【インタビューを受けた人】
社会福祉法人光養会 澤 和記様
社会福祉法人光養会 坂本 未来様
社会福祉法人光養会 中村 直子様
【インタビュアー】
ホワイト財団 金崎 綾香
ふじの里 施設長 澤 和記様
介護福祉士 主任 坂本 未来様
看護師 中村 直子様
社会福祉法人光養会のポイント
・育成制度は人材を大切にした「人づくり」を目指している
・福利厚生や地域社会への貢献にも尽力している
・一人ひとりが、のびのびと働く環境を提供することで利用者も安心して過ごせる環境
澤様:社会福祉法人光養会は、3つの特別養護老人ホームを運営しており、ショートステイやデイサービスセンター、ケアプランセンターといったサービスを提供しています。
また、高齢者福祉だけでなく、子どもの夜の居場所づくりフリースペース、障がい者の入浴機会の提供など、社会福祉全般の課題に積極的に取り組んでいます。
最近では、「ふじの里ふれまち地域交流事業」という地域の方々が集まるイベントを開催し、高齢者施設の枠を超えた地域交流を推進しています。
SDGsやダイバーシティ&インクルージョン、女性活躍推進などに特に力を注いでおり、次世代人材の育成にも取り組んでいます。具体的には、「限定正職員制度」を導入し、ライフスタイルに合わせて働く環境を提供しています。また、ジェンダーに関わらず、誰もがキャリアアップを見込めるような制度や外国人技能実習生の受け入れなども積極的に行っています。
多様な人材がお互いを認め合いながら、それぞれの役割と責任を持ちながら働くことができる環境を整えることに重点を置いています。
澤様:【「貌」「言」「視」「聴」「思」五事を正す。】
これが企業理念です。
この言葉は、当法人が事業を展開している滋賀県高島市にゆかりのある「近江聖人」の中江藤樹先生の教えです。
相手を理解し、なごやかな顔つきと思いやりのある言葉で話しかける。
澄んだ目で、ものごとを見つめ、耳を傾けて話す人の気持ちに立って聴く。
まごころをこめて相手のことを思う。
これを行動指針として、人と向き合うよう職員に周知をしています。
また、職員信条の一つである、専門的知識と技術の研鑽に励み、豊かな感性と的確な判断力、洞察力を持ち「しっかり」「きっちり」「はっきり」という介護コンセプトを日々の業務で大切にしています。
光養会では、理念や職員信条が記載している「クレドカード」を職員全員に配布しており、常に携帯できるようにしています。
仕事の中で迷うことがあればこのカードを見直して、自分で行動を決められるようにしているんです。
澤様:光養会では、人事考課制度を導入し、職種、階層ごとに基準を設けた評価表を作成することで、職員それぞれを的確に評価する体制を整備しています。
これまでは、勤務年数を中心にして賞与や昇級を行っていましたが、今後を見据え、組織の中で成長し貢献する人材を育てるために、一人ひとりの頑張りをしっかりと評価し、キャリアに応じたスキルが身につくような仕組みを導入しました。
職員が友人や知人に「一緒に働こう」とすすめられるかどうかを基準にした人材育成制度を目指しています。
澤様:はい。
評価表の項目には、「5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)業務改善提案」というものがあります。
これは業務改善に関する提案を行う「提案シート」の提出によって評価される項目の一つです。
たとえば、仕分け作業の効率向上のために、自動おしぼり機や利用者ごとの洗濯ネットを導入する提案、掃除作業の効率化を図るために新しい掃除道具を導入する提案などが該当します。
提出された提案シートは、随時確認できるように保管されており、職員は自身の提案が職場環境に寄与したことに対する達成感を得ることができます。
さらに、この評価項目の導入により、上層部への提案を行う際のハードルが低減され、個々の職員が積極的に社内環境の改善に取り組む好循環が形成されていると感じています。
職員一人ひとりが気づく小さな業務改善のチャレンジとして、楽しく業務改善に取り組むことができています。
澤様:はい。
特に、外部講師を招いた研修に力を入れており、接遇マナーやメンタルヘルス、健康経営など、法人の理念や利用者へのアプローチに関連する内容を企画・実施しています。
社内の研修だけでは内容が類似してしまい、マンネリ感が否めませんでした。
そこで、しがぎん経済文化センターや社労士の先生などを外部講師として招くことで、新鮮な視点で学びを得ることができるとの考えに至りました。
実際、外部講師を迎えた研修後は、各自が学んだことを実践しようと、良い影響が現れています。
澤様:光養会では「ノーリフトケア」を導入しています。
「ノーリフトケア」とは、利用者様の状態に合わせてさまざまな福祉用具を活用し、利用者様だけでなく職員の身体的負担を軽減することを目的とした技術です。
福祉の現場では、利用者様の介助や緊急の対応など、身体を動かす場面が多くあり、そのために職業病の一つとして腰痛や椎間板ヘルニアが懸念されています。
職員が腰痛や転倒、身体的な不調を発症する前に、「ノーリフトケア」を導入し、予防を促進することで、のびのびと働き続けられる環境を目指しています。
また、職員の健康が保たれることは利用者様の安心にもつながります。利用者様が心から職員を信頼して介護を受けることができるよう、この取り組みを積極的に進めています。
中村様:他にも、職員の歩行ケアのために転倒リスクを測定する機械もありますよ!
