雇用形態「メンバーシップ型」、「ジョブ型」とは?新たに出てきた「タスク型」についても解説

2022.02.15
#企業分析#働き方#就活基礎知識

就活生にとってはまだまだ会社についての知識は少ないと思いますが、様々な企業が新型コロナウイルス感染症によって、今まで私たちが抱いていた価値観が大きく崩され、テレワーク制度などを含めた今までの働き方から大きな変化を迎えています。

 

その中で、「メンバーシップ型雇用」「ジョブ型雇用」ということばを耳にすることも増えました。

日本が長年採用してきた「メンバーシップ型雇用」、そして、海外で主流の「ジョブ型雇用」とは、どのような雇用形態なのでしょうか?

 

それぞれの違いの整理とともに、日本企業はジョブ型雇用へ転換していくのか、それに伴って企業がどう変わっていくのかについて解説します。

また、海外ではさらなる雇用形態も生まれており、そちらについてもご紹介していきます。

「メンバーシップ雇用」とは?

 

メンバーシップ雇用は、日本で長年用いられてきた雇用形態です。

「人に仕事がつく」と表現され、新卒一括採用で学生をポテンシャル採用し、社内で教育を施して、ジョブローテーションなどを用いながら、総合的な仕事のスキルを身につけさせて、会社側が配置します。

「終身雇用」「年功序列」の考えが元となっていますが、この考えは崩壊し始めており、日本でもジョブ型雇用に移行する流れが生まれています。

 

強固な雇用保障によって労働者は守られ、給料も勤続年数によって上がっていきます。

職務範囲や勤務地を限定していないため、会社都合で転勤させたり、今までと全く違う業務にあたってもらったりすることができます。

労働時間については、様々な業務の兼ね合いで残業が多くなり、長時間労働となってしまう可能性があります。

「ジョブ型雇用」とは?

一方、ジョブ型雇用は、海外で主流の雇用形態です。

「仕事に人がつく」と表現され、職務や勤務地が明確に定められた「ジョブディスクリプション(職務記述書)」によって雇用契約を結び、記載されている特定の職務のみを行います。

成果物がそのまま評価に直結するため、コロナ禍で浸透が早まったテレワーク・リモートワークとの親和性が高い雇用形態です。

 

職務に関するスキルがある人材を、欲しいタイミングで募集しますので、即戦力となる優秀な人材を雇用することができます。

労働者は数年で新たな会社へ転職してスキルアップを図るのが一般的で、人の入れ替わりが活発になります。

「メンバーシップ型」「ジョブ型」、5つの違い

①求められるスキルの違い

・メンバーシップ型雇用
社内で教育を受けながら様々な経験を積んでいき、会社のために多様な業務をこなす「オールマイティーな人材」が高い評価を得ます。

 

・ジョブ型雇用
特定の分野に関する専門的なスキルが追求されます。

②報酬における違い

・メンバーシップ型雇用
同じ会社で長く勤めることが想定されており、勤続年数などによってだんだんと昇給・昇格していきます。

 

・ジョブ型雇用
ジョブディスクリプション(職務記述書)によって職務や勤務地が限定されているため、会社内での昇給はほとんどありません。

数年働いたら別の会社に移り、スキルアップとともにより高い報酬を得るのが一般的です。

③教育面における違い

・メンバーシップ型雇用
新卒一括採用をベースとしていますので、職務に必要なことや社会人としてのマナーを一から教育する手厚い環境があります。

 

・ジョブ型雇用
会社で教育をすることはほとんどありません。

求めている能力を持ち合わせた人材を募集し、雇用するシステムだからです。

これは、会社側からすると、研修などの教育にかけるコストが削減できるという点でメリットがあります。

④採用方法における違い

・メンバーシップ型雇用
新卒一括採用を元に成り立っています。

採用活動の時点では職務を特定せず、総合職などとして全員同待遇で採用し、社内で育て上げることで優秀な人材にしていきます。

 

・ジョブ型雇用
新卒採用は行われず、必要な枠に欠員が出たときに募集をかけ、求めるスキルを持つ人材をピンポイントで採用します。

学歴や面接力よりも、実績や自身の持つスキルが重要視されますので、新卒の学生は、職業訓練などに参加して、積極的にスキルアップをしなければ就職することが難しいです。

⑤評価制度の違い

・メンバーシップ型雇用
労働時間によって評価がなされます。

勤続年数によっておのずと報酬が上がっていく仕組みとなっています。

 

