【インタビューを受けた人】
医療法人社団勝榮会 いりたに内科クリニック 入谷 様
医療法人社団勝榮会 いりたに内科クリニック 長田 様
医療法人社団勝榮会 いりたに内科クリニック 加藤 様
【インタビュアー】
ホワイト財団 金崎綾香
理事長 入谷 様
シニアマネージャー 長田 様
経営戦略室 加藤 様
2023年1月25日に『第9回ホワイト企業アワード*』が開催されました。
働きがい部門にて受賞をされた「医療法人社団勝榮会 いりたに内科クリニック様」の取組み概要や、導入にいたった背景など詳細をご紹介します。
ホワイト企業アワード*:ホワイト財団が主催する世の中に共有すべき制度や取り組みについて表彰・発信を行う、働き方改革の参考事例が日本で最も集まるホワイト企業イベントです。概要はコチラで紹介しています。
【受賞理由】
ウェルビーイング経営のお手本となるような取組みをされているクリニック様で、このような組織が世の中に増えたら良いなと率直に感じ、選出いたしました。
5年間の年月をかけて開院当初に掲げていた理念実現に汗をかかれてきた中で、スタッフが幸せだからこそ、患者さんも幸せになるというお考えに至り、スタッフファーストの職場づくりを行われております。
「関わる人全てに「安心」と「幸せ」を届ける企業であり続ける」という理念に再構築され、理念を実現する為には何が必要か思考を深堀された結果「教育」にたどり着き、様々な改革を行われております。教育の捉え方も「人を育てる」ではなく「人が育つ」風土作りという概念を持ち、ルール作りも基本全員参加で作っていくというボトムアップ型の組織作りにも着手されております。
結果、業績UPに繋がっており、まさにウェルビーイング経営を体現されているクリニック様であると思い、選出いたしました。
いりたに内科クリニックのポイント
・個人の特性や強みを伸ばす、優れた人材育成力と充実のキャリアップ制度
・従業員の成長を一番に考える理事長先生の熱い想い
・「教育から人が集まる日本一のモデルクリニック」を目指して
長田様:当院は、内科疾患、特に呼吸器系疾患を強みとするクリニックです。
院内では3つの事業を展開しております。
・複数の専門医が勤務する外来診療部
・自分で来院することが困難な患者様のところへ赴いて診療する在宅診療部
・保険診療以外の治療を対応したり、法人向けに定期検診や睡眠時無呼吸検診など対応する自費・法人事業部
それぞれの部署が連携し、診療体系や専門性など様々な観点から健康を守る取り組みをしています。
<写真:往診している様子>
長田様:医療事務でいいますと、入職後に医療事務としての業務をすべて網羅していただく期間を設けています。
たとえば、はじめの約1ヶ月間は受付業務、その後は保険請求の業務、といったように約1年かけて医療事務の業務を経験していただきます。そうすることで個々人が「どういったことが得意なのか」や「どんなことがしたいのか」を明確にすることができます。
そしてその結果を2年目以降のキャリアステップに活かしており、1年目の経験からその部署のプロフェッショナルを目指すスタッフもいれば、別の部署に異動して新たなフィールドで活躍しているスタッフもいます。
一人ひとりの特性を活かし、キャリアを柔軟に広げていただくためにも、入職1年目を大切な期間として位置付けています。
入谷理事長:当院の医療事務は、非常に高いスキルを身に付けていると私は考えています。
というのも、当院では外来だけではなく、在宅の患者様や法人の方に向けたサービスも提供しているので、通常の医療事務よりも業務内容が幅広いです。具体的には、法人向けであればマーケティングや営業、在宅であれば医療アシスタント(患者宅同行業務)としてのスキルが必要となります。
医療事務の枠を超えたスキルを身につけられるよう、外部のセミナー受講費をクリニックで負担する制度を設けており、スタッフはそれぞれのキャリアに応じた講習を受講しています。
長田様:また、ミーティングにセミナー講師の方をお呼びして、スタッフ全員に向けた講習を開くこともあります。組織側から積極的に勉強の機会を設けることで、スタッフのモチベーションを向上させる働きかけも行っています。
