ホワイト企業認定アワード受賞企業に迫る!株式会社プラストの制度定着までの成功ストーリー

2025.03.14
#ホワイト企業アワード

【インタビューを受けた人】

株式会社プラスト
代表取締役 山下様

総務部 浦田様

総務部 大下様

総務部 中野渡様

総務部 新井様

総務部 小津和様

 

【インタビュアー】

ホワイト財団  阪上 光

 

【受賞理由】

株式会社プラスト様に入社することで、自分自身の幸せを最大限に追求できると感じ、選出いたしました。特に、「評価制度」「女性の活躍」「調整休」の3点が魅力的だと評価しています。
まず「評価制度」についてです。事業部ごとにM V Pを表彰する仕組みがあり、社員同士が他部署での活躍や取組みを知ることで、仕事へのモチベーションにつながると感じました。
次に「女性の活躍環境」においては、育休・産休からの復帰後もキャリアを進めやすいよう、テレワークや時短勤務を積極的に導入している点を評価しました。最後に「調整休」についてです。前日に帰宅時間が遅くなった場合、5営業日以内であればその分、出勤時間を遅らせることができるこの制度は、休暇取得へのハードルを下げ、生産性を高めて働くことを可能にしていると感じました。当初は使用率が低かったものの、翌日使用の縛りを撤廃し、マニュアルを整備した上で説明会を行い、制度の浸透を図った点も、現状に満足せず常に試行錯誤を続けている姿勢が魅力的です。これらの施策によって、プラスト様の理念である「従業員、そして関わる全ての大切な人たちが幸せな人生を送るための基盤であり続ける」を実現していると考えました。

 

 

株式会社プラストのポイント

・代表自ら向き合った会社の現状!!現状把握が改革の第一歩に!
・制度利用者が殺到!?現場従業員にベストフィット!生産性も高めた調整休制度
・どこまでも現場の声に耳を傾け、従業員と一緒にいい会社をつくる姿勢

株式会社プラストってどんな会社?(企業概要)

ホワイト財団
ホワイト財団
まずは、会社の概要を教えていただけますか?

山下代表

弊社、株式会社プラストは、主に中小企業の経営者の方々が抱える課題を解決するお手伝いをしている会社です。具体的には、OA機器、ホームページ制作、アプリと連動した顧客管理システムを主軸にサービスを展開しています。一部では映像制作も手掛けており、法人向けに幅広いサポートを提供しています。

 

ホワイト財団
ホワイト財団
かなり多岐にわたっていますね。社内の雰囲気はどんな感じですか?

山下代表

現在、従業員数は200名を超え、それぞれが個性的なカラーを持ちながら活躍しています。拠点ごとに個性が爆発しているというか、明るく賑やかな雰囲気が特徴ですね。

 

 

制度導入前に直面していた壁

ホワイト財団
ホワイト財団
改めて、株式会社プラスト様、この度はホワイト企業アワード【学生審査部門】の受賞おめでとうございます! 社内制度を整える以前の状況や抱えていた課題についてお話し聞かせていただけますか?

山下代表

ありがとうございます。授賞式では、現役の大学生が選出した理由を話してくださっているのを聞いて、本当に学生が選んでくれたんだなと実感しました。特に、今日のインタビューにも集まっている総務部のメンバーが中心になって、まだなかった制度や体制についてもアイデアを出して整えてきた姿を見ていたので、それが評価されたというのは嬉しいですね。

だいぶいろいろな苦労があったなかで、取り組んでくれていたので。

ホワイト財団
ホワイト財団
社内制度を整える以前の状況についてお聞かせいただけますか?

 

山下代表

当初は、会社としての制度そのものがほとんど整備されていませんでした。世の中一般的な会社がよくわからないんですが、転職してきた従業員からすると「あれ?この会社、この規模なのにこういう制度ないの?」ということは感じさせていたことはあったと思います。

当時は、給与と仕事量が釣り合っていない、教育体制ができていないといった声や長時間残業や有給が取りづらいといった課題がありました。また、部署間の連携が不十分で、今の時代ならハラスメントに近い状況も散見されていました。いろんなことが複合的に起こっている状態でした。その結果、離職者もたくさんいましたし、辞めなくても不満を抱えたまま働いている社員が多かったです。

 

ホワイト財団
ホワイト財団
そこだけ聞いているとホワイト企業とは程遠い状態だったんですね。ちなみに業績はどうだったのですか?