・ジョブ型雇用
特定の職務に限定して採用されていますので、成果物がそのまま評価に直結します。

求められている成果が出せないと解雇される可能性もありますが、労働者の持つ専門的なスキルを適切に評価することができます。

コロナ禍で加速するジョブ型雇用と日本の課題

日本以外の多くの国ではジョブ型雇用がおこなわれており、競争がグローバル化していくなかで日本でもメンバーシップ型からジョブ型へ転換する動きがあります。

その動きをコロナ禍で提唱された「新しい生活様式」が加速させ、ジョブ型雇用へ舵を切った企業が続々と出てきています。

この流れで、これから多くの日本企業がジョブ型へ移行していくことが予想されます。

ですが、日本企業がジョブ型へ移行していくには、いくつか課題があります。

解雇規制と転職市場の充実

高度経済成長期が終わり、グローバル規模での競争が激しくなっていく中で、終身雇用を前提とした日本の雇用形態は企業にとって負担になりつつあります。

ですが、解雇規制によって労働者の権利が厚く保障されています。

また、日本の転職市場は海外に比べるとまだまだ活発ではなく、転職市場の充実や制度面の整備も不可欠です。

ジョブ型に適した教育システムと新卒学生の就職格差

新卒の学生の立場からすると、メンバーシップ型よりも就職格差が大きくなります。

ジョブ型へ移行するに伴って、新卒採用の枠はどんどん狭くなり、最終的には新卒も中途も関係なく通年採用が行われることになります。

 

学生は、自主的に企業で役に立つスキルを身に着けなければなりません。

大学での教育は実際の会社の業務に直結するものではなく、経験を積む機会が多くないため、そういった環境整備が求められるようになっていくと予想できます。

企業内に色濃く残る年功序列型

また、いままで年功序列で昇格してきた人が人事の決定権を持っているケースも多く、そういった企業では、自分の保身のためになかなか仕組みを変えることができません。

トップダウンで強制力を持って改革を進めていく強い意志が必要となってきます。

 

 

そういった理由から、日本が完全に海外と同じようなジョブ型へ移行するのはまだ先になると考えられますが、メンバーシップ型とジョブ型を合わせたような雇用形態から、徐々にジョブ型の方向へシフトしていく流れが見られています。

ジョブ型雇用を導入した日本企業の事例

ここで、実際に独自のジョブ型雇用を導入している日本の企業を紹介していきます。

KDDI株式会社

・2020年8月から8月入社の中途社員、2021年度から管理職に「KDDI版ジョブ型」を導入予定。
・2021年度入社の新卒社員は一律の初任給制度を撤廃し、能力に応じた給与体系も導入。
・コロナ禍をきっかけとしたニューノーマル (新常態) 時代において、社員一人ひとりが時間や場所にとらわれず成果を出す働き方を実現することを軸とする「KDDI新働き方宣言」を策定。

 

▽KDDI株式会社HP「時間や場所にとらわれず成果を出す働き方の実現へ、KDDI版ジョブ型人事制度を導入」
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/07/31/4580.html

日立製作所

・「ジョブ型人材マネジメント」の実現に向け、2021年度の採用計画を立案。
・デジタル人財や経験者採用の強化、通年入社・通年採用、職種別採用の拡大を実施するとの事。
・新卒者採用に「デジタル人財採用コース」、「職種別採用コース」を新設し、特定の職務への配属を確約した上で採用。
・また、経験者採用比率を拡大する。

 

▽株式会社日立製作所HP「ジョブ型人財マネジメントの実現に向けた2021年度採用計画について」
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/03/0330c.pdf

富士通

・2020年4月より、幹部社員については、ジョブ型人事制度を導入。
・グローバルに統一された基準により「ジョブ」(職責)の大きさや重要性を格付けし、報酬に反映。

 

▽富士通HP「評価・処遇と職場環境整備」
https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/employees/system/

資生堂

・5年前に管理職を対象に導入し、2021年1月から一般社員3800人をジョブ型の人事制度へ移行。
・「戦略の立案」や「売り上げの達成」など、それぞれのポストに求められる役割と、必要な専門性を細かく明示。
・適性のある人材を配置して、社員と上司が話し合い具体的な目標や計画をどこまで達成できたかで、給与や次のポストが決まる仕組みを展開。

 

▽資生堂HP「人材育成と公正な評価」
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/labor/training.html

新しい雇用形態「タスク型雇用」

ジョブ型の次の雇用形態とされ、欧米で広がっているのが「タスク型雇用」です。

 

タスク型雇用とは、職務よりももっと狭い範囲で、そのときに発生している課題(タスク)ごとにスポット的な雇用をする形態です。

ジョブ型よりもさらに柔軟でスピード感をもって体制をつくることができます。

プロジェクトやタスクごとに人を集め、終了すると同時に解散するので、非常に高い技術を持っているがハイコストな人材の手を借りやすくなるというメリットがあります。

 

ですが、タスク型雇用は、ごく一部の上層の人間以外、ほとんど日雇いのような状態になるため、雇用が非常に不安定です。

就職格差がさらに大きくなる危険性があり、労働者側からすると不安な点も多いです。

まとめ

グローバル化が進む中で、日本企業はメンバーシップ型雇用ではない雇用形態へ移ろうとしています。ですが、「メンバーシップ型」も「ジョブ型」も、その次といわれる「タスク型」もすべて一長一短です。コロナ禍で様々なところから変化を感じる時代となりましたが、会社がこれからも成長し続けられるよう、今後の市場の動きをよく観察することが重要です。

特に外資系の企業に就職したい!と考える就活生はこの当たりの知識はぜひ理解しておいてください。

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