【インタビューを受けた人】
医療法人大河内会 おおこうち内科クリニック 大河内 昌弘 様
医療法人大河内会 おおこうち内科クリニック 加藤 有加里 様
医療法人大河内会 おおこうち内科クリニック 清水 瑞人 様
【インタビュアー】
ホワイト財団 金崎綾香
理事長&院長 大河内 昌弘 様
管理栄養士&事務 総務人事担当 加藤 有加里 様
統括事務長 清水 瑞人 様
2023年1月25日に『第9回ホワイト企業アワード*』が開催されました。
ダイバーシティ&インクルージョン部門にて受賞をされた「医療法人大河内会おおこうち内科クリニック様」の取組み概要や、導入にいたった背景など詳細をご紹介します。
ホワイト企業アワード*:ホワイト財団が主催する世の中に共有すべき制度や取り組みについて表彰・発信を行う、働き方改革の参考事例が日本で最も集まるホワイト企業イベントです。概要はコチラで紹介しています。
【受賞理由】
「ダイバーシティ」「インクルージョン」を明確に定義した上で、社員それぞれの個性の理解、そして個性の最大化という軸の基で取り組みをしている点が素晴らしいです。 雇用面では、高齢層の雇用、パートタイマー等の多様な雇用形態、女性のキャリアの3点に注目しています。具体的には、社員の「トリセツ」「長所カード」「大臣任命制度」などを導入したり、個の尊重に必要である勉強会に全員で参加するだけではなく、資格の取得も推進したりして、クリニック内でのお互いの理解・尊重への促進に落とし込めています。 また、患者様への対応の側面では、国籍・言語に特に配慮し、より多様な層への医療の提供ができています。具体的には、国籍での制限がないことや、英語を話すことができるスタッフの採用をしており、日本語に自信がない患者様も安心して医療が受けられるようにしています。
おおこうち内科クリニックのポイント
・多くの患者様を笑顔にする「医療業界のアマゾン」を目指して
・患者様・スタッフとその家族、まわりのすべての人を大切にするクリニック
・豊かで幸せな世界を目指して、「大感動」を発信している
加藤様:おおこうち内科クリニックは、愛知県稲沢市に拠点を構える内科クリニックです。
糖尿病を専門としたクリニックですが、自由診療にも力を入れており、現在ではがん治療や美容医療も行っています。
—働きやすい職場環境実現のために、おおこうち内科クリニックで取り組んでいることを教えてください。
加藤様:当院に勤めているスタッフは、ワーキングマザーも多く、仕事と子育てを両立できる環境づくりに取り組んでいます。
たとえば、お子様が急なご病気で仕事を休まなければならなくなった場合。
そんなイレギュラーが発生した際も柔軟に対応できるよう、人員配置に少し余裕を持たせています。
また、院長先生は常日頃から「スタッフの家族も大事したい」と仰ってくださり、それを働く環境にも反映してくださっています。
その考えがスタッフにも浸透していて、誰かが困っていたら誰かが手を差し伸べたり、誰かが休まざるを得なくなったときにみんなでカバーしたりと、助け合いが自然とできる職場となっています。
—福利厚生が充実している点も魅力的ですよね?
加藤様:はい。
福利厚生を充実させていることも、働きやすい環境づくりに向けた取り組みのひとつです。
最近スタートさせた美容手当は、美容室やマッサージにかかる費用を月5,000円までクリニックが負担しています。
さらに、健康を守るということで、スタッフの診療費をクリニックで負担しています。身なりやコンディションが整うことで、「仕事のモチベーションが上がる!」とスタッフからも好評です。
ほかにもコストコ会員費負担や資格補助など、ワークライフバランスの充実に活用していただけるように福利厚生を充実させています。
資格の取得はクリニックが負担してくれるので、スタッフは積極的に資格の取得に挑戦して、自身のスキルアップに活用しています。
—ダイバーシティについて取り組まれていることを教えてください。
加藤様:当院がクリニックをかまえているエリアは、工場に勤務されている大勢の外国人労働者や、そのご家族が生活しています。そういった外国の方々が気軽に診療を受けることができるクリニックづくりに取り組んでいます。
取り組みのひとつがポケトーク(翻訳機)の導入です。
少しでもコミュニケーションを円滑にするために導入しています。もうひとつが出張英会話教室です。定期的に英会話教室の先生にお越しいただいて、スタッフにレッスンを実施してもらっています。
このような取り組みが口コミで広がり、今では多くの外国人の患者様がお見えになっています。
院長様:出張英会話教室を院内で行う目的は、英語力の向上ももちろんですが、スタッフの抵抗をなくす意味も含まれています。外国人とのコミュニケーションに不安を持つスタッフの抵抗感を少しでもなくしたいという思いから、この取り組みをスタートさせました。
—外国人の患者様の受け入れを強化するようになった背景などはありますか?