 

山下代表

業績自体は、それなりに上がっていたんです。一定の水準を維持し伸びていたので、外から見ている人にはあまりわからなかったと思いますが、内情は深刻でした。良かれと思って取り組んだことが裏目に出たり、社員に伝わらなかったりと、試行錯誤の連続でした。

 

 

 

解決のターニングポイント

 

ホワイト財団
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そのような状況からの大変身を遂げておられますが、何か会社が変わるためのきっかけがあったんでしょうか?

 

山下代表

エンゲージメントサーベイを導入したことで、現状の課題が明らかに可視化されて出てきたんです。それで現実を見ていかなきゃいけないなとなりました。

導入以前から、「自分たちで目指すべき理想のプラスト」にしていくためにはどうしたらいいのかという声は上がっていました。健康体を目指すなら、今の状態を知らなきゃいけない、ということです。私たちが健康診断や人間ドックを受けるように、エンゲージメントサーベイを導入することで、今の株式会社プラストというカラダがどうなっているのかを調べみました。

そこで現実を知ったことが大きなターニングポイントになりました。

 

ホワイト財団
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エンゲージメントサーベイの結果を見たときのことを伺ってもよろしいですか?

山下代表

なんとなく課題があることを感じているのと、目に見える形で結果を突き付けられるのとでは全く違いました。

正直、目を通すのもつらかったですね。出たときは匿名の掲示板のような悪口みたいなのもめちゃくちゃありました。なかなか堪えるなぁと思いながらすべて目を通しました。

自分がやってきたことが否定されている気持ちにはどうしても、ちょっとね…。「いやだな~」と思いながら見ていたんですが、「こんなこと言わせちゃってる環境にしてしまったのか」と落ち込んだりもしましたが、ずーっと見ていると「何とかしたいな」という気持ちもわいてきました。

 

改革・改善とコミュニケーション・プロセスの重要性

ホワイト財団
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多くの課題があったと思うのですが、何から始めていかれたんですか?

 

山下代表

最初は、不満の声をそのまま受け止めて、片っ端から取り組み始めました。

エンゲージメント・サーベイのスコアがあって、世の中の企業の平均を50とすると、当社は40でした。平均よりも10ポイントも低いスコアが出ていたので、これはもうみんなの要望に応えたらスコア回復するに違いない!と思って、張り切ってむちゃくちゃ取り組んだんです。

 

例えば、有給が取りづらい状況を改善するために、「どうすればみんなが有給を取れるか」を考え、年5日の有給取得を義務化する仕組みやルールを全社で発表しました。また、残業を減らすために、上長やマネージャー陣に早めの退社を促しました。その他にも、給与テーブルの見直しや、家族手当の導入、出張時の食事代の負担を軽減するための出張手当の支給など、社員の声に応えてさまざまな改善を行いました。

 

ホワイト財団
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みなさんの要望を叶えた結果、いかがでしたか?

 

山下代表

結果を観てびっくりしました。これはもうエンゲージメントスコアが50は超えたんじゃないか!と期待していたんですが、実際に出てきた次のスコアは44~45だったんです。

 

ホワイト財団
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それだけ取り組んだのに、思っていたほどスコアの改善が見られなかったと…。力を入れて取り組まれた分、ショックも受けそうですが…何か要因があったんでしょうか?

 

山下代表

うまくいかなかった要因は、会社主導でやってしまっていたことでした。私や事業部の責任者が全部中心になって取り組んでいたので、みんなは私たちの取り組みを評価する審査員みたいな感じになってしまっていたんです。「政治に参加していない」って感じだったんですよね。

だから、これはやっぱりみんなの要望をすべて聞けばいいってことではなくて、ちゃんとみんなの要望も聞きながら、会社としても伝えることを伝えて、お互いに納得した状態、相互理解できる環境やプロセスをつくることが大事なんだってことを学びました。

今は、そういうことを自分でも頑張ってちょっとでも変えようと思ってくれる人が増えてきたので、少しずつですがカタチになってきています。

 

ホワイト財団
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お互い何を感じているのかわからなかったことが、制度設計にも影響していたんですね。思い違いが解決して導入された具体的な制度やエピソードはありますか?

