株式会社フォーラス&カンパニー 経営企画部 課長 坂部 生
<ご担当者様>
2013年に中途採用で賃貸仲介事業部の営業として入社。 2015年冬からの企業改革に合わせ新卒採用プロジェクトメンバーに抜擢され、2016年4月に人材開発室を新規で立ち上げ、責任者となる。 その後、より経営に直結した人事運営を行うため、経営企画室と人材開発室を統合し経営企画部を社内に創設。 現在は経営企画部の責任者として多岐に渡る業務に従事している。
ホワイト財団 佐野 毅
<インタビューアー>
広告・印刷業界に就職して約8年間、企画提案をするプレイングマネージャーとして従事。2021年5月よりホワイト財団にジョイン。前職の経験を活かして企業のブランディングをアシストし、「家族に入社を勧めたい企業」の普及を目指し邁進中。
2021年11月25日に第7回ホワイト企業アワード*が開催されました。
その中で生産性向上部門にて受賞をされた株式会社フォーラス&カンパニー様の取組み概要や、導入にいたった背景など詳細をご紹介します。
ホワイト企業アワード*:ホワイト財団が主催する世の中に共有すべき制度や取り組みについて表彰・発信を行う、働き方改革の参考事例が日本で最も集まるホワイト企業イベントです。概要はコチラで紹介しています。
【受賞理由】
人材の流動が激しい不動産業界にあって、自社の採用難に直面したことで大きく方針を転換。採用、定着、成長を促進する制度やツールによって進化を遂げられました。 その改革は、①長期的キャリア形成ができるよう「完全成果報酬型」から「総合評価制度」へ切り替え ②チーム内で業務分担と提案レベルの均一化を図り成約数を向上させる「ユニット型営業」 ③営業社員の業務を仕分けして非生産業務を営業社員から切り離しパート化 ④各社員に分散していた顧客反響対応を本社専門部署へ集約し追客と来店への誘導を効率化 ⑤社員が望むキャリア形成のため人事異動を公募する「キャリアリクルーティング制度」導入 ⑥物件データベースの更新作業を自動化(リスト取得からデータベースの更新までを一貫して行う賃貸業界初のRPAツールを開発)⑦CRMツールを導入して顧客管理のデジタル化、など多岐にわたっています。これら改革の組み合わせにより、ホワイト化、成約率や業務効率の向上、離職率の低下を見事に実現させておられます。
目次
佐野 毅(以下、佐野):取り組みを開始された背景を教えていただけますか?
坂部 生(以下、坂部):
大きな目的の一つは、作業効率の改善でした。
不動産業界は労働集約型のビズネスモデルになっていますので、人間の労働力に依拠する部分が大半を占めています。
業務の多くが、「人が動かなければ、仕事の多くが動かない」というアナログなのです。
働き方改革の推進やDX化といった社会的な動きの中で、不動産業界にもIT化の動きがみられる部分が出てきました。
しかし、他業界に比べるとその変化は小さいもので、目を見張るほどの大きな変化はありませんでした。
当時、不動産業界に入ってきたITの中で皆さんも見たことがあるものを挙げると、VR内覧です。
現場に行かずとも部屋の内部を見ることができるため、出始めた頃は注目を集めました。
しかし、現地に行かなければ見えない部分が多くありますので、革新的なものにはなりませんでした。
加えて業界で働く労働者に向けたIT化の開拓は進まず、周囲を見渡しても画期的なシステムも今ほどありませんでした。
フォーラス&カンパニーの会議でもデジタル化についての議論も宙に浮いた状態で、本腰を入れて取り組む課題には入っていませんでした。
しかし、もともと営業だった私の視点から見たとき、社員が抱える社内業務を減らし、もっとお客様との商談時間に費やしてほしいという想いがありました。
実際に私も同じ業務をしていましたので、業務に潜むムダを省き、人じゃなくてもできる仕事のデジタル化を推し進めたいと考えていました。
佐野:会社としてデジタル化を進めていくきっかけがあったのでしょうか?
坂部:推し進めていきたいと考えていたタイミングでRPAの会社と接点を持つ機会がありました。
求人メディアを依頼している取引先の紹介で、その会社もモデルとなる会社を探していたということもあり、フォーラス&カンパニーのオリジナル仕様で提案いただきました。
これもご縁だと思い、社内を説得して導入するにいたりました。
佐野:実際の制度について詳しく教えていただけますか?
坂部:大きく二つの変化がありました。
先のRPAの導入と、顧客管理システムを導入しました。
それぞれについて紹介していきますね。
RPAは簡単に言いますと、WEB上のロボットが人間の代わりに作業をしてくれるシステムです。
複雑な思考をしなくても、決められた(ルール化された)仕事をロボットが作業してくれます。
フォーラス&カンパニーの場合ですと、物件情報の管理や更新をRPAが代行してくれています。
皆さんも部屋を借りられる時に賃貸情報をインターネットで見られたことがあるかと思います。
その際、昨日と今日とで空き状況や、新しい部屋情報が出ていましたよね?
そうした最新の部屋情報にすべく、不動産会社は定期的に物件情報を更新しています。
しかも多くの企業は人の手によって入力作業をしています。
意外でしたか?
抱える物件が多いほど更新にも時間がかかりますので、営業はその分お客様との商談時間を削るほかありませんでした。
これはキーボード入力さえできれば可能ですので、経験もスキルも不要でできる作業です。
あまりに時間がもったいないと思いませんか?