入谷理事長:こういったミーティング以外にも、年末には、法人全体で診療をストップして勉強合宿をしています。また、以前までは土曜の午後も診療を行っていたのですが、現在は14時までに変更して、スタッフの勉強の時間として充てています。
クリニックとして業績を上げるためには、1時間でも長く診療時間を設けたほうが売り上げに直結しますが、その時間を削ってでもスタッフを教育することのほうが大事だと私は思っています。
就業時間の中に勉強できる時間を作ることで、全員の意識を向上させ全体の底上げを図っています。
<写真:毎月1回、こうしたグループワークを行っています>
長田様:当院には教育に関する取り組みとして、『
これは、院内ミーティングでの発表や確認テスト、外部研修を受講することなどで獲得できるポイントで、評価に反映されます。各自が所持しているポイントは、半期が経過したタイミングで中間発表を行います。
目に見える形で公表することで自分自身はもちろん、同僚の頑張りを再確認するきっかけとなり、モチベーションの維持につながっています。
そして最終発表時は個人目標(獲得ポイント)を達成にしたスタッフを讃える表彰式を開催しています。
また役職が上がると、どうしても通常業務のスキルだけでなく、コミュニケーションスキルや指導スキルが求められます。そのためスキルアップの機会を自分で掴んでいく意識が必要です。
役職を細分化した「等級」ごとに年間で獲得しなければいけないポイントを設定することで、学びの機会を少しでも楽しんでもらえるよう、評価を見える化しています。
今後は等級で設定されたポイント以上を獲得している人に対し手当として還元する取り組みも計画していて、全員が意欲的に参加できる仕組みをどんどんブラッシュアップしていきたいですね。
<写真:スタッフが成長できる仕組みを毎週話し合っています>
長田様:当院は内科の中でも特に呼吸器系が強いクリニックです。
当院の理事長は呼吸器専門医でもあるので、呼吸器系の設備も充実しています。
また、当院には12名もの医師が在籍しており、それぞれが循環器、消化器、アレルギーや皮膚科など専門医としての資格を持っているため、患者様の症状に合わせてより専門的な診療ができる体制を整えています。
入谷理事長:いりたに内科クリニックでは「長引く咳はご相談ください」と患者様に向けて発信しています。
咳はさまざまな病気の予兆です。
呼吸器の問題だけでなく、アレルギーやアトピー性皮膚炎が関係していることもあれば、心臓や消化器官が原因の場合もあります。
このように、長引く咳にはたくさんの種類があり、それらを追求していった結果、それぞれのプロフェッショナルが在籍しているクリニックとなりました。専門医による正しい診療を行い、根本から治療ができる医院として患者様から評価をいただいております。
長田様:「想いが熱い」組織ですね。
当院の理念の中に「患者さんの想いを聴き応え超える」というものがあります。
この理念の通り、普段から理事長は熱意を持って患者様の診療を担当しています。
そしてその想いを教育体制に反映したり、ミーティングで発信したり、熱量を実感できる機会が多く、院内にはその想いが浸透しているように感じます。そのため、患者さんから感謝されることが多く、スタッフのモチベーションにつながっていると思います。
加藤様:一言でいうなら、「エネルギーあふれる組織」かなと思います。
スタッフそれぞれが熱い想いを持っているんです。
目に見えて熱い想いがわかる人もいれば、静かに内に秘めている人もいるんですが、共通していえることは行動に表れている点です。自分の仕事に対してみんなが真剣に取り組んでいることが目に見えてわかるので、お互いに切磋琢磨できる医院だと思います。
加藤様:人の役に立ちたいという思いから、学生の頃より医療業界を志していました。
医療系システムのインストラクターとして全国の病院で、プレゼンやトレーニングを担当し、仕事にやりがいを感じていました。しかし医療供給には経営基盤がしっかりしていることが大事だと痛感し、医療施設の事務長を目指しました。
医療施設のバックオフィスを担当する為に必要な経験を積み、「三方良し」という理念のもと経営を行っている企業を探していた時、出会えたのが「いりたに内科クリニック」でした。