 

大下様

やはり総務の立場からは、営業の皆さんが実際何を感じているのか想像するしかなかったので、現場が感じている不満や不足に気付きづらさはありました。

勤怠管理も行っているので、営業のみなさんに「有給あと何日取ってくださいね」とお声がけはするんですが、わりと「今月数字が足りていないので、ちょっと休むの厳しいです」みたいな返事が返ってくることも多くて、有休を取ってくれない現状があったので「休みたくないのかな?」という印象がありました。

ただ、エンゲージメントサーベイを見てみると、やはり遠方まで行ったり、夜遅くまでの営業はきついという声があるのを見て、やっぱり本当は休みたいのかという本音を知れました。だったら、休みやすい制度があれば、営業の皆さんも休んでくれるんじゃないかというところに気付き、調整休の制度を見直していくきっかけになりました。

 

 

利用者が一気に増えた独自の調整休制度

ホワイト財団
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調整休の制度はプラストさんの制度の中でも特徴的なものですが、どんな制度なのか、また、導入秘話などありますか?

 

浦田様

「調整休」の制度は、遠方のお客様先への訪問などで、帰宅が遅くなってしまう従業員に対して、翌日から休日出勤を含む5営業日以内のどこかで出勤時間を1~4時間遅らせることができるという制度です。

ホワイト財団
ホワイト財団
仕事で帰りが遅くなったら出社時間を遅らせることができるのは、かなり実用的ですね。どうしてこの制度ができたんですか?

浦田様

もともと勤怠管理は、紙のタイムカードを使っていて、全社的に勤怠がでたらめだったんです。遠方のお客様先への直行直帰したらそもそもその日に書けませんし、さらに手書きなので、正確な時間なんてわからなくなります。

そんな状態だったので、「タイムカードを書いても書かなくても変わらないよね」という雰囲気が蔓延していました。

そこでまず、現状を把握するために、勤怠管理システムを導入しました。外出中でも打刻できる仕組みを入れるなど「やれない理由」を全部潰していくということから始めました。

従業員の働きやすさと両立する抜本的な対策を行うためには、実態を把握することが大切でした。

そうして、実態通りに勤怠管理ができたことで見えたことがあります。
どうしてもお客様都合で現場に伺うので、実態通りに打刻したとしても、帰宅が遅い日の翌日は同じように出勤するのでどうしてもつらいものです。しかも、日本は地域によっても交通事情も全く異なりますから、単純に距離だけでは負担が計り切れないんです。そこを解消できないかということで、調整休の制度をつくりました。

 

ホワイト財団
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それが好評な調整休制度だったんですね。すぐに制度利用者が増えたんじゃないでしょうか?

浦田様

それが…つくった当初はほとんど利用者がいませんでした。
帰宅が遅くなった翌日だけ適用する制度だったり、これまでの慣習から休むことへの漠然とした抵抗感なども要因だったと思います。せっかく作った制度も使えないんじゃ意味がないので、しばらく運用した後に改めて現場の声をさらって、「翌日のみ」という縛りを撤廃し、5営業日まで拡大しより自由度を高めました。
休暇申請のマニュアルを作成し、社内説明会を開催することで理解促進を図ったうえで、試験運用期間を設けました。

実際に制度活用しはじめたチームからとても好評で、瞬く間に調整休を取得するチームが増えていきました。

 

 

生産性と働きやすさの両立・活性化する制度づくりの要諦

ホワイト財団
ホワイト財団
ここまでのお話で、一つの制度が出来上がるまでに相当なご苦労を感じられました。その経験から現場にフィットした制度づくりに大切なことをお伺いしてもよろしいでしょうか?

浦田様

何度でも現場の声に耳を傾けるということだと思います。

一つ、「これでいいだろう!」という制度を整備しても、各部署や現場で感じ方が違います。「ホントは休みたいけど、休みたいとは口にしにくい」という本音と建て前もあります。だから、「新しい制度はありがたいけど、使えないなら意味ないよね」という現場の本音をエンゲージメントサーベイなんかを使いながら、ピンポイントに調整していくことで、やっと制度が使いやすくなったな、とそういう反応が出てきます。

一度作った後に、もう一段階従業員の声や現場の声を深堀をして、「ほんとはどうなんだろう」と問うて、もうひと手間かけるというのが、一番大変でもあり大切なところだと思います。

もう一点は、コミュニケーションが自動的に発生する仕組みは意識的に設計しました。
調整休も、個別ケースなので、一律に時間や要件を決めすぎるとうまくいきません。利用者と上長の間で相談するので、自動的にコミュニケーションが生まれます。
社内に相談窓口を設けることで、話し合いの場が設けられます。それが相互理解を促す仕組みとして機能するので、個別事案も吸収できていると思います。

 

ホワイト財団
ホワイト財団
ありがとうございます。山下代表が特に大切にされていたことがあればお聞かせください。

 

山下代表

どんないろんな制度を導入するにしても、業績を落として利益が出なくなったら、綺麗ごとではなく、会社がやっていけなくなっちゃうので、そこの両立はとくに重視していました。