そこでRPAを導入したことで、家主から送られてくる物件情報をRPAが自動で読み取り、該当箇所に情報を流し込んでくれます。
人が1~2分かけいた作業を数秒で実行できるようになりました。
しかもロボットは夜中も働ける自動で動き続けますので、生産性が非常にあがりました。
結果に真剣に向き合うところがフォーラス&カンパニーの良いところですが、以前までは各社員の感覚値によってお客様との商談を進めることが多くありました。
社員によってアプローチのタイミングや手法が異なるため分析できる素地がありませんでした。
より効果的にお客様へアプローチをしていくためにも営業の見える化は大きな課題の一つでした。
そこで顧客管理ツール(Salesforce)を導入しました。
お客様との商談(賃貸を想定)は概ね下記のようなフェーズに区分できます。
①物件の問合せ
②来店
③案内
④契約
⑤鍵わたし
顧客管理ツールを使用して、お客様がどのフェーズにいるかを管理することで、担当営業以外に上長も把握することができます。
必要に応じて上長がアドバイスすることで最適なアプローチを仕掛けていくことができるようになりました。
お客様の管理以外にも、流入経路や顧客の悩み、離脱要因など細かな部分まで管理していますので、新たな施策の企画にも役立っています。
ちなみに以前までは専用のフォーマット(紙)に手書きで共有し、店長がエクセルで手入力して集約するというアナログの極みでした。
こうした管理を進めることで、社員一人ひとりの顧客数や抱える業務も把握できるようになりましたので、働き方も見えるようになったという利点があります。
佐野:上記の様々な取り組みを実施するにあたり苦労したことはありますか?
坂部:これに限ったことではないですが、RPAはフォーラス&カンパニー用にオリジナル仕様で作成したこともあり、導入初期はとにかくエラーが多かったですね。
加えて、入力内容がパターン化された作業といえ、その中に微細ながら各営業の感性が入っている部分がありましたので、言語化しづらい部分をいかにルール化していくかが難しかったですね。
他にも物件の管理先によっても少なからずクセがあるため送られてくる元原稿にバラつきがあったりと、イレギュラー事項が見つかる度にRPAの委託先と社内とで内容を詰めて、都度バージョンアップを繰り返しています。
内部的な話をさせてもらうと、実際にシステムを触る営業がRPAの操作や仕組みを理解できてないケースも多く、「なぜエラー出るかが把握できない」という事態もまだまだあります。
こうした課題は今後も出てくることは予想されますので、社内でトライ&エラーを繰り返しながら定着させていきます。
佐野:どういった成果がみられましたか?
坂部:それぞれ違った成果が見えてきました。
共通して言えるのは営業のクオリティ向上といったところでしょうか。
詳しくはそれぞれ紹介させていただきます。
不動産では抱える物件が多ければ多いほど有利です。
純粋にそれだけお客様に案内できる物件があるということなので、手札が多いことに越したことはありません。
しかし、物件が多いほど情報更新は大変です。
作業は仮に3分で終わったとしても、抱える物件が100件あれば、それだけで5時間もかかります。
ですが、この更新作業はおろそかにすると痛い目をみます。
想像してみてください。
インターネットで何時間もかけて探して、やっと見つけた条件を満たした物件を問いあわせると何週間も前に契約済みだとわかったら腹が立ちませんか?
物件情報の鮮度は命ともいえます。
RPAの導入により、更新時間が各段に上がり、以前は1~2週間おきの更新頻度でしたが、今ではほぼ毎日更新できます。
(1~2週間でも業界では凄いと言われていました)
物件の更新頻度と正確さが格段に上がり、鮮度の高い情報を提供できるようになったことは競合他社との差別化につながっています。
さらに入力作業に費やしていた時間を削減したことで、営業時間を以前より確保できるようになりました。
営業に専念できるようになったことで、より手厚いフォローを可能にしています。
営業の見える化をしたことで、店長が社員に対して顧客状況やプランを確認できるようになりました。
事前に社員とプランをすり合わせるとで、より効果的なアプローチが可能となりました。
アプローチのアドバイスも感覚値ではなく、それまでに蓄積した顧客データに基づく論理的なものに変わりました。
論理的思考に基づく指示を繰り返すことで、社員にも論理的に考える習慣を定着させ、個々のレベルアップを図っています。
蓄積したデータを活用し、新たな手法や施策を試行錯誤する中で新たな営業モデルを浸透させていきたいと考えています。
この顧客管理システムは各店長が論理的思考をできることが前提となります。
現場で指揮を執るのは店長になりますので、店長自身が感覚値から脱却できていなければ現場レベルで論理的思考を育むことが難しくなります。
効果的な活用事例を社内で共有を進め、管理職のレベルアップを同時に推し進めていきたいと考えています。
佐野:最後に、今後の目標を教えていただけますか?
坂部:最終的に社員に還元できる仕組みにしていきたいですね。
売上を伸ばし、会社を牽引してくれている頑張っている社員には潤って欲しいです。
会社が存続できているのは支えてくれる社員がいてこそです。
日々頑張ってくれている社員が潤うように、まずは会社が儲ける必要があります。
逆算的な話ですが、会社が儲けるためには少数精鋭でいかに高い功績を残すかが必要ですし、少数で仕事を回すためには生産性の向上が必要です。
生産性向上の一環で今回紹介したようなデジタル化を進め、効果的な営業スタイルを確立し、同時に社員のレベルアップを推し進めています。
究極的なことで言えば、一切のムダ(ロボットができること)を切り離し、人間にしかできない仕事に専心することで、お金を生む人財を増やしていきたいです。
まずは労働集約型からの脱却を目指し、生産性の向上を突き詰めていきます!
株式会社フォーラス&カンパニー