健康診断後の医師の意見聴取は義務?50人未満の事業所の対応と実施の流れを解説

企業の健康診断は「実施して終わり」ではありません。異常所見があった場合、医師や産業医から意見を聴く「医師の意見聴取」は全事業所に課せられた法的義務です。

「うちは従業員が50人未満だから産業医がいない」という場合でも、意見聴取は必要です。この記事では、意見聴取の義務内容・50人未満の対応方法・地域産業保健センターの活用法まで実体験をもとに解説します。

岩元翔

キャリアアドバイザーコメント

日本次世代企業普及機構 代表理事 岩元 翔

「50人未満だから意見聴取は不要」と誤解している事業所が今でも多く見られます。規模に関わらず義務であることを正しく理解し、地域産業保健センターなどの無料サービスを積極的に活用してください。従業員の健康管理は企業の安全配慮義務の核心です。

健康診断の実施義務と対象者

労働安全衛生法第66条により、事業者は雇用する労働者に対して年1回の定期健康診断(一般定期健康診断)の実施が義務づけられています。

対象となる労働者

  • 期間の定めのない無期契約労働者
  • 有期契約で1年以上雇用される見込みのある労働者
  • 1年以上雇用されており、所定労働時間の4分の3以上働いている労働者

※所定労働時間の4分の3未満のパートタイム労働者も「実施が望ましい」とされています。

【罰則】健康診断を受診させていない事業者には50万円以下の罰金が科されます(安衛法120条1項)。

事業者が守るべき4つのルール

  • 健康診断の費用は事業者が全額負担する
  • 健康診断の結果は遅滞なく労働者本人に通知する
  • 結果を5年間保存する
  • 常時50人以上の場合、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出する

健康診断後の対応フロー(4ステップ)

Step 1|対象者への受診案内

受診対象者・診断内容・受診日時と場所・注意事項を社内報や個人宛通知で周知します。

Step 2|健康診断結果の受領と確認

異常所見の有無を確認します。診断がただ行われるだけでなく、結果に対する適切なフォローが必要です。

Step 3|健康診断結果を労働者へ通知

各個人宛に結果を送付します。再検査が必要な従業員への二次検診の受診勧奨も重要です(第66条の6)。

Step 4|医師(産業医)からの意見聴取 ←ここが義務

異常所見があった場合、健康診断実施日または労働者が結果を提出した日から3か月以内に意見聴取を実施します。

健康診断後の医師の意見聴取フロー

医師の意見聴取とは|義務化の内容

医師の意見聴取とは、健康診断が行われるたびに、その結果をもとに就業上の措置について医師から意見を聴取する法的義務です。専門的な立場から医学的アドバイスを受けることで、企業が労働者の健康を適切に管理するために行われます。

【期限】健康診断実施日または労働者が結果を提出した日から3か月以内に実施してください。
【対象】異常所見があった労働者全員が対象です。50人未満でも義務があります。

就業上の措置(就業区分)の決め方

医師の意見をもとに、以下の3区分で就業上の措置を決定します。

1. 通常勤務

通常の勤務でよい状態です。

2. 就業制限

勤務に制限を加える必要がある状態です。具体的な措置として以下が挙げられます。

  • 就業場所の変更(負担の少ない部署への異動など)
  • 作業の転換(重量物運搬の禁止・高所作業の禁止など)
  • 労働時間の短縮(残業禁止・休憩時間の延長など)
  • 深夜業の回数の減少または禁止

3. 要休業

療養のため休暇や休職により一定期間勤務させない状態です。

50人以上の事業所:産業医からの意見聴取

常時50人以上の従業員を使用している事業場では、選任している産業医から意見を聴取します。

◆ 産業医とは

労働者の健康管理や労働環境の安全確保など、職場における健康に関する専門的なサポートを提供する医師です。常時50人以上の事業場では選任が法律で義務づけられています。

【重要】従業員が50人以上になったタイミングから14日以内に産業医を選任し、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。

50人未満の事業所:地域産業保健センターの活用

労働者が50人未満の事業場では産業医の選任義務はありません。しかし異常所見があった場合の医師の意見聴取は必要です。「50人未満だから不要」は誤りです。

50人未満の小規模事業場は「地域産業保健センター(地産保)」のサービスを無料で利用できます。

◆ 地域産業保健センターとは

産業医を選任する義務のない小規模事業場(50人未満)および当該事業場の労働者に対する産業保健サービスを充実させることを目的として設置された機関です。労働安全衛生法第19条の3に基づき運営されています。

地域産業保健センターの実体験レポート

50人未満の事業所において、地域産業保健センターで実際に「医師の意見聴取」を実施しました。その流れをお伝えします。

■ 面談の流れ(6ステップ)

  • ① 健康診断の結果(異常所見)の確認後、最寄りの地産保センターへ連絡
  • ② 医師との面談日程を予約
  • ③ 指示があった必要書類(申込書など)を提出
  • ④ 代表担当者が該当労働者の検査結果を持参して面談(対面またはWeb等)
  • ⑤ 健康診断の結果をもとに、今後の対応の措置方法やアドバイスをもらう
  • ⑥ 記録(意見書)を会社で適切に保管する

異常所見に該当する従業員の検診結果から、専門医による丁寧でわかりやすいアドバイスと今後の対応方法を教えていただきました。小規模事業所にとって非常に心強いサービスです。

【検索方法】「地域産業保健センター ※市区町村名※」または「医師の意見聴取 50人未満 無料」で検索してください。
【大阪府の場合】https://osakas.johas.go.jp/sanpo-center/

地域産業保健センター無料相談パンフレット
医師の意見聴取の案内
全国の地域産業保健センター一覧

まとめ

医師の意見聴取まとめ

◆ この記事のまとめ

  • 健康診断は年1回・法的義務。違反した場合は50万円以下の罰金
  • 対応フローは①案内→②結果確認→③労働者通知→④意見聴取の4ステップ
  • 就業区分は通常勤務・就業制限・要休業の3区分。医師の意見は3か月以内に聴取
  • 50人以上は産業医が必須(14日以内に選任・届出)
  • 50人未満は地域産業保健センターを無料活用。意見聴取の義務は同様にある

企業の健康診断は実施して終わりではありません。従業員の健康を守り安全配慮義務を果たすためには、診断結果に基づく「医師の意見聴取」と「適切な就業上の措置」が不可欠です。特に労働者が50人未満の企業は、無料で利用できる地域産業保健センターを積極的に活用しましょう。

   
運営者情報

日本次世代企業普及機構 代表理事岩元 翔

東証1部上場企業の求人広告会社にて新卒・中途採用のコンサルティング業務を学び、その後ITベンチャー企業にて自社採用業務、教育業務に従事。2020年には一般財団法人日本次世代企業普及機構の代表理事に就任。これまでの経験、実績を活かし、経営者や従業員にとって道しるべとなる「ホワイト企業指標」を作り上げた。