コロナ禍でリモートワークを導入する企業が増え、仕事の進め方が大きく変わった一方で、「リモハラ(テレハラ)」と呼ばれる、遠隔でのパワハラやセクハラが新たな社会問題として浮上しており、人事担当者として今必死に対策に取り組んでいます。
皆さんもオンラインでの面接が当たり前になってきており、「こんなこと言われたけどアリなの?」と思うことも多いと思います。
今回は、パワハラ防止法を中心に、リモートワーク環境におけるハラスメントについてのポイントを解説します。
目次
パワハラ防止法は、パワハラの基準を法律で定めることで、具体的な防止措置を企業に義務化することを目的に作られました。厚生労働省が告示した「職場におけるハラスメント関係指針」には、具体的なパワハラの防止措置として次の3つが記されています。
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このほかに、プライバシーの保護のために必要な措置を講じることや、パワハラの申告を理由に、労働者の解雇や不利益な取り扱いをしないことなどが企業に義務化されています。
2022年4月1日の改正時点では、罰則は設けられていません。
しかし、厚生労働大臣が必要だと認めた場合、企業に対して助言や指導、勧告が行われることがあります。勧告に従わない場合、労働施策総合推進法33条2項に基づいて、パワハラ防止法違反が行使される可能性があります。
典型的なパワハラの行為は、以下のとおり6つに区分されます。
(限定列挙ではなく、あくまで代表的な類型です)
※画像はすべて厚生労働省 あかるい職場応援団HPより
蹴ったり、殴ったり、体に危害を加えるパワハラ
上記に該当しない場合でも、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係などさまざまな角度から総合的に判断されるべきものとされています。
リモハラとはリモートワークハラスメントの略語であり、テレハラとはテレワークハラスメントの略語です。
言葉の通り、在宅勤務等に伴うWEB会議やオンライン上でのやり取りで起こる嫌がらせのことを言います。
テレワーク、リモートワークでは、通常の「リアルな職場」では見受けられないような言動が起きる可能性もあります。その要因として、自粛生活で他者との接触機会が減っている事に対するストレスが蓄積されている場合や、リモートワークで職場と自宅の境界線があいまいになり、公私混同に陥ってしまう場合などが挙げられます。
また、在宅勤務などのリモートワークの場合、オフィスと違って「ハラスメントが見えづらい(証拠化しづらい)」「ハラスメントの相談をしづらい」などの難点があります。
そのため、企業は上記を踏まえた対策を講じる必要があります。
パワハラ的な行為
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セクハラ的な行為
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職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、ハラスメント防止に関する規程を就業規則に盛り込み、従業員への啓発セミナー実施や文書の配布などを行っています。
また、社長自ら従業員に対して、パワハラを許さない意向を明確に伝えていることが多いです。
パワハラの相談窓口を設置し、これをメールやチャットなどで従業員全員に周知しています。特にテレワークでは、一緒に働く上司や同僚に気軽に相談するのが難しいため、相談できる窓口を設置することで、パワハラの実態把握がしやすくなります。
パワハラが行われていないか、定期的な社内アンケートを実施しています。実態把握のための調査を行うことも事前対策として有効だからです。
ハラスメント(セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、パタニティハラスメント、モラルハラスメントなど)の研修、勉強会を実施しています。従業員全員のパワハラに対する認識・理解を深める事が防止策となるからです。
社内でパワハラが発生したときに正しい再発防止策を講じておくことも、パワハラ防止のために重要な対策となります。
また、全管理職に、パワハラ発生事例を報告して共有を行っている企業も多く存在します。
ここでは「リモートハラスメント」を中心にご紹介しましたが、今回の法改正事項は、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等、職場のあらゆるハラスメントにも準じて適用されることになります。
セクハラ・パワハラの問題は、感情面が大きく関わってきますが、法律や制度の実施状況などをしっかり理解することも必要となります。そして自らも加害者になることも十分にあり得る問題です。ぜひ理解を深め社会での活躍に活かしていきましょう!