私はそこまで危険度は高くなかったのですが、改めて自分の生活や姿勢を見直すいい機会になりました。
澤様:ただ、機器を導入するだけでは、道具に依存し過ぎたり、正しい使い方ができなかったりとデメリットが生じる可能性があります。
そのため、改めて介護の基礎を学ぶ社内研修の機会を設けることにしました。
人の身体の構造を理解し、利用者様の体格や身体の状態に合わせて適切に機器を活用することで、利用者様も職員も健康でいられることが最も重要です。
澤様:様々な種類の自動販売機を導入したいですね。
現在でも、人気の飲み物や新商品をラインナップに加えると、職員は喜んで利用してくれています。
今後は、職員の声を取り入れながら、飲み物だけでなく食べ物なども多様に取り揃え、楽しみながら働ける環境を構築していきたいと思っています。
澤様:当法人は滋賀県の民間社会福祉事業職員共済会に所属しており、その取り組みの一環として「ソウェルクラブ」という福利厚生を受けることができます。
「ソウェルクラブ」は社会福祉事業従事者向けの福利厚生サービスで、ショッピングモールやリゾート施設などの割引が受けられるんですよ。
中村様:「ソウェルクラブ」のサービスの中には、年に1回、日用生活品がもらえるものもあるんです。スープジャーや寝袋、体温計など様々なものの中から希望のものを支給してもらえるので非常に嬉しいですね。
澤様:当法人では、「ソウェルクラブ」を活用して交流の機会を促進しています。
例えば、勉強会の後にはサービスを利用して職員と一緒にホテルのバイキングに行ったり、BBQを開催したりしています。
最近はコロナの影響もあり、イベントなどの開催を自粛していましたが、来年こそは再開させたいと考えています。
詳しく教えてください。
澤様:はい。
厚生労働省が提唱している介護の雇用管理改善のマニュアル「CHECK&ACTION25」に基づく職員の職場満足度アンケートを年に1回行っています。
多様な人材が心身ともに健康的に働けるように、定期的に職員の声を収集し、社内環境の改善に役立てています。
最近ではホワイト企業認定についての項目も追加し、社内環境改善への取り組みを周知するための試みも行っています。「知人・友人に当法人で一緒に働こうと勧められるか」という項目があり、50%の社員が肯定的な回答をしてくれています。
ただ、個人的にはもう少し高い水準を目指していたので、結果に少しショックを受けました(笑)。そのため、現在は80%以上の回答が得られることを目標としています。
在籍中の職員や将来の入職者に、ますますこの法人・施設で働きたいと感じてもらえるように、時代の変化や施設の状況に適応して、職員の意見に基づいた施策を積極的に導入していきたいです。
社内環境の改善や新しい仕組みの導入など、職場に変革をもたらすことで、職員に活気をもたらすことができます。変化を起こすことで、職員も積極的に意見を表明しやすくなります。
職場全体に活気があふれ、今以上に楽しい職場になることを期待しています。
澤様:職員の雇用や管理が厳しい状況にあったためです。
業界全体に共通する課題であり、当法人も例外ではなく人材不足に悩まされていました。
求人情報は発信していましたが、介護業界では仕事内容が似通っており、差別化が難しいため、働く環境や同僚との雰囲気で各法人の特色を打ち出す必要があります。
当法人が持つ独自の強みを外部にアピールするためにも、まずは社内の体制をしっかり整えていかなければならないとの認識から、介護労働安定センターへ相談し、現在もコンサルティングを受けている社労士の先生と協力して、社内環境の改善に取り組み始めました。
澤様:これといった不満の声などはありませんでした。
その理由は、新しい制度や仕組みを導入する際には、必ず職員に丁寧に説明を行っていたからです。