院長様:当院が外国人の方を積極的に受け入れるようになったのは、医療現場における人種差別が背景にあります。
私が15年前にアメリカに留学した際に、言語の壁を痛感した出来事をたくさん経験しました。
英語でうまく伝えることができなかったために、医療機関を受診できなかったこともありました。
そのような経験をして数年後、日本に帰ってきたときに、同じような悲しい現状をたくさん目にしました。
例えば、今世界で流行しているコロナウイルス。
メディアではあまり報道されていませんでしたが、外国人のコミュニティでクラスターが発生していたんです。
この原因として挙げられるのが、不平等な医療の差です。
外国人だからという理由で、診療を断るクリニックが多く存在した結果、クラスターの発生につながったのです。
私たちが外国人を積極的に受け入れることで、日本に住む外国人の方々を守り、引いては、地域への貢献や日本を守ることにつながっていると考えています。
—患者様を受け入れる信条について教えていただけますか?
院長様:医療業界は日本と海外の治療方法の差が多く見受けられます。
当院に来院いただいた外国人の患者様に、男性更年期障害を発症した方がいらっしゃいました。
その患者様は日本に来る前から治療を受けていらっしゃったんですが、日本ではその治療方法がポピュラーではなかったんです。
そのため、多くの病院では「治療ができない」と断られたそうです。
当院ではその治療方法ができないからといって諦めるのではなく、他の治療方法でアプローチできないか、工夫をして対応させていただきました。
このような取り組みの結果、今では多くの外国人の方に来院いただき、「外国人に優しい病院はここ以外に他にはない」とのお声をいただくほどになりました。
「日本で行っていない治療法だから」「外国人だから受け入られない」と断るのではなく、試行錯誤をすることが大事だと考えています。
—おおこうち内科クリニックではスタッフの活躍を推進しているとお伺いしました。具体的な取り組みを教えていただけますか?
加藤様:当院では女性スタッフ一人ひとりが自信を持って活躍できるように、通常の診療業務に加えて個性が発揮できるステージを用意しています。
たとえば、とあるスタッフは当院の取り組みがテレビで紹介される際に番組に出演したり、外部講師として他のクリニック様や企業様に向けたセミナーで登壇したりしています。
また、当院には患者様が来院なさった際に玄関までお出迎えしたり、患者様の娘様がご結婚するという情報を得た場合にはささやかなプレゼントを準備したりと、「おもてなし」が得意なスタッフもいます。
医療機関に来院するとき、患者様は多かれ少なかれ不安を抱えていらっしゃいます。
その不安を少しでも軽くしていただくために、そのような心配りを行っています。
これらの経験を活かし、医療機関の枠に捉われない「おもてなし」のプロとして、講演を担当していただくといった事例もあります。
—改めて、おおこうち内科クリニックはどのようなクリニックなのでしょうか。
加藤様:当院は消化器疾患、内分泌疾患といった保険治療だけでなく、がん治療や美容医療などの自由診療にも対応しています。
より多くの病気に対応できるように、スタッフ一丸となって資格取得や勉強に取り組んでいます。
「困ったことがあれば、まずおおこうち内科クリニックに行ってみる」。と思っていただけるクリニックを目指しております。
お子様から大人の方、ご高齢の方まで、どんなニーズにも対応できる、まさに「医療界のAmazon」になることが目標です。
—おおこうち内科クリニックの働く環境について教えてください。
加藤様:クリニック全体としてはスタッフ同士の仲が良く、楽しい職場だと言えます。
私は、30代で医療業界 未経験でおおこうち内科クリニックに入社しました。
不安もありましたが入社当初に院長先生から「年齢は関係ないよ、気持ちとやる気があれば大丈夫」と言っていただき安心して就職することができました。
その言葉通り、教育制度がとても充実しているので、自分から積極的に挑戦すればどんどん成長することができます。当院にはそれぞれの個性を活かして活躍するスタッフがたくさん在籍しています。
外部の講習やイベントへの参加、資格取得制度などを活用して、さまざまな考えや学びを吸収できる環境が整っている職場だと思います。
