企業面接では、困難を乗り越えた経験を聞かれることがあります。自分に該当するエピソードがないと悩んではいないでしょうか。今回は、企業が困難を乗り越えた経験を聞く目的や、質問されたときの対処について紹介します。
目次
面接で企業が困難を乗り越えた経験を聞く意図は何か、理由を3つ紹介します。
企業が困難を乗り越えた経験を質問する理由のひとつは、目標に対する行動を確認するためです。企業側は、目標を立てて物事に取り組めるか、目標のために努力できるか、目標達成のために自発的に取り組めるかをみています。
企業が目標達成への姿勢を確認するのは営業部門に限らず、さまざまな部門で仕事の遂行のために目標を設定するためです。目標を自分で立てることも場合によっては必要なため、自ら考えて動く姿勢があるのかも、困難を乗り越えた経験を参考にしています。
ふたつ目の理由は、困難に直面した際にどのような行動をとるのかを把握するためです。困難が立ちはだかったときにどのような思考を持つのか、すぐに行動に移すのか、あるいは計画を立てた上で行動に移すのかなどをみます。
企業が知りたいのは、困難を乗り越えるまでのプロセスでわかる、個々の思考や人間性です。対処法は人それぞれであって、どのような方法が良いというものでもありません。対処法の良し悪しというよりは、解決の仕方が企業とマッチしているかを見ます。
企業は、困難を乗り越えた経験を通じて、ストレス耐性があるかどうかも見ています。
入社後は、人によってさまざまなストレスを感じる可能性があります。入社後に仕事についていけないストレス、他のできる社員と比べてしまうストレス、目標達成のプレッシャーなどが考えられます。
ストレス耐性が低いと、心身に限界を感じて離職する社員も出てきます。企業は早期退職を回避するために、困難を乗り越えた経験を通じてストレスのある状況を乗り越えていけるかもみているのです。
困難を乗り越えた経験を質問された際に、企業側に必要な情報を伝えるには、どのように答えるのが良いのでしょうか。
エントリーシートや面接で聞かれたことに対して適切に回答するには、概要や結論を先に述べるのがポイントです。その文章構成を紹介します。
困難を乗り越えた経験を質問された際、最初に困難そのものについて詳細に触れる必要はありません。質問の核である「困難を乗り越えるために行った努力の内容」を伝えることが重要です。
冒頭で困難に対して乗り越えた経験を伝えるのは、面接官が全体の概要をつかみやすくするためです。エピソードの概要を一言で簡潔にまとめ、まずは面接官にどのような話をするのかを最初に理解してもらうことが、スムーズな進行につながります。
エピソードの概要を伝えた後に、発生した困難を簡潔にまとめて説明します。困難の内容は、経験についての具体性と説得力を与える要素です。
困難の内容を伝える際には、実際に困難に直面したときにどのように受け止めたのかも伝えましょう。
面接で聞かれる困難を乗り越えた経験については、仕事でも再現できる内容であることがベストです。仕事にもつながる経験であることを伝えることで、相手に納得感を与えられます。
次に、困難に対して自分が取った行動を説明します。困難への対処は、企業側が最も知りたい部分です。困難に対してどのように行動する人物なのか、困難に立ち向かえるのかなどを面接官は知りたいと考えています。
困難を乗り越えた経験を伝える際は、克服するための具体的な行動を重点的に説明しましょう。「努力した」というような抽象的な表現ではなく、どのような行動によって努力したのかを詳しく伝えることが重要です。
困難への対処の経験を通じて、どのように向き合い、どのような考えで行動したのかを具体的に伝えましょう。企業側は、困難への対処を通じて、あなたがどれだけ熱意をもって仕事に取り組めるかをみています。
自分の行動によって得られた結果について説明します。重要なのは、結果の内容ではありません。企業側は、大きな結果でなくても、結果にたどり着くまでのプロセスを知りたいと考えています。
困難に対してどのように考え、どのような結果となったのか、数字なども交えながら簡潔に伝えます。
困難を乗り越えた経験から得た学びをエピソードの中に含めます。
経験から学習して次に活かそうとするのは、社会人にとって重要なスキルです。経験から得られた気づきや自分の弱点を伝えることで、成長意欲があることを伝えられます。
困難を乗り越えた経験を質問されて、ただ内容を伝えただけでは今ひとつ説得力に欠けてしまいます。
企業側が知りたいのは、困難を乗り越えた経験が仕事にも役立つかどうかです。自分の経験や強みが仕事でどのように活かせるのか説明することで、熱意やモチベーションの高さを伝えられます。
入社後もこれまでの経験や新たな経験を活かして行動できる人物であると想像できるようにアプローチしましょう。
困難を乗り越えた経験を就職活動で伝えるときの例文を体験別に紹介します。
【例文】
私が困難を感じたのは、アルバイトでの新規スタッフの教育で思うように仕事を覚えてもらえなかったことです。飲食店でのアルバイト経験が長くなってきたこともあり、新規スタッフへの教育を任されることになりました。しかし、なかなか仕事を覚えてもらえず、何度も同じ作業を教える日が続きました。
教育のやり方が悪いと思い、事務的に指導するのではなく、しっかりコミュニケーションを取る方法に変えました。結果として、新規スタッフの方の悩みがわかり、仕事も問題なくこなせるようになっています。
経験を通じて、仕事では、事務的な会話だけでなく、相談しやすい雰囲気をつくるコミュニケーションも必要だと痛感しました。
【例文】
