそわかる現場を理解しながら人材開発に携わる澤田さんにお話しいただきました。
-石井勇輝(以下、石井):どんな学生時代をお過ごしでしたか?
澤田:部活やサークルでの活動も楽しみつつ、学生時代の主な時間は勉学に費やしていました。心理学に興味があったことから、大学の教育学部では教育心理を専攻しており、その後、専攻とは直接関係のないエンジニアの仕事を選択しましたが、その後の異動で、結果的に今の人材開発の仕事の役に立っています。
-石井:当時の就職活動について教えていただけますか?
澤田:非常にアナログな時代だったなと思います。インターネットはありましたが、現在ほど身近ではありませんでしたし、ましてやスマホなんて映画の中に出てくる未来のテクノロジーでした。今のように就活サイトなどなく、就職活動用の冊子が刊行されていました。その中から会社や説明会の情報を探し、気になった企業の説明会にハガキで申し込むスタイルが主流でした。今の学生の皆さんからすると想像できませんよね。
-石井:就職活動を通して印象的なことはどういったことでしたか?
澤田:すごく厳しい時代でした。なんといっても当時は就職氷河期でしたので。特に私は女性であること、加えて留学による年齢差が不利な要因となるということを痛いほど味わいました。ただ、そこまで焦りはありませんでした。社会的にそういった時代でしたので、周りを見ても何十社受けても内定が出ない人も珍しくありませんでした。地図を片手に暑い中で会社を探して足を運んだ記憶がまだ残っています。そういう意味では色々な負担が減って良い時代になってよかったと思います。スマホ片手に迷うことも少ないでしょうし、選考への応募もワンクリックで完了しますしね。
-石井:イーソルに入社を決意した決め手はどういったところでしたか?
澤田:もともとエンジニア(中でもソフトウェア)に絞って就職活動をしていました。理由は長く働き続ける上で、手に職をつけたいと考えていたからです。しかし、当時も文系で未経験のエンジニア志望の新卒入社を迎え入れる企業はソフトウェア企業の一部に限られました。応募した複数のソフトウェア企業のなかで、私の「職人になりたい」という想いに対して「それなら保障しますよ」と言ってもらえたのがイーソルでした。あとは「人」が決め手になりましたね。選考を通じて接点を持った社員が、数ある就活生の一人としてではなく、一個人として対等に、親身に接してくれたのが好印象でした。社会に出たらこういう方々と一緒に働きたいと思いました。
-石井:なぜITの中で組込みに進もうと思われたのですか?
澤田:ソフトウェア技術を調べていく中で組込みに魅力を感じていました。ハードウェアの制御からアプリケーションまで幅広く携わることができ、実際に自分が作ったモノを動かす、動いているものが実際に見えるというのが非常に大きかったです。やっぱり成果が見えるとモチベーションも上がりますよね。
-石井:未経験験分野への入社で不安はありませんでしたか?
澤田:技術に関してはまっさらな状態からのスタートなので、「ひとまず3年間は頑張ろう!」と考えていました。ゼロスタートでしたので逆にスパッと割り切ることができていました。
-石井:入社してからのギャップはありましたか?
澤田:ギャップは意外となかったですね。未経験からのスタートということもあり、入社前に強い理想を描いていなかったというか、描けていなかったという方が正しいかもしれません。「こうあって欲しい」というより、入社してから見たこと、感じたことすべてが自分にとっては新しく、「会社ってこうなのか」、「仕事ってこういう事か」と、ありままの姿を受け入れ、咀嚼していく日々でした。それが楽しくもありました。
-吉田萌叶 (以下、吉田):会社の特長(事業内容)について教えていただけますか?
澤田:ざっくり言うとITの会社です。その中でソフトウェア開発を行っています。イーソルでは「モノ」に組み込まれている組込みソフトウェアを主力事業としています。一部ハードウェアも開発しています。
-吉田:具体的にどういった商品に使われていますか?
澤田:ソフトウェアと言うとPCで動作するものがイメージされがちですが、イーソルが扱う組込みソフトウェアは、炊飯器やデジタルカメラ、自動車などにも搭載されています。もっと広げると人工衛星にもイーソルのソフトウェアが搭載されていたり、逆に身近なところではNintendo Switch™のコントローラに搭載されていたりします。
-吉田:IT業界というと幅広いですが、企業情報のどういった部分を見ればその会社の特色がわかりますか?
澤田:どんな内容・どんな規模のソフトウェアを開発しているか、開発している時のプロジェクトの期間やどれくらいの規模・体制で進めているか、また、どれくらいのスピードでリーダーになるかといった観点が挙げられるかと思います。他にも開発の対象にはどんな特徴があるのか、どういった課題があるのかといった情報ですが、先に挙げたものも含めてこれらは採用情報ページに詳細が掲載されているケースは多くありません。本当に探そうと思うと社員の声として掲載されている場合もあります。
-吉田:イーソルに向いている学生はどういった方でしょうか?
