健康診断後の医師の意見聴取は義務?50人未満の事業所の対応と実施の流れを解説

企業の健康診断(一般定期健康診断)は、従業員の健康管理だけでなく、法律で定められた事業者の重要な義務です。特に診断結果に異常所見があった際、医師や産業医から意見を聴く「医師の意見聴取」は、全ての事業所において法的義務となっています。

◆ この記事でわかること

  • 健康診断の実施義務と対象者
  • 健康診断後の対応フロー(4ステップ)
  • 医師の意見聴取の義務内容と就業区分
  • 50人以上・50人未満それぞれの対応方法
  • 地域産業保健センターの活用方法(実体験付き)

企業の健康診断と医師の意見聴取について

健康診断の実施義務と種類

労働安全衛生法第66条では、自ら雇用する労働者に対して「1年に1回、定期に健康診断を実施する」ことを義務づけており、これを「一般定期健康診断」といいます。

事業者は労働者に対して医師による健康診断を実施する義務があり、同様に労働者は事業者が行う健康診断を受けることが求められています。

健康診断の対象者

健康診断の対象者には以下が該当します。

  • 期間の定めのない無期契約労働者
  • 有期契約で1年以上雇用される見込みのある労働者
  • 1年以上雇用されている労働者で、所定労働時間の4分の3以上働いている者

所定労働時間の4分の3未満のパートタイム労働者についても「健康診断の実施が望ましい」とされており、実務上は対象に含める検討が必要です。

参考資料:https://www.lcgjapan.com/pdf/lb09094.pdf?12

また、健康診断は以下についても義務付けられています。

  • 健康診断にかかる費用は、事業者が負担しなければならない
  • 実施した健康診断の結果は、遅滞なく労働者に通知しなければならない
  • 事業者はその結果を5年間保存しなければならない
  • 常時50人以上の労働者を雇用する場合、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に報告しなければならない

! 罰則:健康診断を受診させていない事業者には50万円以下の罰金が科されます(安衛法120条1項)。
法令:昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法

一般健康診断の実施とその後の対応フロー

① 対象者への受診案内

1年に1度、該当従業員へ健康診断受診についての周知と案内が必要です。社内報やポスター・個人宛通知などで以下の内容を呼びかけましょう。

  • 受診対象者
  • 診断の内容
  • 受診日時と場所
  • 受診に際しての注意事項

② 健康診断結果の受領と確認

事業者は異常所見の有無を確認して適切な対応をする必要があります。健康診断がただ行われるだけでなく、結果に対する適切なフォローアップが行われるように注意してください。

③ 健康診断結果を労働者へ通知する

「健康診断を受けた労働者に対し、当該健康診断の結果を通知しなければなりません」(第66条の6)。各個人宛に結果を送付しましょう。再検査が必要な従業員への二次検診の受診勧奨も重要です。

④ 医師(産業医)からの意見聴取

健康診断結果の確認ができたら、すみやかに以下の2つの措置をとりましょう。

  • 医師(産業医)からの意見聴取
  • 就業上措置の決定

健康診断後の医師の意見聴取フロー

医師(産業医)からの意見聴取とは|義務化の内容

医師(産業医)からの意見聴取とは、健康診断が行われるたびに、その結果をもとに就業上の措置についての意見を聴取する法的義務です。専門的な立場から医学的なアドバイスを受けることで、企業が労働者の健康を適切に管理し労働環境の改善に寄与するために行われます。

! 期限:健康診断が行われた日もしくは労働者が結果を事業者に提出した日から3か月以内に実施する必要があります。期限を過ぎないよう注意しましょう。

就業上の措置(就業区分)の決定方法

労働者の健康診断の結果に異常所見があった場合、医師(産業医)の意見を踏まえて適切な措置を講じなければなりません。就業区分は「通常勤務・就業制限・要休業」の3区分で判定します。

1. 通常勤務

通常の勤務でよい

2. 就業制限

勤務に制限を加える必要がある

  • 就業場所の変更(より負担の少ない部署への異動など)
  • 作業の転換(重量物運搬の禁止・高所作業の禁止など)
  • 労働時間の短縮(残業禁止・休憩時間の延長など)
  • 深夜業の回数の減少または禁止

