【 2021年9月14日掲載記事を更新】
社会全体の先行きが不透明な今、自身の理想像を明確にしたキャリアプランの作成が重要視されています。そんな時代背景を受け、転職や就職に役立つのが厚生労働省作成の「ジョブカード」。
今回はジョブカードの中の「キャリアプランシート」の内容に沿って、キャリアプランの作成方法やシートの記入例、面接での活用方法などをお伝えします。
ジョブカードとは、「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールであり、職務経歴や保有資格だけでなく、キャリアプランを記入するシートなども含んでおり幅広い方の求職活動やキャリア形成に役立てることができます。
これまでのキャリアを振り返り、自身の経験や能力、強みなどを整理することで、「今後どのようなキャリアを歩みたいか」などのキャリアプランが見えやすくなります。
参照元:https://www.job-card.mhlw.go.jp/
キャリアプランは年代や立場によって重視するポイントが変わるため、自分にとってどのような視点が重要なのかわからないという方は「キャリアプランとは?考え方や注意点、メリットをまとめてみた」を先にご覧ください。
キャリアプランの作成手順は以下の4ステップです。
【作成手順】
step1:自分の過去を棚卸する
step2:自分の現在の状況を理解する
step3 :自分の将来を考える
step4:将来と現在を繋ぐ道筋を作成する
このようなステップを踏むことで、自分の希望に沿ったプランを作成することができます。
キャリアプランシートの項目と対応させながら、それぞれのステップで具体的に何を行えばよいのか紹介していきます。
まずは過去の経験を振り返ることで、自分自身への理解を深めましょう。
興味関心や大事にしたい価値観などを言語化するステップです。
※キャリアプランシート対応項目「価値観、興味、関心事項など」
次のステップでは、自分の現状を理解するため、自らを取り巻く環境を整理します。
希望する組織の方向性や業界内での立ち位置の把握、組織から期待されている役割、組織に対して自分が提供している価値などを理解します。
※キャリアプランシート対応項目「強み等」
続いてのステップは将来について考え、理想像を具体化することです。
価値観や現状をもとにして、将来どんなキャリアを築いていたいのかを明文化する作業で、キャリアビジョンの設定といえるでしょう。一つの目安として、10年後を設定するのも具体化がしやすくおすすめです。
※キャリアプランシート対応項目「将来取り組みたい仕事や働き方等」
最後のステップでは、理想のキャリアに到達するための道のりを整理し、具体的な計画に落とし込みます。
「なりたい自分」に対して、今の自分にはどんな点が足りていないのか、今後伸ばすべき能力は何か、必要なスキルを身につけるためにはどうすればいいかを考えましょう。
※キャリアプランシート対応項目「これから取り組むこと等」
キャリアの棚卸をしたあとは、実際にキャリアプランシートを書いていきましょう。文章にすることが難しければ箇条書きでも構いません。
書き方の例を、立場ごとにいくつかあげてみました。
女性の場合はライフイベントが仕事に大きな影響を与えます。
キャリアプランには、結婚や出産・育児などのライフイベントも絡めて記載すると良いでしょう。
【価値観、興味、関心事項】
大学在学時はジェンダー論を専攻しており、女性管理職についての研究を行っていた。管理職に求められる性質には、決断力など男性寄りのものと、配慮力など女性寄りのものがあるが、管理職には男性が多いため、男性的目線による評価に偏りやすいと言われている。そこを補えるよう、女性寄りの能力を活かした管理職を目指したい。
【強み】
管理部門で各部署間の調整を担当していた。意見の相違で連携が取れていなかった部署に関して、各部署の実情を把握した上で個別に調整を進めていったことで、新規事業の立ち上げに繋がった実績がある。このように折衝力には自信がある。
【将来取り組みたい仕事や働き方】
来年結婚することとなり、出産は未定だが、子どもが出来ても働きたいと思っている。現在の職場では育休取得実績が少なく、現場への復帰は難しいと考えられる。女性管理職としてキャリアを積んでいきたいので、育休取得前と同ポジションで復帰できる職場を希望する。
【これから取り組むこと】
子供が出来た場合、短い時間で成果を出すことが必要なので、タイムマネジメントスキルの獲得を目指す。現在は業務のスピードをあげるために、優先順位をつけながら仕事を行っており、そのために日頃から整理・整頓を意識している。今後は慣習的な業務でも効率化が図れないかを常に考え、アウトプットの質を上げることを目指す。
学生の場合は、キャリアプランシートの中に学業や課外活動について記載する部分があります。
行ったことだけでなく、そこから得た学びや気づきについて詳細に記載することで、キャリアプランに説得力を持たせましょう。