澤田:特に「これ」といった能力や資質はありません。いろんな方がいていいと思っています。強いて言うと、色々なことに興味を持ち、インプット・アウトプットといった学びに前向きな人ですね。それ以外にもリーダーシップやコミュニケーション能力が高い人や、既に技術を身に着けている人など、魅力的な能力は挙げだすとキリがなくなっちゃいますね。新卒採用では過去の経験談や価値観を聞き出し、今後活躍していく力を持っているかどうかを見ている比重が高いですね。
-吉田:会社の良さを教えていただけますか?
澤田:フラットな雰囲気です。管理職に対しても「さん」付けで呼んでいますし、社内で社長とすれ違っても臆さずあいさつし、普通に話せますね。率直にコミュニケーションできることも良いところだと思います。あとは、なんと言ってもイーソルの業務がこれから世に出ていくものと関わっていくことが多いため、新たな可能性や将来性に携わりながら働けることは魅力の一つですね。
-廣瀬裕哉 (以下、廣瀬):澤田さんの担当業務を教えていただけますか?
澤田:人材開発を担当しています。当初は技術者として未経験からプログラミングをスタートし、しばらく技術職として自社製品の開発に携わり、管理職まで経験させていただきました。その後、現在の人材開発に異動してきました。職務内容は全社の人材育成や、人事制度の企画・運用や、キャリア開発支援、組織がより円滑に回るようにする組織開発、社員の相談対応など幅広く実施しています。
-廣瀬:どういった際にやりがいを感じますか?
澤田:様々な角度から仕掛けを行い、社員の働きがいや働きやすさの向上を計画したり、社員の成長を後押ししたりしています。そうして計画した仕掛けがうまくハマり、機能したときに達成感を感じますね。他には、エンジニア未経験で入社した社員が、新人研修を経て成長した姿、数年後に一人前のエンジニアとして活躍している姿を現場で見たときですね。これは育成に携わる立場特有の喜びだと思います。
-廣瀬:お仕事の難しさはどういったところにありますか?
澤田:費用や時間、人数といった様々な制限がある中、いかに効果的に働きかけるかが永遠の課題です。状況に応じて「広く浅く全体に行うもの」と、「個別に狭く深く行うもの」の使い分けが求められるのですが、そのバランスが難しいと感じています。個々に関わろうと思えば限りがなくなってしまい、ついついどこまでもフォローしていきたくなるのですが…。会社という集合体として見た際、全体への働きかけを欠かすことはできませんので、双方のバランスをどう取っていくのが最適か、日々自問自答しています。
-廣瀬:社会人になって落ち込んだことはどんなことでしたか?
澤田:あまり落ち込んだことはないのですが、育児と仕事の両立が綱渡りだった時期はあります。小学生にあがり、学童保育が始まりましたが、ある時期に学童保育が定員オーバーで入所待機になってしまい、両立に頭を抱えましたね。
-廣瀬:今後の目標を教えていただけますか?
澤田:社員一人ひとりの働きがいと働きやすさをいかに高めていくかを主眼に、様々なことにチャレンジしていきます。テレワークの頻度も高まってきましたので、システムを導入しながらいかに実現していくかが課題です。
-岡ちひろ(以下、岡) :やりたいことが見つけられない学生に対して企業選びのポイントはありますか?
澤田:よく聞きますよね、「やりたいこと」。よく耳にするせいで、学生さんも、中には採用担当者でさえも、この言葉をカジュアルに使いがちだなと思います。本当に「やりたいこと」を見つけようと思うと、そう簡単なことではありません。確かにやりたいことが明確であることは幸せなことですが、多くの人が見つけられないままだと思います。悩んでいる方には、それを悲観しなくて大丈夫ですよと言ってあげて欲しいです。今は「なんとなく」がスタートで良いと思います。なんとなくやりたい、なんとなく好き、最初の職場選びはそれで充分だと思います。とは言え最初の職場は皆さんにとって大事な経験だと思いますので、大学の授業やセミナーの中で自己分析をしたり、企業研究の中でどんな仕事や、会社があるかを調べたり、今は選択肢を絞らずに広く多くを見て欲しいです。その中で自分のアンテナに触れ、少しでもいいなと思った企業は説明会や選考に進み、実際に知る・話す機会を多く作ってみてください。多くの知識、価値観に触れる中で自分の方向性がきっと見えてくるはずです。就職前の皆さんに言うのもなんですが、会社に就職してからやりたいことを見つけるのもありだと思います。
-岡:澤田さんにとっていい会社とはどんな会社でしょうか?
澤田:最近では早い段階から転職を視野に入れて就職活動をされている方もいますが、一つの企業で長く安心して働きたいと考えられている方もまだまだ多いと思います。そうして長く働くことを考えた際、社会や時代の変容、また自分のライフステージの変化にあわせて会社が働き方を保証してくれているかが一つのポイントではないでしょうか。社員が安心して長く働ける環境を整えている企業は「いい会社」の要素の一つを備えていると言えると思います。また、少し観点は異なりますが、自身の働き方や熱量が認められていることは安心感につながると思います。会社といっても様々な価値観の方が一緒に働いていますので、その中で認め合い、尊重し合えることは長く働くうえでは欠かせない要素の一つですかね。
-岡:もし今から転職するならどんな会社、または仕事につきたいですか?