院長様:医療機関で働くということは、「学んだ医療の知識を活かして患者様に対応すること」と考えられる方が多くいらっしゃると思います。
しかし、それは当たり前です。
私がスタッフや面接に来た求職者に「当院で働くと人生が変わる」と、お伝えしています。
この言葉は全く比喩ではなく、「やりたい事や夢があるなら実現できる環境が当院にはあるよ」と背中を押してあげたいんです。
イベントや講師、テレビ出演など、それぞれのやりたいことを叶えられることが、当院で働く大きな魅力だと考えています。
—楽しいお写真をたくさん撮られていますが、社内イベントについて教えてください。
加藤様:院内では、ハロウィンなどの季節行事に合わせたイベントを開催したりしているのですが、年々規模が大きくなっていると思います(笑)
去年はみんなで仮装をして診療し、終了後に集合写真を撮りました。「今年はどんな事をする?」といった声が自然と挙がって、スタッフが楽しんで取り組んでいくような、和気あいあいとした環境です。
また、周年記念や忘年会などの行事には、従業員とそのご家族はもちろん、近隣の薬局の方や製薬会社、建設・設備会社の方などを招待しています。
これは、普段からお世話になっている方々に「感謝をする機会」としてご招待しています。
—スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にするための取り組みも多く導入されているとのことですが、どのようなものがあるのですか?
加藤様:当院ではスタッフ同士の理解を深めるための取り組みを多数用意しています。
入社時に個性心理學(動物占い)などを用いて、どんな個性の持ち主なのかを見てお互いの個性を認め合えるよう活用しています。楽しみながら実施できるのと、自分にとって当たり前だと思っていることが他の人には当たり前ではないことを知ることができます。
他にも、自分の性格を書いた「取り扱い説明書」を全員が見る場所に共有し、他のスタッフがコメントを記入できるようにすることで相互理解や仲良くなるきっかけづくりに活かしています。
また、医療の専門分野を越えた「得意なことの大臣」に任命する取り組みもあります。
絵を描くことが得意なスタッフを「アーティスト大臣」と任命し、院内の掲示物にイラストを描いて欲しい時にはその人にお願いするというように、何かがあった時に頼みやすいような雰囲気づくりを行っています。
—スタッフがのびのびと働ける環境を目指したきっかけを教えてください。
院長様:環境を変えようと思ったそもそものきっかけは、スタッフの退職でした。
開院から2~3年目の頃に当時のスタッフがどんどん辞めていってしまったんです。原因は現場が忙しくなり、来院してくれた患者様や売上を注視するあまり、スタッフのフォローが疎かになったことです。
「働く環境を良くするためにはどうすればいいか…」。私は経営についての本を読み、他のクリニックに赴き、他の企業の講演に参加し、その答えを追求しました。
その結果、スタッフを「これでもか!」というくらい大切にしようという考えを持つようになりました。
そこで、サプライズでプレゼントを用意したり、積極的に声をかけたりと、まずはスタッフへの感謝を伝える行動を起こしました。
「大事にされている意識」をそれぞれに芽ばえさせたんです。
そうすることで、私の考えを知ろうと自然に歩みよってくれるようになり、スタッフが能動的に行動してくれるようになったんです。
私が何かイベントや企画をするときって絶対に1人か2人反対する人がいるんですよね。
でも、そこで反対意見があるから諦めるのではなく、周りを巻き込んで、自分が正しいと思うことをやり続けてきたんです。
やり続けていかないと、成功には繋がりません。そんな考えを大事にして取り組みを続けた結果が、今の当院であり、今回のホワイト企業認定に繋がったのだと思います。
—ホワイト企業認定を取得した理由を教えてください。
院長様:ホワイト企業認定を取得した理由は、自分達の活動や取り組みに誇りを持ち、もっと多くの人に知って欲しいと思ったからです。
私たちは「大感動」という言葉をメインメッセージに掲げて、対外的に活動を行っています。
このメッセージで企業が従業員を大事にするだけでなく、地域の方やご家族など、身の周りの人々を大切にすることが世の中をもっと良くするということを知っていただきたいんです。