【学校の課題で関心を持って取り組んでいること】
専攻:社会心理学
中心研究:コミュニケーションにおける言語の効果
興味を持った理由:一度、認識のすれ違いで友人と喧嘩になったことがあった。助詞の使い方が原因で正しく言いたいことが伝わっていなかったことから起こった喧嘩だった。同じ内容でも言い回しで意味や印象が大きく変わることにおもしろさを感じ、今後の円滑なコミュニケーションに繋げたいと考え、このテーマを選択した。
そこで得た学び:広告におけるキャッチコピーを研究対象として、円滑なコミュニケーションに有用な表現の特徴や共通点について学んだ。また、研究手法としてインタビューを選択したが、対象者が多くなかなか当初の予定通りには進まなかった。計画を随時調整していくことも重要だと感じた。
【学外活動で関心を持って取り組んでいること】
社会人有志ジャズバンドでの活動。バンドには20歳~60歳まで所属していた。様々な価値観に触れられるよう、同世代だけでなく幅広い世代と積極的に交流していた。年代の違いから意見の相違も出やすかったので、そういった際には自分が調整役となるようにしていたが、まずは相手の意図することを的確に読み取ることが重要だと学んだ。
【価値観、興味、関心事項】
・コミュニケーションに強い興味があり、異なる属性の人と接することが好きである。
・キャッチコピーがどう意図をもって設計されているのかということにも関心があり、現在も街中の広告で興味深いものがあれば記録している。
【強み】
・13年間トランペットを続けており、継続力には自信がある。
・幅広い年代とコミュニケーションを取るうえで、傾聴力を大切にしていた。
【将来取り組みたい仕事や働き方】
・多くの人と関わることができる営業職でエキスパートになりたい。
・培ってきた傾聴力で顧客のニーズを引き出し、顧客に合わせてその人だから響くような言葉や表現を選びながら、個人にフォーカスしたセールスアプローチをかけていきたい。
【これから取り組むこと】
・営業職でエキスパートを目指すには、商品知識が不可欠であると思う。売り込む商品について徹底的に調べたうえで、競合商品についても知識をつけたい。
この世代では、管理職を目指すのか、専門職を目指すのかによってプランの内容が大きく変わってきます。
今までの実務経験に基づいたプランを作成することが重要です。
【価値観、興味、関心事項】
資産形成に関するコンサルティングを行っているため、投資信託や株などの値動きを確認し、値動きに影響しそうな動きがないかなどを確認することが毎朝の日課となっている。資産形成に関する知識や情報に対しては常に感度が高い。
【強み】
営業部の主任としてチームのマネジメントを行う一貫で、新人育成も担当していた。以前は固定の育成カリキュラムだったが、個人の特性を見極めながら育成方法を変えた結果、新人の売り上げが前年比130%となった。新人の能力が底上げされたことで店舗全体としても目標値の達成に繋がり、私が着任してからは成績優秀店として二度の表彰をいただくことができた。
【将来取り組みたい仕事や働き方】
入社当時は個人の資産運用に興味があったが、毎日資産運用に関してリサーチを行っていたことで、現在は日本経済全体の動きに関心を抱いている。前職ではリテール部門のみだったので、より社会に対する影響力の大きいホールセール部門に携わりたく転職を考えている。また、前職でのマネジメントスキルを活かして人材の育成に貢献したい。
【これから取り組むこと】
企業、自治体、機関投資家などを対象とするため、資金調達方法の提案やその支援、財務戦略などのアドバイス、M&Aの仲介・斡旋など、経営に踏み込んだサービスを提供できるよう、多方面において知識の向上に取り組む。
「仕事で達成したい目標を教えてください。」
「10年後はどうなっていたいですか?」
「キャリアビジョンはありますか?」
面接ではこのようなキャリアプランに関する質問をされることもあります。
企業の意図に沿って答えるにはどうすればよいのでしょうか。
企業が面接で個人のキャリアプランを聞くのは以下の理由があるからです。
〇ミスマッチを防ぐため〇
会社が募集しているポジションと転職者が希望しているポジションが異なっていては、お互いにとって不利益が生じることが多いでしょう。
事前にキャリアプランを確認し適材適所への人材配置を行うことで、転職者はモチベーション高く働くことができ、企業にとっては生産性の向上が見込めるため、双方的に利益があると言えます。
〇目標達成力の確認のため〇
キャリアプランを聞かれた際にはほぼセットで、プラン達成のために行っていることがあるのかを聞かれます。
この質問の意図は、キャリアプランに対する転職者の努力や、目標に対して計画を立て、実行に移す力があるのかどうかを確認することです。この目標達成力は、ビジネス全般において重要視されます。
この質問に対しては、現在行っている努力、もしくは今後行いたいと思っていることを具体的に挙げることが重要です。