澤田:自分にとって「楽しそうだな」と思えたり、チャレンジできたりする会社がいいですね。今この場でお伝えできる「これがしたい」という具体的な目標はないのですが、そうした目標が生まれた際に背中を後押ししてくれる会社がいいです。あとは働き方ももちろん大事です。ワークライフ・バランスが取れることや、自分へ一定の裁量が任される見通しが持てるかどうか、他の福利厚生も含めて検討材料としては欠かせないですね。
-岡:採用選考で重視している点はどんなところでしょうか?
澤田:イーソルで活躍できそうかはもちろんですが、企業理念として掲げているミッションにある「革新的なコンピュータテクノロジーによって市場を創造し、社会を豊かにすること」や、コアスピリットである「楽しいチャレンジ」を生きるや、他にも4つのバリュー(卓越性、スピード・安全、オーナーシップ(当事者意識)、リンク(絆))に対して共感してもらえることです。イーソルでは新卒採用のメインは技術職になります。技術は常に進化し続けていくもので、未知の壁・課題に出くわすことが日常です。常に新たな道を切り開く必要があります。そのため、そうした分からないものに探求心や好奇心を持って取り組み続けることができる方が好ましいかなと思います。
-岡:合わないと判断するケースや基準はありますか?
澤田:会話をしていく中で、先ほどの4つのバリューにある「オーナーシップ」を感じることができない方や、選考で実施する課題への取り組み姿勢や採点結果などを踏まえて判断しています。
-岡:エントリーシート内の書類による判断ポイントはどういった部分でしょうか?
澤田:基本的に書面のみで判断することはありません。ただ、志望動機や自己PRを読む中で一般論や抽象的な表現で終始していたり、イーソルのことをきちんと調べていないなと感じたりすることはありますね。そうした場合でも面接の中で掘り下げたり、過去の経験談を話したりしてもらう中で、会社にマッチするかを総合的に判断しています。
-岡:イーソルの内定を獲得できた方の特長はありますか?
澤田:共通部分や、それを有していれば必ず採用といった特定の資質はありません。先ほど紹介した企業理念に共感できることや、技術者としての将来性を見込める方が採用されています。
-石井:社内で活躍している人や、求める人物像を教えていただけますか?
澤田:好奇心・探求心があり、自分で考え行動できる方です。特に学びに貪欲でインプット、アウトプットが上手な方が活躍しています。
-石井:採用時にはそうした方をどのように判断していますか?
澤田:経験したエピソードを聞く中で、物事をどういう風に受け止め、それに対してどのような対応をしてきたか、新しく出会ったことに対してどのように取り組んできたか具体例を聞く中で判断しています。
-石井:イーソルの内定を獲得できた方の特長はありますか?
澤田:共通部分や、それを有していれば必ず採用といった特定の資質はありません。先ほど紹介した企業理念に共感できることや、技術者としての将来性を見込める方が採用されています。
-石井:HPに掲載しているフリーランス採用を作った背景を教えていただけますか?
澤田:おかげさまで事業は順調で成長しており、その中で人手が欲しいという中で、広くイーソルに協力してもらえるように設けた制度になります。自社のエンジニアには長期雇用の中、安定した環境でじっくり成長してもらいたいと考えています。しかし、事業拡大をしていく中で、仕事のなかでは局所的に専門的な技術が必要になるケースも出てきます。その際にイーソルの力になってもらえるような位置づけとして機能しています。
-石井:最後に、澤田さんにとって「働く」ってどういうことですか?
澤田:生活・人生の支えです。
大事な側面として、金銭面の支えであることはもちろん、社会との接点であり、そこで得られるやりがいや達成感であり、人生を通して長きにわたる軸の部分になっています。
石井 勇輝
エントリーシートを書くときに「何をしたか」が重視されていると思っていましたが、事象に対して「どう考え、どう行動したか」というプロセスに注視されていると聞き、ハッとしました。
吉田 萌叶
澤田さんの「やりたいことが明確ではなくても不安にならなくていい、なんとなくの好感でやってみる」という言葉が、やりたいことが見つからず困っていた私にとってとても印象に残る言葉でした。完全なやりたいことではなく、心が少しでも動いたものから手をつけようと思いました!
岡 ちひろ
自分の中でやりたいことを重く考えすぎていたのかなと思い、澤田さんのお話を聞いて肩の力を抜けました。もう少しフラットに考えてみようと思います。
廣瀬 裕哉
「就職氷河期」と聞くと就職が困難で当時の学生は相当に疲弊していたのではないかとイメージしていました。今回、当時の就職活動の様子を澤田さんからお話しいただき、冷静に状況を受け入れて就職活動をされていたと聞き意外でした。もし自分が同じ立場だったら焦りに焦っていたと思います。イーソルさんの内部のお話だけでなく過去の就職活動の状況も教えていただき、非常に参考になりました。