3. 要休業

療養のため休暇や休職により一定期間勤務させない

企業規模が50人以上の事業所の場合(産業医の意見聴取)

常時50名以上の従業員を使用している事業場では、選任している産業医から意見を聴取しましょう。

◆ 産業医とは

労働者の健康管理や労働環境の安全確保など、職場における健康に関する専門的なサポートを提供する医師のことです。常時50人以上の労働者を雇用している事業場では、産業医の選任が法律で義務づけられています。

従業員が50人以上になったタイミングから14日以内に産業医を選任し、所轄の労働基準監督署へ届け出なければいけません。

企業規模が49人以下の事業所の場合(50人未満の医師の意見聴取)

労働者が50人未満の事業場では産業医の選任義務はありません。しかし、労働者の健康診断の結果に異常所見があった場合、必要な医学知識を有する医師からの意見聴取は必要です。「50人未満だから意見聴取は不要」というのは誤解ですので注意してください。

労働者50人未満の小規模事業場では、「地域産業保健センター(地産保)」のサービスを無料で利用することができます。

◆ 地域産業保健センターとは

産業医を選任する義務のない小規模事業場(50人未満)および当該事業場の労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的として、労働者の健康管理等に係る援助を行う事業です。労働安全衛生法第19条の3に基づき行われる国の援助の一部として位置付けられています。

参考:厚生労働省資料(地域産業保健センターについて)

地域産業保健センターで医師の意見聴取を実際に体験しました!

50人未満の事業所において、地域産業保健センターで実際に「医師の意見聴取」を実施したので、その実体験をお伝えします。

面談までの具体的な流れ

会社所在地の最寄りの地域産業保健センターを以下のサイトで検索して、電話予約をしました。

大阪府の地域産業保健センター:https://osakas.johas.go.jp/sanpo-center/

■ 面談の流れ(6ステップ)

  • ① 健康診断の結果(異常所見)の確認後、最寄りの地産保センターへ連絡
  • ② 医師との面談日程の予約
  • ③ 指示があった必要書類(申込書など)を提出
  • ④ 代表担当者が該当労働者の検査結果を持参して面談(対面またはWeb等)
  • ⑤ 健康診断の結果をもとに、今後の対応の措置方法やアドバイスをもらう
  • ⑥ 記録(意見書)を会社で適切に保管する

異常の所見に該当する従業員の検診結果から、専門医による丁寧でわかりやすいアドバイスや今後の対応方法を教えていただきました。小規模事業所にとって非常に心強いサービスです。

地域産業保健センターの活用資料

地域産業保健センター無料相談パンフレット
医師の意見聴取の案内
全国の地域産業保健センター一覧

各地域ごとに設置されているので、検索サイトでお近くの保健センターを検索してみてください。
検索キーワード例:「地域産業保健センター ※市区町村名※」「医師の意見聴取 50人未満 無料」

まとめ:健康診断後の「医師の意見聴取」を忘れずに

医師の意見聴取まとめ

企業の健康診断は、実施して終わりではありません。従業員の健康を守り企業の安全配慮義務を果たすためには、診断結果に基づく「医師の意見聴取」と「適切な就業上の措置」が不可欠です。法律上の義務であることはもちろん、健康経営の観点からも非常に重要なプロセスです。

特に労働者が50人未満で産業医がいない企業は、無料で利用できる地域産業保健センターを積極的に活用し、法令順守と従業員の健康維持を両立させましょう。

◆ この記事のまとめ

  • 健康診断は年1回・法的義務。違反した場合は50万円以下の罰金
  • 健康診断後のフローは①案内→②結果確認→③労働者通知→④意見聴取の4ステップ
  • 就業区分は通常勤務・就業制限・要休業の3区分。医師の意見は3か月以内に聴取
  • 50人以上は産業医が必須(14日以内に選任・届出)。50人未満は地域産業保健センターを無料活用
   
運営者情報

日本次世代企業普及機構 代表理事岩元 翔

東証1部上場企業の求人広告会社にて新卒・中途採用のコンサルティング業務を学び、その後ITベンチャー企業にて自社採用業務、教育業務に従事。2020年には一般財団法人日本次世代企業普及機構の代表理事に就任。これまでの経験、実績を活かし、経営者や従業員にとって道しるべとなる「ホワイト企業指標」を作り上げた。