私たちは制度を導入する際、そのメリットをしっかりと見据えています。ただし、新しい制度が浸透するまでには効率が下がることや、できる人とできない人が出ることなど、導入にはデメリットもついて回ります。
そのため、制度について説明する際は、プラスな面もマイナスな面も両方伝え、職員が納得した上で導入するよう心がけています。
また、一度に多くの制度を導入しないように注意しています。同時に2つや3つも導入してしまうと、個々の職員の適応速度に差が生まれ、理解の溝ができてしまう可能性があります。
ゆっくりと様子を見ながら制度を導入し、完全に浸透するまでの間は職員のケアも怠らないようにします。これによって、大きなギャップが生まれることなく、いい方向に向かってくれますよ。
澤様:ありましたね。
まず、ホワイト企業認定という一つの成果を得られたことが、外部の事業者の方からも反響がありました。
また、面接を受けにくる方もホワイト企業認定取得に言及してくれて、「しっかりした仕組みが整っているところで働きたいと思ったので応募しました」という嬉しいお声をいただきました。
また、利用者様へも安心感を提供することができました。
利用者のご家族からも「体制が整っていると安心できる」と好評なんですよ。
職員にとってプラスになることが、利用者様にとってもプラスになっているのが、理念に適っているようで嬉しいです。
入職前に不安だったことはありますか?
中村様:中途で入職をしたんですが、3年間ほどブランクがあり、仕事についていけるか不安でしたね。また、事前に見学はしていたものの、現場の雰囲気に馴染めるかも不安がありました。
坂本様:私は新卒で就業経験もなかったので、仕事についていけるのかという漠然とした不安がありました。
中村様:はい。人間関係に関しては、仕事で連携をとるうちにそれぞれの考え方や価値観を理解することができるようになりました。
仕事に関する不安も、経験を積むことでだんだん払拭されていきましたし、困ったときには相談できる環境があるので安心できました。
坂本様:最初は在宅支援の部門に配属され、何をすれば良いのかが分からずにいました。
同行や研修の機会はあったものの、不安感がずっと残っていました。
そんな時に、独り暮らしのご老人や高齢者夫婦世帯のリストを見せてもらい、1世帯ずつ訪問してみることにしました。
その後、がむしゃらに訪問を続ける中で、少しずつ自身の成長を感じることができました。
先輩や施設のサポートももちろんありがたいのですが、自ら行動を起こすことの大切さを痛感しました。
中村様:利用者様が抱えている悩みが改善したときにやりがいを感じます。
印象に残っているのは、とこずれのある利用者様をケアしたときのことです。
同じ部署の職員や介護職、栄養士といった施設内のメンバーだけでなく、皮膚排泄ケア認定看護師、理学療法士とも連携を取りながら、治療を進めていきました。
すると、ひどかった患部が徐々に良くなり、完治といっていいほどまでに改善されたんです。
一番苦しいのは利用者様なので、治療で良くなっていくのを喜んでもらえるのは非常に嬉しいですね。
今後はまた再発しないように体操など身体を動かすレクリエーションを取り入れながら予防治療を続けていきたいです。
坂本様:私も、自分の行動で利用者様が喜んでくれるのが一番のやりがいです。
例えば、お手洗いの介助をしたときなどに「こんなに丁寧に介助をしてくれる人はなかなかいない」と嬉しい言葉をいただくことがあります。
自分にとっては些細なことですが、それでも喜んでくれると嬉しいですね。
だからこそ、その姿を見るたびに「もっと利用者様に快適に過ごしてもらいたい!」というモチベーションにつながっています。
坂本様:子育てをしていても働きやすいところですね。
子どもが急に体調不良になり、仕事を休むことや途中でお迎えに行かなければならない時でも、「早く帰って、そばにいてあげて!」と快く送り出してくれます。