今までたくさんの環境改善を行い対外的な活動をしてきましたが、「大感動」というメッセージを掲げている以上、働く環境を認めていただける賞は総なめしたいですね(笑)。
そして、今回のホワイト企業認定といった場を通し、当院を知ってくださる方が増えていただければと思います。
—ホワイト企業アワードを受賞されましたが、ダイバーシティ&インクルージョン部門にエントリーした理由を教えてください。
清水様:ホワイト企業アワードへのエントリーにあたり当院の強みは何なのかを考えました。
ホワイト企業認定は7項目で構成されていて、「当院がどの程度できているか」項目ごとに可視化することができます。今回、ホワイト企業アワードの「ダイバーシティ&インクルージョン部門」を受賞させていただきましたが、実は認定取得の点数でいうと一番点数の低い項目だったんです。
しかし、差別のない多様性な社会への取り組みは、自分たちの1番の強みだと胸を張って言える取り組みだったので、あえてトライさせていただきました。
ホワイト企業アワードを受賞できたのも、本当にありがたいことだと感じます。
院長様:当院では、難病を持った方々を積極的に採用しています。
なぜなら「病気を抱えて来院した患者様に寄り添える心を持っている」と考えているからです。
患者さんと一緒で、何か病気を抱える辛さを体験しているからこそ患者様に共感できるんです。
現在、1型糖尿病を小児のうちに発症したスタッフがいますが、その経験を活かし、現在では院のリーダーとして、たくさんの患者様に寄り添ってくれています。
自分で持病をコントロールして働いている姿は、患者様にとって励みになります。捉え方次第で、ネガティブに思っていたことも長所に変えられる。どんな人にもスポットを当てることができる。
それがダイバーシティ&インクルージョン経営だと私は思います。
清水様:こういった形で振り返りをさせていただき、まだまだ不足している課題点も見えてきました。
ですので、今回受賞した項目以外にも着目し、今後の取り組みに盛り込ませていただきたいと考えています。そして、10年20年続くクリニックの経営につなげていけたらと思います。
—貴所では、どのような人が活躍できるでしょうか。
清水様:私は「八徳」という考え方を大事にしています。八徳には「誠意、信頼、愛情、感謝、努力、礼節、謙虚、許容心」という8項目があるんです。
たとえば、何かミスをした時に誠意を持って謝るという風に行動できる人であるとか。
そういう思いやりの気持ちを常に意識して行動できる人は当院で活躍していただけると思います。
加藤様:素直な人、ということが一番じゃないでしょうか。
素直にスポンジのようにいろんな事を吸収できる人は、当院で働く前には想像もできなかった新たな自分になれると思います。
また、笑顔が素敵な人と一緒に働きたいですね。笑顔や楽しい気持ちは伝染して、他のスタッフや患者様も笑顔になっていくと思うので、人柄がにじみ出る笑顔をお持ちの方と働きたいです。
—加藤様の思う「ホワイト企業」とはどんな企業でしょうか
加藤様:私の思うホワイト企業とは「働きながら、自分の生活を大事にできる企業」だと考えます。
“自分の生活 ” とは「成長のために使える時間が与えられている」ということです。
自身の夢や目標、キャリアのための資格取得など、成長や挑戦できる機会を支援してくれる企業だと思います。
おおこうち内科クリニックには、それが充分に備わっていると思います。
取材者のレビュー
クリニックとしての診療だけでなく、院内に息づく「大感動」を他の企業様や全世界に発信する活動も行っている、おおこうち内科クリニック様。働きやすい環境づくりだけでなく、外国人の患者様の受け入れ体制や女性の活躍支援など、ダイバーシティマネジメントを体現している取り組みがとても印象的でした。
その活動の根幹には、スタッフや患者様、クリニックを取り巻く周りの方々を大事にする院長先生の想いが根付いていることを、取材を通して実感することができました。
日本次世代企業普及機構 金崎綾香
小売業界でバイヤーとして、商品買付けや企画などの店舗管理業務に従事しつつ、販売メーカーの営業として法人営業にも携わってきました。2022年より株式会社ソビアに入社し、これまでの経験を活かし、ホワイト企業認定を取得された企業様の魅力をホワイトキャリアでたくさんの方に発信していきます。