会社としては、理念を実現させるためにも、利益は継続してあげていかなければなりません。調整休を導入したことによって、売上が下がったらやらない方がよかったよねとなってしまいます。やるんだったら、営業マンも働きやすくなって、業績も上がったという両立ができることができたら成功じゃない?という話はしていました。

実際、予算や売り上げを落とさずに、従業員が一丸となって実現してくれました。現場に合わせた仕組みを作ってくれて、それをうまく活用してくれたなと、いろんなことがうまくいったと感じています。

 

 

働く従業員の声

ホワイト財団
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ここまで、職場環境のビフォーアフターのお話を伺ってきました。ここで、今、働いてらっしゃる従業員の皆さまのお話も伺ってみたいと思います。

 

中野渡様

私は入社2年目になるので、変革前の社内の労働環境の話を先輩から伺うことがあると「本当にそんなことがあったのか」とおとぎ話のような感じで聴いています(笑)

有給に関していえば、お休みも取りやすい環境ですし、残業についても帰りやすい環境だなと感じています。

制度面はもちろんですが、急な体調不良で午前中お休みできないか相談したときにも、業務面だけでなく気持ちの面もフォローしてくださる上司や同僚とのいい関係性もあるので、いつも感謝しています。

 

ホワイト財団
ホワイト財団
若い方のお話と社長や浦田様のお話とのギャップが大きくて、本当に環境が変わったんだなと感じられる臨場感のあるお声ですね。

 

新井様

私はもともと岡山の営業所に入社していましたが、パートナーの転勤で急遽、名古屋に引っ越すことなったんです。当時は、異動も難しいだろうし、転職しかないかもしれないと思っていました。

上司の浦田に相談したところ、結果的に名古屋営業所へ異動して勤務することになりました。
相談してほんとによかったなと思います。
その後、社内に女性キャリア相談窓口も立ち上がりました。特に女性は、結婚や出産、育児など、キャリア形成に影響力のあるライフイベントがたくさんあるので、ほんとに働きやすさが進化していると実感しています。

ホワイト財団
ホワイト財団
ありがとうございます。個別対応されている中小企業様はよくお見掛けしますが、そこからしっかり制度化して相談窓口を設置されることで、「相談してもいいんだ」と思える従業員もたくさんいらしたでしょうね。

小津和様

私はキャリア採用で転職してきたんです。前職からの転職理由の一つに残業の多さがあって、今プラストではたらかせていただいています。入社してからはほとんど残業もなくて驚いています。ただ楽になっただけじゃなく、働きやすくなることで、仕事の生産性もよくなっていると思います。

 

 

労働環境改善をがんばる企業へのメッセージ(がんばる企業へ一言)

ホワイト財団
ホワイト財団
最後に、労働環境、社内制度の改善に取り組んでらっしゃるたくさんの企業へメッセージをいただいてもよろしいでしょうか?

山下代表

今私も試行錯誤しながらやっていますので、そんな上から言えるようなことはないんですが…

もし、今自分の会社が「健全ではないな」と代表が感じてらっしゃるのであれば、現時点で会社がどうなっているのか現実から目を背けないことが重要だと思います。

正直、見たくないところなんですが…勇気をもって可視化、数値化、声を集めて、目の当たりにすると、何をすべきか、まずはどこから取り掛かればいいか見えてきます。

まず現状を把握することで、現在位置がわかるので進めている改革が理想の方向に進んでいるかどうかの判断ができます。

従業員の満足度やエンゲージメントも向上し、働きやすさも改善し、企業の売り上げや生産性も高まる改革を進めるためにも、嫌なことも含めて向き合うことが重要だと思います。

 

ホワイト財団
ホワイト財団
ありがとうございます。まずは現状を受け容れる。すべてに通じる基本だからこそ、やはり効果は絶大だということですね。インタビューにお応えいただきありがとうございました。改めて受賞おめでとうございます。

 

 

 

取材者のレビュー

 

山下代表や近くでずっと見ていらした浦田様のおはなしから伺えるプラスト様のビフォーアフターや現場に合わせた制度設計と実装までのエピソードから、やはりいいものをつくるために必要な泥臭さを感じました。今回お話にもあがったエンゲージメントサーベイを実装することで、従業員の声を受け容れる習慣が身に付いたと仰っていたのが印象的でした。そう語る代表の姿に、企業経営者の器の大きさが企業の成長に通じているのだと感じました。これから益々の成長と従業員の皆さんの活躍に乞うご期待です!