入社を決めた理由は当院の理念、理事長の考え方に共感したからです。
『関わる人全てに「安心」と「幸せ」を届ける」企業であり続ける』は、まさに三方良しであり、「患者の想いを聴き・応え・超える」という理念を掲げるクリニックで、その様な考え方を持つ経営者をサポートすることに尽力したい、と入職を決めました。
長田様:当院の魅力は、女性の働きやすい環境があることです。
私は入職から現在まで、2人の子どもを出産していますが、そのどちらのタイミングでも産休・育休をいただいています。また、子どもの体調不良で急に早退しないといけなくなった時にも快く送り出してくれる環境です。
みんながそれぞれを思いやり、お互いのトラブルはみんなでカバーし合うという考え方が浸透しているので、「今日カバーしてくれた分は違うタイミングで私が埋め合わせしよう」とポジティブに捉えることができています。
当院は、男性も含めお子様がいらっしゃるスタッフが多いので、自然と「互いに支え合って当たり前」という文化が定着してるのかもしれません。
長田様:患者さんを笑顔にできたことを実感した時に喜びを感じられます。
私たち医療事務は、医師のように採血や診察など、直接患者様に治療を施すわけではありません。
しかし、患者さんと医師をつなぐ重要な役割を担っています。そのため、双方をアシストすることでより良いサービスを提供することができると考えています。
たとえば、患者さんが治療に関する不安をおっしゃられていたときは、そのことを医療事務が医師に伝え、医師から治療内容について詳しく説明し、患者様に安心していただく。
そういったアシストによって患者様が安心して治療を受け、お帰りの際に笑顔だったときに「やってよかった」と思えます。
また、私はスタッフを教育する立場でもあります。
そのため、一緒に働く中でスタッフが成長している姿を見ると、私も嬉しく感じます。
加藤様:私はバックオフィス業務の担当として、部署や担当業務問わずさまざまなスタッフと関わります。
目に見えない部分でサポートする役割でもあるので、「ありがとう」という言葉をいただけた時に、サポーターとしての喜びを感じられますね。
入谷理事長:「スタッフにとって働きやすい環境が整って、はじめて患者様も安心して来院していただける」という意識をもったことが働きやすい体制づくりに取り組んだきっかけです。
今でこそ仕組みを確立できていますが、開院当初からそうだったというわけではありません。
はじめは、患者様ファーストで患者様を優先した経営方針を立てていました。
しかし、開院から3年目の頃、スタッフが疲弊してしまったんです。
現状のままではいけない、という危機感から対処法を考えました。
そして行き着いた答えが「スタッフも患者様と同じくらい大事にする」でした。
もっと真摯に向き合いたいと「教育から人が集まる日本一のモデルクリニック」という経営方針を立て、スタッフの成長に重きを置いた環境づくりに着手しました。
ただ、新しい制度や取り組みの導入は浸透するまでに時間がかかりました。
私自身、社内体制を一新するのであれば、中途半端にはしたくなかったので「日本一」を掲げて本気で取り組み始めました。
しかしその考え方に賛同できないと辞めていくメンバーもおり、その影響で人員不足に悩まされた時期もありました。
それでも、根気強く残ってくれたスタッフの期待を裏切らないためにも、「日本一」の軸を揺るがすことなく、今日まで教育に注力してきました。
人財育成に重きを置いたことで、スタッフの成長度合いは目に見えて変化しました。
わからなかったことがわかるようになると仕事がどんどん楽しくなり、次第に自分から行動に起こすようになります。
成長を実感できる環境で、楽しんで業務を全うできるからこそ、能動的にチャレンジできるようになるんです。
実際に、この体制が整ってから今まで離職率は減っていて、ここ2~3年の正社員の離職率はほぼゼロに等しいです。
今後もスタッフの成長に力を惜しまず、みんなが当院で働いていてよかったと感じていただけるような組織づくりに取り組んでいきたいですね。
入谷理事長:今回ホワイト企業認定を取得したのは、当院の取り組みが組織づくりに悩まれている企業様の役に立つかもしれないと思ったことがきっかけです。
