「建築業界はブラックなイメージ」と感じている方は多いのではないでしょうか。
しかし、近年は働き方改革の推進やホワイト企業の増加により、労働環境は大きく改善しています。
この記事では、建築業界の労働環境の実態と改善傾向を解説し、ホワイト企業を見極める方法や職種別の特徴を紹介します。
目次
建築業界は、長時間労働や休日出勤が常態化している業界としてイメージされている方も多いのではないでしょうか。
工期の厳守や天候に左右される作業スケジュールにより、残業や連続勤務が続くことが多く、従業員の健康面への影響が深刻な問題となっていました。
さらに、現場作業では安全管理の不備が目立ち、労働災害の発生率は他業界よりも高い水準にありました。教育面でも、職人的なOJTに依存する傾向が強く、体系的な研修制度が不足していたことが若手の育成を阻む要因となっていました。
その結果、業界全体が慢性的な人手不足に直面し、特に若手人材の確保と定着は大きな課題となっていたのです。
しかし、近年の働き方改革の推進により、建築業界でも労働環境の改善が急速に進んでいます。
多くの企業が残業時間の上限設定や週休2日制の導入に取り組み、従業員のワークライフバランスを重視するようになりました。
■ 労働時間：残業時間の上限設定、週休2日制の導入が拡大
■ ICT活用：BIM（Building Information Modeling）、施工管理アプリで現場効率化
■ 工法の進化：プレハブ化・工場生産により作業負担を軽減
■ 安全対策：IoTによる安全監視システム、VRによる安全教育で労災リスクを削減
■ 人材育成：体系的な研修や資格支援制度により、若手が早期に戦力化
こうした企業努力によって、「ブラックが当たり前」から「働きやすさを重視する業界」へと変化しているのが近年の傾向です。
建築業界でホワイト企業を見極めるには、求人票の情報を細かく分析することが欠かせません。
とくに就活生や転職希望者が注目すべきなのは、労働時間・休日・給与・安全管理・福利厚生といった項目です。
以下の情報が数値や制度として明記されている企業は、働きやすさに自信があるホワイト企業と考えられます。曖昧な記載しかない場合は、入社前に実態を確認しておきましょう。
■ 労働時間：月平均残業時間が数値で明示され、45時間以内であること
■ 休日制度：完全週休2日制の有無や年間休日数（120日以上が理想）
■ 有給休暇：取得率や消化実績が記載されているか
■ 安全管理：安全教育の実施回数、設備状況、労災発生率が明記されているか
■ 教育・研修：資格取得支援制度や研修制度が整備されているか
■ 給与制度：基本給と手当が分かれており、昇給・賞与の基準が具体的に示されているか
■ 福利厚生：住宅手当、交通費、退職金制度などの整備状況
数値や制度が具体的に示されている企業は、働きやすさに自信のあるホワイト企業といえます。
建築業界で就職先や転職先を選ぶ際には、第三者による客観的な評価を参考にすることが非常に有効です。
ホワイト企業財団による「ホワイト企業認定」を受けている企業は、労働環境や企業文化について一定の基準をクリアしていることが保証されています。
また、建設業界団体からの表彰や認定もチェックポイントです！
「働き方改革推進企業認定」などを受けている企業は、業界内でも労働環境の良さが認められている証拠です。
従業員による企業評価サイトや口コミ情報も参考になりますが、建築業界特有のプロジェクトベースでの業務や現場による違いがあるため、複数の情報源から得た情報を総合的に判断することが重要です。
施工管理職においてホワイト企業とされる会社は、一人当たりの担当現場数を適正に管理し、過度な業務負担を避ける体制を整えています。その結果、品質管理や安全管理に十分な時間を確保できる環境が実現します。
また、最新のICT技術やデジタルツールの導入も積極的です。
■ タブレット・スマホを活用した現場管理システム
■ ドローンによる進捗確認
■ BIMによる設計・施工の統合管理
これらは業務効率化と働きやすさの両立に貢献しています。
さらに、教育研修制度の充実度も特徴的です。施工管理技士・建築士などの資格取得支援や、経験豊富な先輩社員によるメンター制度を整備している企業では、若手が安心して成長できます。
設計職におけるホワイト企業は、従業員の創造性を尊重し、アイデアを活かせる職場環境を提供しています。設計に必要な時間をしっかり確保できるため、質の高い建築物を生み出せる労働環境が整っているのです。
具体的な取り組みとしては
■ 最新のCAD・BIMソフトウェアへの積極投資
■ 海外視察や専門研修の機会を提供
■ 社内でのアイデア共有や建設的なフィードバックを重視
こうした仕組みによって、設計職の社員はスキルアップや国際的な視野拡大が可能になります。
チーム内でのオープンなコミュニケーション文化を持ち、建設的な議論が活発に行われている会社こそ、設計職にとって真のホワイト企業といえるでしょう。
建築業界は、社会インフラの整備・維持に欠かせない産業であり、今後も安定した需要が見込まれます。
都市部の再開発、老朽化インフラの更新、災害復旧・防災対策など、多様なニーズに対応するビジネスチャンスが数多く存在します。
■ 都市部の再開発や老朽化インフラの更新
■ 災害復旧・防災対策への対応
■ 脱炭素社会に向けた省エネ建築やZEB（ネット・ゼロ・エネルギー・ビル）
ICTの進歩により建築プロセスの効率化が進み、海外展開やリノベーション市場の拡大といった新たな成長分野も期待されています。
さらに、人口減少により国内市場の縮小が予想される一方で、海外展開やリノベーション市場の拡大など、新たな成長分野も期待されています。
かつては「ブラックな業界」といわれた建築業界も、いまやホワイト企業が増加しています。
求人情報の透明性、第三者評価、職種ごとの特徴を確認しながら、自分に合った会社を選ぶことが大切です。
建築業界で安心してキャリアを築きたいなら、ホワイト企業を軸に就職・転職活動を進めましょう。
ホワイト企業認定を取得した企業はこちらの記事でご紹介しています！！
日本次世代企業普及機構 代表理事岩元 翔
東証1部上場企業の求人広告会社にて新卒・中途採用のコンサルティング業務を学び、その後ITベンチャー企業にて自社採用業務、教育業務に従事。2020年には一般財団法人日本次世代企業普及機構の代表理事に就任。これまでの経験、実績を活かし、経営者や従業員にとって道しるべとなる「ホワイト企業指標」を作り上げた。