私は、テニス部に所属していて、ケガにより学生最後の大会に出場できなくなったことがあります。地区大会での優勝など実績も積んできたため、最後の大会はより大きな結果を残そうとした矢先のことでした。練習中の骨折で大会に出場できなくなり、はじめは悲しさと悔しさの感情で前を向けませんでした。しかし、仲間が一生懸命練習に取り組む姿を見て、これではいけないと、気持ちを切り替えました。
学生最後の時期に自分ができることとして考えたのが、仲間のサポートです。練習メニューの考案やメンバーの相談に乗るなどに取り組みました。結果として、出場はできなかったものの、団体での地区優勝を実現できました。
経験を通して、本来の目標達成がかなわなくなっても、自分ができることを見つけて行動していくことの大切さを知りました。状況に応じた対応は、仕事の中でも活きてくるものだと思います。
【例文】
困難を乗り越えた経験は、サークル活動に参加するメンバーを増やし活性化させたことです。私はボランティアサークルに所属し、地域の環境美化活動や募金活動に参加していました。取り組み自体は素晴らしいものだと思いましたが、問題は、所属メンバーは多くいたものの、実際の参加者が少なかったことです。
活動内容がわかりにくいのが原因のひとつと考え、SNSを利用したPR活動や学内で活動内容を報告する新聞の制作に力を入れました。活動に興味をもつメンバーが増えたことで参加者も増え、より大きなボランティア活動ができるようになりました。
経験を通じて感じたのは、発信の力です。積極的にアピールして多くの方に知ってもらうことは、仕事でも重要なのではないかと思いました。
【例文】
困難を乗り越えた経験は、ゼミの研究発表の場でのプレゼンテーションが好評だったことです。私はもともと、人にわかりやすくものを伝えることが得意ではなく、プレゼンテーションにも苦手意識を感じていました。ゼミに入ってすぐに感銘を受けたのは先輩のプレゼンです。伝えることの大切さを痛感しました。
そこで、どのようにしたらわかりやすく伝わるか、プレゼンの構成や挿入する資料の内容や場所を勉強し、プレゼン前に友人に見てもらい、フィードバックをもらうことにしました。
プレゼンの内容は他の学生からも好評をいただき、自分が伝えたいことを伝えきれたのではないかと思います。プレゼンに限らず、準備をして取り組むことは仕事にも通じることだと感じました。
【例文】
インターンで積極的に行動したことが私の困難を乗り越えた経験です。ベンチャー企業のインターンに参加したのですが、はじめは委縮してしまい、指示を待つだけの姿勢になっていました。しかし、このままではインターンの経験が身にならないと考え、積極的に質問し、状況に応じて物事を提案する姿勢で臨むことにしました。
若い社員の意見も積極的に聞く社内の雰囲気もあり、ミーティングを重ねることで、仕事をブラッシュアップさせることができました。
経験を通じて学んだのは、積極的に仕事をする姿勢やコミュニケーションの大切さです。社員一人ひとりが自ら考えて仕事をより良くする姿勢は、会社の成長にもつながることと考えています。
【例文】
困難を乗り越えた経験は、交換留学で積極的に他の学生と意見を交わせるようになったことです。交換留学で短期間海外の大学で学ぶ機会を得たのですが、語学力不足で、はじめは授業についていくことすらできませんでした。
専門的な単語の理解不足に加え、現地での会話のテンポに慣れていないことが原因と考え、現地の学生とコミュニケーションを取る機会を増やしました。教授にも積極的に質問することを心がけ、帰国前にはディスカッションで積極的に意見を交わせるようになりました。
経験から学んだのは、問題に直面したときの課題の分析と実行力です。仕事でうまくいかなかったときは、留学中の経験を活かし、自分で課題を見つけて改めていく意識をもって取り組みたいと思います。
困難を乗り越えた経験について質問されたときの対応について紹介してきました。しかし、困難といえるほどの経験がないという方もいるでしょう。困難を乗り越えた経験がない場合の3つの対策を紹介します。
困難といえる経験が思いつかないときは、一生懸命努力した経験を考えてみましょう。一生懸命努力したということは、そこに困難と思えるエピソードが隠されていることもあります。努力のプロセスと目的、結果を押さえて相手に伝えるようにします。
企業側が困難を乗り越えた経験を知りたいのは、困難に直面したときの個々人の対応を知りたいためです。
困難を乗り越えた経験は、挫折した経験と似ています。挫折から立ち上がった経験や挫折から学んだことを伝えるのがポイントです。
困難を乗り越えた経験が思い浮かばないときは、自己分析により自分の経験を振り返るのも方法のひとつです。丁寧に自分の過去を思い出してみることで、忘れていたエピソードが思い出されることがあります。
困難を乗り越えた経験なんてない!と思われる方もいるでしょう。しかし、本当にそうなのでしょうか?仕事に就くまで生きてきた中で、全く困難を乗り越えずにきた人なんていないはずです。困難を乗り越えた、と認知できていないだけなのです。そのため、自分には困難を乗り越えた経験がない、と思っている方は、ぜひ過去を丁寧に振り返り、小さな困難でもいいので、乗り越えてきた出来事を思い出してみてください。それでも思いつかなければ、両親や兄弟、昔からの友人に客観的に話を聞くのもひとつです。
面接などで企業側が困難を乗り越えた経験を質問してくるのは、困難に直面したときの姿勢や、ストレス耐性度などを知りたいためです。企業が確認したいポイントを押さえて、明確に質問の内容に答えられるように準備しておきましょう。