当院がこのような評価をいただけるほど成長できた要因は、他の企業が先陣を切って取り組んだ事例があったからです。
先人の知恵から学び、参考にさせていただいたことで今日の当院の教育体制があります。
今回のホワイト企業認定を機に、より多くの方々に当院の取り組みを知っていただき、何かひとつでも参考になるものがあれば嬉しいです。
またホワイト企業アワードを受賞させていただいた際に、評価理由についてコメントを頂戴しました。
第三者の視点から当院の取り組みをご評価いただけたことも非常に良い機会でしたね。
今後は、ホワイト企業認定やアワードの受賞歴などを活用し、もっと広く社会に貢献できればと考えています。
入谷理事長:今後は中途採用だけでなく、新卒採用にも注力したいです。
今までは即戦力を育てるという観点から第二新卒の採用がメインになっていました。
しかし、「教育から人が集まる」という目標を掲げている以上、新卒からマインドを教育して、これからの院のモデルになるよう超一流人を育てていく流れを構築していきたいです。
現在、学生向けインターンシップを行っています。
インターンシップをはじめ、業界未経験の新卒採用を実施するクリニックは、医療業界からすると結構珍しいんです。そういった業界のイメージも壊して、「教育」に本気で取り組むクリニックとしてのビジョンを掲げていきたいです。
<写真:患者さんに熱く接する理事長>
入谷理事長:「素直」な人が活躍できる人であり、一緒に働きたい人です。
というのも、ポジティブ思考でなんでも受け止められる素直な人こそが成長できると私は思っています。
私自身、「いいね」か「やってみよう」のワードを言い続けて行動を起こしてきました。
困難に対しては、実際に直面してから考えれば大丈夫ですし、困ったことがあれば他のスタッフがサポートします。ですので、何でも素直にチャレンジしてみる行動力を持っている人に、当院のスタッフとして輝いて欲しいと思います。
長田様:一言でいいますと『楽しみ』ですね。
私の仕事に対する考え方に「仕事がマンネリ化して楽しくなくなったらやめよう」があります。
けれど、当院で働く中で楽しくなかったことは一度もありません。
興味のあることに注力できる環境だからだと感じています。
スタッフ一人ひとりが成長にしっかり向きあい、成長を実感できるから、楽しく働くことができる。そんな体制が整っている、楽しい職場です。
加藤様:『挑戦と自己成長』です。
当院には、成長できる制度がたくさんあります。
でも、それを活かしてどれだけ成長していくかは自分次第です。
環境に甘んじることなく、意欲的に挑戦し、当院のスタッフとして実力を付けたいです。
入谷理事長:『自己実現の場』です。
教育制度として、セミナー受講や勉強会を実施することは簡単です。
しかし、「学んだことを実践する場がなければどれだけ勉強したとしても意味がない。」そう私は考えています。だからこそ、当院では実践できるステージを用意していますし、それを活かして実践してほしいと考えています。
またクリニックのベンチャーとして、業界に今までなかったものを浸透させる組織でありたいと考えています。その考えに共感し、ともに挑戦していきたい人と、これからのいりたに内科クリニックを作っていきたいです。
取材者のレビュー
「教育から人が集まる日本一のモデルクリニック」というビジョンを掲げ、スタッフの教育体制に注力する、いりたに内科クリニック。
加藤様のように、医院の理念に共感して入職し、また長田様のように、医院での成長にやりがいを持って働き続けるスタッフの方々の働きがいには、互いを認め合い、切磋琢磨して成長する考え方が深く根付いていることをうかがい知れました。
そしてスタッフ一人ひとりの意識の根幹には、理事長である入谷理事長の熱意が軸として浸透しているのだと実感することが出来ました。
日本次世代企業普及機構 金崎綾香
小売業界でバイヤーとして、商品買付けや企画などの店舗管理業務に従事しつつ、販売メーカーの営業として法人営業にも携わってきました。2022年より株式会社ソビアに入社し、これまでの経験を活かし、ホワイト企業認定を取得された企業様の魅力をホワイトキャリアでたくさんの方に発信していきます。