女性の活躍推進は、「女性活躍推進ってよく聞くけど何??知ってほしい女性活躍推進法の目的を解説します。」でご紹介したとおり、就活生にとっても、企業にとってさまざまなメリットがあることは明らかです。
では、実際に女性の活躍を推進するにあたって、企業はどのような対策を立てるべきなのでしょうか。
女性活躍推進へ向けた企業事例とその効果を参考に、就活生にしってもらいたい企業事例のご紹介です。
目次
女性が活躍できる環境を整えるために、企業は国の方針に従い以下の推進を進めています。
【参考】一般事業主行動計画を 策定しましょう – 厚生労働省
まずは自社で働く女性従業員の活躍について現状を把握する必要があります。
企業にとって大きな課題である「女性の採用の少なさ」「第一子出産前後の女性の継続就業の困難さ」「男女を通じた長時間労働による仕事と家庭の両立の難しさ」「管理職に占める女性比率の低さ」に関する課題を見つける観点から、以下の項目は必ず把握しなければなりません。
●採用した従業員に占める女性労働者の割合
=直近の事業年度の女性の採用者数(中途採用を含む)÷直近の事業年度の採用者数(中途採用を含む)×100(%)
●男女の平均継続勤務年数の差異
●労働者の各月ごとの平均残業時間数などの労働時間の状況
=各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働の総時間数の合計)÷対象労働者数
●管理職に占める女性労働者の割合
=女性の管理職数÷管理職数×100(%)
女性の活躍に関する状況を把握・分析した結果をもとに、課題解決のための行動計画を策定します。
行動計画には以下の内容を盛り込みましょう。
<計画期間>
2016年から2025年までの10年間を、企業の実情に応じておおむね2年から5年間に区切り、定期的に行動計画の進捗を検証しながら、改定を行います。
<目標設定>
目標は、1つ以上数値で定める必要があります。
状況把握や課題分析の結果、企業の実情に応じて課題であると判断したものの中で、最も大きな課題と考えられるものから優先的に数値目標を設定します。
できる限り積極的に、複数の課題に対応する数値目標を設定している企業は積極的だといえるでしょう。
<取り組み内容>
取り組み内容を決定する際は、最も大きな課題として数値目標の設定を行ったものから優先的に、その数値目標の達成に向けてどのような取り組みを行うべきか検討し、実施時期を決定して実施しています。
2016年に施行された女性活躍推進法により、女性の採用と登用が推し進められています。
実際に女性を積極的に採用・登用する企業では、
●一般職から総合職、限定正社員から無限定正社員等への転換を推進する
●女性の採用割合を増やす方針や目標の設定
●女性がいない、または少ない職場への女性の積極的な配置
などの取り組みがされています。
【出典】平成27年度ポジティブ・アクション「見える化」事業「女性の活躍推進」にむけた取組施策集」 – 厚生労働省
従来通りの採用を続けている企業は、出産や育児をサポートする福利厚生制度の充実や、時短勤務やテレワークなどの勤務形態の多様化など、女性の採用比率を高めるための施策を立てる必要があります。
将来の管理職候補となる女性従業員を育成するためには、女性特有のキャリアの悩みをフォローする配慮が求められます。
<柔軟な働き方における対応>
長時間労働の削減はもちろん、テレワークや在宅ワークなどの多様な働き方を採用することで、家庭と仕事を両立できる環境が整います。
<事業所内保育所の配置>
事業所内、または事業所の近くに保育所を設置することで、子育てをしながらでも安心して働くことができます。
<ロールモデルやメンター制度の導入>
キャリア面やワーク・ライフバランス面において、目標となるロールモデルを設定することで、仕事に対するモチベーションが上がります。
また、豊富な知識と職業経験のある先輩従業員(メンター)が後輩従業員に対して個別支援を行うことは、キャリア形成に向けた課題解決や職場内での悩み解決につながります。
【参考】「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」 )メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル – 厚生労働省
政府が掲げる、「2020年までにあらゆる現場において、指導的地位で女性が締める割合を約30%まで押し上げる」という目標を達成するためには、まず企業にとっての女性の活躍推進のゴールを明確にしなければなりません。
「○年後までに、管理職の比率を○%にする」といった具体的な数値を目標として取り組むことで、実現につながります。
また、管理職適齢期にあたる入社10~15年目の女性に対して、手本となる先輩社員(ロールモデル)を見つけられるようサポートするなど、昇進に対する不安を払拭するほか、職場運営スキルや成果を出すためのマネジメント能力を身につけるキャリア支援を行うことで、管理職登用への意欲を高めることができます。