面接でキャリアプランを聞かれた際は、下記の3点を伝えるようにしましょう。
「目指しているキャリアビジョン」
「そのビジョンに至った理由や価値観」
「達成までの行動計画」
たとえば、先ほどの学生の例だと次のように答えることができます。
キャリアプランシートの作成は面接でも非常に有効な手段ですが、その内容によってはせっかく作成してもマイナス評価になってしまう場合もあります。
面接で評価されないプランシートの特徴は次の3つです。
【NG】
①内容に無理があり、実現可能性が極めて低い
②漠然としており、具体性に欠ける
③志望先の企業の内容と、プランの内容が大きくかけ離れている
キャリアビジョンはあなたのなりたい理想像です。
理想を高く持つことは問題ありませんが、そこにたどり着くためのキャリアプランは実現可能な内容でなければ意味がありません。
計画の内容があまりにも非現実的すぎると、企業からは計画能力に問題があると思われてしまいます。面接では過剰にアピールをしたくなりますが、自分の能力に見合ったプラン内容にしましょう。
たとえば「10年後に業界トップの存在となるために、まずは営業の力を伸ばします。」といったプランでは、漠然としておりビジョンとプランが繋がっているのかが不明です。業界トップとは何をもって図るのか、なぜ営業力が必要だと考えたのかなどキャリアプランにおいて重要な部分が抜け落ちています。
一方「10年後に業界トップの存在となるために、売り上げシェア1位を目指します。そのためには販促経路の拡大が必要であり、クライアントの獲得に繋げるため、まずは営業の力を伸ばします。」というプランになると、具体性が増しプランの実現可能性がぐんと上がったように感じられます。
面接でキャリアプランを語る際には、さらに目標数値等も入れながら可能な限り具体性を持たせるよう意識しましょう。
個人にキャリアプランがあるように、各企業にも数年ごとの事業計画が存在します。
希望キャリアの方向性が面接先の企業の方向性と異なっている場合は、いかに綿密に練られたキャリアプランであっても採用には逆効果です。
ホームページなどで株主向けに事業計画の詳細が公開されている場合もあるので、自分のキャリアプランと調和しているのか事前に検討したうえで面接に臨むとよいでしょう。
キャリアプランは自分の理想を達成するために作成するものです。作成して終わりでは意味がありません。
キャリアプランの作成後に行うべきことが2つあります。
アクションプランとは、それぞれの目標達成のために取るべき行動を時間軸でまとめたものです。
キャリアプランで設定した10年後の目標から5年後、3年後、1年後、半年後と段階的により細かな目標を設定します。
たとえば、「10年後海外事業の担当責任者として海外に赴任する」というキャリアビジョンを持ったとすると、
【アクションプラン】
・8年後日本で海外事業のチームリーダーとなる
・5年後チームの達成率を120%にする
・3年後達成率でチーム一番になる
・1年後ビジネス上級英語を身に着ける
という風にビジョンから逆算をしていきます。
ここまで具体化ができれば、今必要なのは「ビジネス上級英語を身に着けるための勉強」だと分かります。
必要スキル獲得のため具体的なアクションも書き出していきましょう。
【具体的なアクション】
・1年後のTOEICで850点を獲得する
・ビジネスシーンに沿った頻出表現を覚える
・海外の専門書を和訳することで専門的な単語力を身に着ける
キャリアプランは自身の成長や環境の変化に応じて、定期的な確認を行うことが重要です。
プラン作成時には予想していなかったタイミングで出産や転職といったライフイベントが生じることもあれば、企業内でのキャリア選択が自らの意思に沿わないこともあるでしょう。
重要なのは、そういった予期せぬ状況にも臨機応変に対応し、適宜キャリアプランの調整を行うことです。
また、現代社会は非常に速いスピードで変化をしているため、今目指しているポジションが10年後には存在しない可能性もあります。そもそも10年もあれば、あなた自身も成長し、目指したい場所が変化しているかもしれません。このような場合には、キャリアプランの大元に立ち返り、新たな視点でビジョンを構築することが必要です。
キャリアプランには様々な考える手法がありますが、キャリアプランシートに沿って考えると、自分の理想も見えてきやすいかと思います。
キャリアプランを考えることは、あなたの人生に対する満足度を上げてくれます。
せっかく時間と労力をかけて設定するのですから、転職のためにだけ使用するのではなく、今後の人生における指標として長く活用できるとよいですね。
では実際に社会で働く人がどんなビジョンを持って働いているか気になりませんか?
「学生企業訪問」というコンテンツでは、就活に直面している学生が企業の採用担当者に会い、今知りたい情報を直接聞いています。
その中で今後の目標やビジョン、働くことへの価値観を投げかけていますので参考までに覗いてみてはいかがでしょうか?