職員の中には子育てを経験した方が多いため、その理解が広まっているのは非常にありがたいです。
中村様:確かに、私も子どもの行事などがあると休まないといけないことがあるので、嫌な顔一つせず対応してくれるのは安心します。
介護の仕事はシフト勤務が一般的で、休日が不規則になりがちですが、当法人はその辺りの融通も非常に柔軟に対応してくれます。
私は固定の曜日を休みにしており、長期の休暇も取得しやすく、非常に助かっています。他の職員も希望のお休みをしっかりと取得できているようで、希望通りの働き方が実現できる環境で働きやすいです。
また、自分の意見を言いやすく、職員が働きやすいように改善してくれるところも働きやすいポイントですね。
澤施設長を筆頭に、上層部に話しやすい雰囲気があり、少々厳しいことでも笑顔で受け入れてくれるんです(笑)。
「提案シート」も導入されていますし、職員の意見を基に社内環境が改善されている実感があります。
澤様:やはり一番の課題は、職員の数を増やすことです。
利用者様とより密接な関係を築くためには、今いる職員一人ひとりの業務量を減らして余裕を持たせることが大切だと考えています。
社内環境を改善することで、採用活動に良い影響があるのは事実ですが、それでももう少し一緒に働く仲間を増やしたいですね。
澤様:少しでも負担を軽減するために、現在の職員の業務を常に整理と改善しています。
また、それに加えて最近ではICTや最先端の機器などのテクノロジーを活用し、業務の効率化とケアの安全性向上に取り組んでいます。
例えば、お風呂にファインバブルを発生させる機械を試行導入し、浴槽に浸かりながら汚れを落とせるようにすることで、ボディソープで身体を洗う手順を減らしました。
これにより、これまで介助に必要だった人数が4名から3名に減少できることがわかりました。
科学的な機器導入により、サービスの質では、皮膚のはく離予防ができ清潔面も向上することがわかりました。
今後も機械でできる支援は機械を利用し、人が必要な支援に職員が注力できる環境を整えていきたいですね。
中村様:穏やかで人と協力できる方と働きたいですね。
利用者様を第一に、他の職員と連携を取りながら行動ができる方だと、当施設でも活躍できるのではないでしょうか。
坂本様:誰かのアドバイスや意見をしっかり理解して、行動につなげてくれる素直な方と一緒に働きたいですね。
また、中村さんもおっしゃっていましたが、職員同士の連携が大事なので、こまめにコミュニケーションをとれる方だと嬉しいです。
澤様:素直さや正直さを持ち、協調性をもって働ける方にぜひ来てほしいです。
当法人の理念である「五事を正す」ことは、周囲と親しみあい、尊敬し、認め合う心を磨くことにつながるとされています。
ぜひ、人としてのベースを大事にしながら成長したいという方のご応募をお待ちしています。
取材者のレビュー
光養会様はともに働く職員の方々の育成と健康推進に力を注いでいます。アンケートや「提案シート」を通して、些細な意見もしっかり吸い上げる体制が築かれています。このため、施設長である澤様と職員の方々の信頼関係が強いのだと、インタビューを通して実感しました。
さらに、「ノーリフトケア」など、職員の方や利用者様の負担の少ない仕組みを積極的に導入している光養会。これにより、業界未経験の方やブランクのある方でも安心して働ける環境が整っているのではないでしょうか。充実したサポート体制と前向きな職場文化が、新しいメンバーが溶け込みやすい雰囲気を醸し出しています。
日本次世代企業普及機構金崎 綾香
小売業界でバイヤーとして、商品買付けや企画などの店舗管理業務に従事しつつ、販売メーカーの営業として法人営業にも携わってきました。2022年より株式会社ソビアに入社し、これまでの経験を活かし、ホワイト企業認定を取得された企業様の魅力をホワイトキャリアでたくさんの方に発信していきます。