男性も育休(育児休業)が当たり前の時代へ!男性育休の内容と取得のポイントの解説

2022.08.01
#企業分析#働き方#就活基礎知識

みなさん「イクメン」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?すでにあまり使われなくなりましたが、一時期企業の中でもよくつかわれる言葉となっていました。男性も育児に積極的に参加することが社会的にフィーチャーされるようになり、各企業での制度導入も当たり前の時代になっています。ですが、それでも男性の育児休業取得率は、非常に少ない状況です。今回は就活生にも知っておいてほしい企業の男性育休への取り組み状況について解説していきます。

男性育休取得の現状

厚生労働省は、2025年度までに、男性の育休取得率を30%に引き上げることを目標としていますが、2020年度の厚生労働省の調査では、男性の育休取得率はわずか12.65%でした。取得率は年々向上しているものの、目標には及ばない現状があります。また、2015年度調査によると、男性の育児休業取得は、5日未満が56.9%と一番多く、取得した80%以上が1か月未満という結果が出ています。

日本では、「男性は働き、女性が育休を取得し家事・育児をするもの」という価値観の名残があります。女性のキャリアアップが認められるようになった現代においても、会社の風土によっては、育児は女性が頑張ることと捉えられている場合が少なくありません。

ですから、パパとなる男性社員が育休を取得したいと思っていても、会社内での男性育休取得事例が無かったり、上司が否定的な意見を持っていたりすると、なかなか取得することができません。また、業務が忙しく休めない場合や、育休を取得して会社から離れることで、その後のキャリアに響くのではないかという不安感をもつ場合もあります。男性の育休取得がなかなか進まないのは、人によって様々な理由があります。

そんな中、新型コロナウイルス感染症が、男性の育休取得にも影響を及ぼしたことが考えられます。

NPO法人ファザーリング・ジャパンとスリール株式会社が共同で実施した、「コロナ禍前後の妊娠出産アンケート結果」によると、新型コロナウイルス感染症によって、テレワークの導入が進んだり、以前の業務が進められなくなったりといった変化があったことで、男性が育児休業を取得することができたという声があります。里帰り出産が叶わなくなったことで、育児休業の必要性が増し、取得せざるを得ない状況になったという方もいます。


引用:https://drive.google.com/file/d/1rKhNE779s5MCfyOwZty-BorQF0f8J-R_/view

また、「父親の育児休暇・休業取得」に対する希望が実現した割合は、コロナ禍以前の出産よりもコロナ禍出産の方が、実現割合が高くなっています。今までなら育児休業を取れない環境にあった男性が、新型コロナウイルス感染症による環境の変化によって、取得する結果となったことが理由と考えられます。

男性の育児休業制度の内容

男性の育児休業制度は法律によって定められており、企業に育児休業に関する制度がなかったとしても、申し出れば取得することができます。時短勤務や子の看護休暇制度など一般的な制度の他に、男性の育児休業を利用する際に役立つ制度内容についてご紹介していきます。

パパ休暇

厚生労働省は、両親で育児休業を取得することを推進しており、男性のための育児休業である「パパ休暇」を整備しています。


引用:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169713.pdf

「パパ休暇」は、ママの出産後8週間以内に、パパが育児休業を取得した場合、再度パパが育児休業を取得できる制度です。共働きの場合、ママに合わせて一緒に育休取得することで、産後だけでなくママの職場復帰をサポートするねらいがあります。

パパ・ママ育休プラス

さらに、両親がともに育休取得することで、休業可能期間が延長される「パパ・ママ育休プラス」という制度があります。


引用:同上

育児休業は、子の1歳の誕生日前日までの間に取得できる休暇ですが、この制度を利用することで、パパかママのどちらかが1歳2ヶ月まで延長して育休取得ができます。


引用:同上

上の画像を見ていただくとわかるように、両親が一緒に取得する、ママの育休のあと交代でパパが取得するなど、それぞれの事情に合わせてフレキシブルに取得することが可能です。

育児休業給付金

育児休業給付金とは、育児休業を取得した際、労働者が雇用保険から給付される給付金のことです。休業開始から6ヶ月は取得前の給与の約67%、それ以降通常1歳(対象期間延長要件に該当する場合は1歳6カ月、または2歳)まで約50%にあたる給付を受けられます。

妻が専業主婦でも、男性が育児業を申請し、取得すれば育児休業給付金をもらう事ができますし、共働きの場合でも、女性が産後休業後にそのまま育児休業に入り、男性も育児休業を取得すれば、夫婦それぞれで育児休業給付金が給付されます。

ただし、休業開始時から賃金日額×支給日数の80%以上の賃金が企業から支払われている場合や、休業期間中に就労している日数が10日(10日を超える場合は、就労している時間が80時間)より多い場合は給付を受けることができません。

