コロナ禍をきっかけに日本でも「ジョブ型雇用」という言葉をよく耳にするようになりました。日本が長年採用してきた「メンバーシップ型雇用」と、海外で主流の「ジョブ型雇用」は、どのように違うのでしょうか?
この記事では、2つの雇用形態の違い・日本企業の導入事例・さらにその先の「タスク型雇用」まで、就活生・転職者向けにわかりやすく解説します。
キャリアアドバイザーコメント
日本次世代企業普及機構 代表理事 岩元 翔
ジョブ型雇用への移行は「個人のスキルで勝負する時代」の到来を意味します。就活生にとっては、入社前から「自分は何の専門家になるのか」を意識してスキルを磨くことが重要です。ジョブ型採用を行っている企業を選べば配属ガチャのリスクも下がります。自分のキャリアの方向性を決める上で、雇用形態の違いを理解しておきましょう。
◆ この記事でわかること
- ジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用とは何か
- 2つの雇用形態の5つの違い(スキル・報酬・教育・採用・評価)
- 日本企業のジョブ型雇用導入事例(KDDI・日立・富士通・資生堂)
- 次世代の雇用形態「タスク型雇用」とは
- 就活生・転職者がジョブ型雇用をどう理解すべきか
1. メンバーシップ型雇用とは?

メンバーシップ型雇用は、日本で長年用いられてきた雇用形態です。「人に仕事がつく」と表現され、新卒一括採用で学生をポテンシャル採用し、社内で教育を施して、ジョブローテーションを用いながら総合的な仕事のスキルを身につけさせて会社側が配置します。
「終身雇用」「年功序列」の考えが元となっていますが、この考えは崩壊し始めており、日本でもジョブ型雇用に移行する流れが生まれています。
◆ メンバーシップ型雇用の特徴
- 強固な雇用保障によって労働者は守られ、給料も勤続年数によって上がる
- 職務範囲や勤務地を限定していないため、会社都合で転勤・業務変更が可能
- 様々な業務の兼ね合いで残業が多くなり、長時間労働になりやすい傾向がある
2. ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用は、海外で主流の雇用形態です。「仕事に人がつく」と表現され、職務や勤務地が明確に定められた「ジョブディスクリプション(職務記述書)」によって雇用契約を結び、記載されている特定の職務のみを行います。成果物がそのまま評価に直結するため、テレワーク・リモートワークとの親和性が高い雇用形態です。
◆ ジョブ型雇用の特徴
- 職務に関するスキルがある人材を欲しいタイミングで採用できる
- 即戦力となる優秀な人材を雇用しやすい
- 労働者は数年で転職してスキルアップを図るのが一般的で、人の入れ替わりが活発
3. ジョブ型 vs メンバーシップ型:5つの違い
① 求められるスキルの違い
メンバーシップ型:社内で教育を受けながら様々な経験を積み、会社のために多様な業務をこなす「オールマイティーな人材」が高い評価を得ます。
ジョブ型:特定の分野に関する専門的なスキルが追求されます。
② 報酬における違い
メンバーシップ型:同じ会社で長く勤めることが想定されており、勤続年数などによってだんだんと昇給・昇格していきます。
ジョブ型:ジョブディスクリプションによって職務・勤務地が限定されているため、会社内での昇給はほとんどありません。数年働いたら別の会社に移り、スキルアップとともにより高い報酬を得るのが一般的です。
③ 教育面における違い
メンバーシップ型:新卒一括採用をベースとしているため、職務に必要なことや社会人マナーを一から教育する手厚い環境があります。
ジョブ型:会社で教育することはほとんどありません。求めている能力を持ち合わせた人材を募集・雇用するシステムです。
④ 採用方法における違い
メンバーシップ型:新卒一括採用を元に成り立っています。採用活動の時点では職務を特定せず、総合職などとして全員同待遇で採用し、社内で育て上げます。
ジョブ型:必要な枠に欠員が出たときに求めるスキルを持つ人材をピンポイントで採用します。学歴・面接力より実績・スキルが重視されます。
⑤ 評価制度の違い
メンバーシップ型:労働時間によって評価がなされ、勤続年数によっておのずと報酬が上がっていく仕組みです。
ジョブ型:成果物がそのまま評価に直結します。求められている成果が出せないと解雇される可能性もありますが、専門的なスキルを適切に評価できます。
4. コロナ禍で加速するジョブ型雇用と日本の課題
日本以外の多くの国ではジョブ型雇用が行われており、競争がグローバル化していく中で日本でもメンバーシップ型からジョブ型へ転換する動きがあります。ただし、日本が完全にジョブ型へ移行するには以下の課題があります。
- 解雇規制と転職市場の充実:解雇規制によって労働者の権利が厚く保障されており、転職市場もまだ海外ほど活発でない
- ジョブ型に適した教育システムと就職格差:新卒採用の枠が狭くなり学生は自主的にスキルを身につける必要があるが、そのための環境整備が不十分
- 企業内に残る年功序列型:年功序列で昇格してきた人が人事決定権を持つケースが多く、トップダウンで強い意志を持って改革を進める必要がある

5. ジョブ型雇用を導入した日本企業の事例4社
① KDDI株式会社
- 2020年8月から中途社員、2021年度から管理職に「KDDI版ジョブ型」を導入
- 2021年度入社の新卒社員は一律の初任給制度を撤廃し、能力に応じた給与体系を導入
- 「時間や場所にとらわれず成果を出す働き方」を実現する「KDDI新働き方宣言」を策定
② 日立製作所
- 「ジョブ型人材マネジメント」の実現に向け、2021年度の採用計画を立案
- 新卒採用に「デジタル人財採用コース」「職種別採用コース」を新設し、特定の職務への配属を確約して採用
- 経験者採用比率を拡大し、通年入社・通年採用を実施
③ 富士通
- 2020年4月より幹部社員にジョブ型人事制度を導入
- グローバルに統一された基準で「ジョブ」(職責)の大きさ・重要性を格付けし、報酬に反映
④ 資生堂
- 5年前に管理職を対象に導入し、2021年1月から一般社員3,800人をジョブ型人事制度へ移行
- 「戦略の立案」「売り上げの達成」など、各ポストに求められる役割と必要な専門性を細かく明示
- 社員と上司が話し合い、具体的な目標・計画の達成度で給与や次のポストを決定
6. 次世代の雇用形態「タスク型雇用」とは?
ジョブ型の次の雇用形態として、欧米で広がっているのが「タスク型雇用」です。職務よりもさらに狭い範囲で、そのときに発生している課題(タスク)ごとにスポット的な雇用をする形態です。
★ タスク型雇用のメリット・デメリット
- メリット:ジョブ型よりも柔軟でスピード感をもって体制を作れる。高い技術を持つハイコストな人材の手を借りやすい
- デメリット:ごく一部の上層の人間以外はほぼ日雇い状態になるため、雇用が非常に不安定。就職格差がさらに大きくなる危険性がある
◆ この記事のまとめ
- メンバーシップ型=「人に仕事がつく」。新卒一括採用・終身雇用・年功序列が基本
- ジョブ型=「仕事に人がつく」。ジョブディスクリプションで職務を明確に定義
- 5つの違い:求められるスキル・報酬・教育・採用方法・評価制度
- KDDI・日立・富士通・資生堂などがジョブ型を導入済み
- タスク型はさらにスポット的な雇用形態。欧米で拡大中だが雇用不安定のリスクあり