女性が活躍しやすい環境を作るためには、経営のトップが率先して従業員の意識を変えることが大切です。
<方針の明示と周知>
柔軟な働き方に対応した制度や、出産・育児・介護などのライフイベントと仕事を両立できる配慮・待遇に関する情報を全従業員に周知することで、職場風土が改善します。
<長時間労働の削減>
長時間働くことよりも、時間当たりの生産性で評価できる制度を確立することで、昇進に対する意欲が高まります。
女性の活躍推進への取り組みにより、成果をあげている3社の事例をご紹介します。
東京急行電鉄株式会社とは、東京都南西部から神奈川県東部に路線を展開し、鉄軌道事業などを行う会社です。
スライド勤務制度を採用したことで、総合職の離職率は男女ともに0%となり、3年連続「なでしこ銘柄」(経済産業省・東京証券取引所)に選定されました。
<課題>
●ダイバーシティマネジメントの推進に向けた取り組みにより、ワーク・ライフバランスの概念は浸透したきたものの、女性の戦力としての活躍はまだ不十分であった。
<取り組み>
●長期スパンでキャリア構築を考える女子学生を積極的に採用した。
●勤務時間の柔軟な調整を目的とした「スライド勤務制度」を導入した。
始業時刻を7時30分から10時30分まで30分ごとに選択し、繰り上げまたは繰り下げることができる制度である。
●女性を対象とした「グループ会社の女性管理職を集めたフォーラム」や「管理職のマネジメント意識改革説明会(イクボスセミナー)」を実施し、社内研修や外部派遣などの取り組みを開始した。
<成果>
●直近3年間に入社した総合職の離職率は男女ともに0%となった。
●各事業部で女性を中心としたワーキンググループが発足し、鉄道事業や不動産事業など幅広い分野で成果が出ている。
●スライド勤務などの柔軟な働き方が評価され、2012年度から3年連続で「なでしこ銘柄」(経済産業省・東京証券取引所)に選定された。
【参考】「女性の活躍推進」にむけた取組施策集 – 厚生労働省
株式会社ノバレーゼとは、婚礼施設を中心にドレスショップやレストランを運営する会社です。
「キラキラ働こう!プロジェクト」や「フレックスキャリア制度」の導入により、離職者が減少し、産休・育休からの復職者がほぼ100%となりました。
<課題>
●結婚式場の運営では土日祝日、夜間の業務が多く、従業員への負担が大きいため、育児中の女性は時間に融通の利きやすい部門へ異動、または業務内容を変更していた。
しかし、従業員の平均年齢が高まるにしたがって、結婚・出産後に復帰する女性が増加しており、従来のような配置転換では対応できなくなってきていた。
●「現場の第一線で働きたい」という希望に沿いにくかった。
<取り組み>
●「キラキラ働こう!プロジェクト」を実施した。
子どもの運動会や冠婚葬祭を理由に、土日祝日でも休みを取得できる仕組みの導入や、時短勤務制度の利用期間を子どもが小学校を卒業するまでの期間まで延長した。
●妊娠・出産を迎えたときに気をつけるべきことをまとめたサポートブックをマネジメント層に配布した。
●勤続年数と等級により条件が設定された「フレックスキャリア制度」を採用した。
正社員のまま、1日の勤務時間を4時間から8時間まで、1時間単位で選択できるようにする制度である。
●異動に関して、自宅から1時間30分以内の範囲で、転居を伴わない異動にとどめる「勤務エリア限定制度」を導入した。
●有給休暇の取得を促進するため、人事部門で取得状況を確認し、四半期に1回、部門ごとの取得率をランキング形式で発表した。
<成果>
●「働き続けるイメージを持ちやすくなった」という声が上がっている。
●離職者が減少し、産休・育休からの復職者がほぼ100%となった。
【参考】「女性の活躍推進」にむけた取組施策集 – 厚生労働省
株式会社博進堂とは、新潟市に印刷・製本工場を持つアルバムを中心とした情報生産会社です。
トルネード人事を導入したことで、具体的な目標が明らかになり、企業理念を再確認できました。
<課題>
●女性の配属に偏りがあり、管理職に占める女性の割合が低かった。
●繁忙期に長時間労働が発生していた。
●少子化により学校アルバム事業が減少しているため、女性から新たなアイデアを出してもらわないと事業縮小のリスクがあった。
<取り組み>
●長時間労働是正のため、朝礼時に経営トップから訓示を行った。
●忙しい部署に人を集める「トルネード人事」を実施した。
●女性管理職の登用を推進するため、現行の昇進基準が男女公平な運用をされているか精査した。
<成果>
●課題と向き合うことで、「期間内に2名以上の女性管理職を登用する」「繁忙期における長時間労働を前年比10%以上改善する」といった目標に向けた取り組み内容と実施時期を明確にできた。
●「人が大事」という企業理念を再確認できた。
このように社会課題に正面から向き合い、女性活躍推進に取り組んでいる会社はホワイト企業である可能性が高いといえます。女性だけでなく男性も、女性が活躍している会社のほうが働きやすいと思う傾向もあるようですので、女性活躍推進に取り組んでいる会社を企業選びの軸にしてみるのいいのではないでしょうか。