男性育休取得を推進するために企業が取り組んでいること

子の出産に伴い育児休業を取得したいと考える男性は増えてきています。今後、柔軟な働き方ができるように整備することは企業として必須事項といえますので、男性の育休取得がしやすい環境づくりにどんどん取り組んでいく企業が増えています。では具体的に、どのような点を意識して制度設計に成功しているのでしょうか。

上司から積極的に取得を促している

今の管理職世代が若手社員だった頃と現在では、働く女性の割合などが大きく変わり、それに伴って仕事観や家庭観というものが変化しています。管理職にあたる人々が男性の育休取得について否定的な意見を持っている場合、当然の権利として取得できるはずの育児休業の取得が難しくなってしまいます。

管理職が自ら育児参加を推進しているような企業、いわゆる「イクボス」が当たり前にいる企業は、上司から部下へ育休取得を促す動きが自然と生まれるため、育休取得率が高まりやすいです。社内報で男性の育児参画について紹介したり、部下の育休取得を評価制度に組み込んだりすることで、否定的な管理職の意識を変えて、全社的に育休取得がしやすい空気をつくっています。古臭いやり方かもしれませんが、一人一人の意識と努力が大切ということですね。

常に業務内容を共有する

誰かが欠けても業務に滞りがないようなシステムづくりに努めることは、柔軟な働き方を実現する上で必要です。業務について熟知しているのがひとりだけ、という状況では、育休を取りたくても取りづらくなってしまいますので、他の人も同行して複数人でミーティングに参加するなど、業務の共有を日ごろから十分にしておきます。そうできている企業は休暇のための引継ぎもスムーズに行うことができ、業務に支障が出ないように育休取得に踏み切ることができています。男性育休をしっかり公表している企業は生産性の高い仕事の取り組み方ができている企業であるともいえるでしょう。

育休中も会社とのつながりを感じられる体制づくり

男性が育休を取得するのを躊躇してしまう原因のひとつとして、その後のキャリアに響いてしまうのではないか、会社に居場所がなくなってしまうのではないか、という不安感が挙げられます。

そこで、積極的に取り組んでいる企業は、テレワークなどを駆使し、定期的に会議や面談に参加し、育休中での会社とのつながり大切にしています。また戻ってきたいと思える会社は素晴らしいですね。

男性育休に関連した国の認定まとめ

ホワイト企業認定のほかに、男性育休に力を入れている企業を国が評価している認定制度をピックアップして紹介します。ぜひ企業選びの参考にしてください。

くるみんマーク・プラチナくるみんマーク

厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク」より

次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができる制度です。

くるみんマーク・プラチナくるみんマーク(厚労省HP):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html

イクメン企業アワード・イクボスアワード


「イクメン企業アワード」は、男性の仕事と育児の両立を促進し、業務改善も図られている企業を表彰しています。「イクボスアワード」は、部下が育児と仕事を両立できるよう配慮し、業務を滞りなく進めるための工夫をしつつ、自らも仕事と生活を充実させている管理職を「イクボス」として表彰しています。

イクメン推進企業・イクボスアワード受賞者(イクメンプロジェクトHP):https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/list/

男性育休取得に力をいれている企業事例

・日本生命保険相互会社
2013年度から男性職員の育児休業取得100%を全社目標に掲げ、実際に6年連続で100%を達成しています。

▽従業員への取り組み|日本生命HP
https://www.nissay.co.jp/kaisha/csr/jugyoin/

・三菱UFJファイナンシャル・グループ
2019年度から、男性に約1ヶ月間の育児休業取得を推奨する取り組みを行っています。
また、グループ内企業ごとに、育児参画している男性とその上司を社内報で取り上げたり、取得推進メールを送信したりすることで、育休取得率を高める環境づくりをしています。

▽ダイバーシティレポート2019|三菱UFJファイナンシャル・グループ
https://www.mufg.jp/dam/csr/employee/diversity_report/pdf/diversity_report_jpn_2019_ja.pdf.pdf

・コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
2019年1月より、子供が誕生した男性社員を対象に、上司からオリジナルデザインのエプロンである「パパエプロン」を手渡しすることで、男性社員が育児休暇を取得しやすい風土づくりをしています。

▽男性社員のPAPA TIME(パパタイム)促進に向け、上司を通じて「パパエプロン」をプレゼント!|コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社HP
https://www.ccbji.co.jp/news/detail.php?id=532

まとめ

「イクメン」「イクボス」ということばが広く知られるようになりましたが、まだ男性の育休取得は当たり前にはなっていません。仕事や家庭に対する考え方が多様化していくなかで、働き方を柔軟に選べる仕組みをつくることは、優秀な人材を流出させないことにもつながり、これからの時代において疎かにはできないことです。男性の育休取得を推進し、各々のワーク・ライフバランスを実現できる環境づくりを目指しましょう。

関連記事